鶏肉生産が好調に推移(フィリピン)
2008年上半期の農業生産額の成長率は23.2%
フィリピン農務省農業統計局(BAS)は、2008年上半期(1〜6月分)の農業生産状況を公表した。農業部門全体における生産額(現行価格)は、前年同期比23.2%増の5,770億ペソ(約1兆4,424億円:1ペソ=2.5円)となり、第1四半期に引き続き好調を維持している。
部門別では、作物部門が同32.2%増の3,215億ペソ(約8,037億3千万円)、水産部門が同16.1%増の1,065億ペソ(約2,663億円)となったほか、畜産関係については、家畜部門(牛肉、水牛肉、豚肉、ヤギ肉、生乳)が同12.1%増の892億ペソ(約2,228億8千万円)、家きん部門(鶏肉、アヒル肉、鶏卵、アヒル卵)も同11.1%増の598億ペソ(約1,494億9千万円)となった。
鶏肉生産が好調に推移
家畜部門の生産量を品目別にみると、家畜部門では生乳が同4.5%増の7千トン、水牛肉が同4.0%増の6万9千トンと増加傾向で推移しているほか、ヤギ肉は同1.1%増の4万トン、牛肉はほぼ前年並みの11万5千トンとなった。豚肉については、豚の主要飼養地域であるルソン地域において昨年から続く豚流行性下痢や豚コレラなどの疾病の影響により、第1四半期に引き続き同4.3%減の88万トンとなった。このため、フィリピン農務省(DA)は、3千万ペソ(約7千5百万円)の予算を計上し、ルソン地域の小規模養豚事業者を中心にワクチン接種を計画している。
家きん部門では、鶏肉が同7.1%増の58万9千トン、鶏卵が同5.7%増の17万1千トンとなった。一方、アヒルについては、アヒル肉が同10.7%減の2万トン、アヒル卵が同11.4%減の2万2千トンとなった。また、DAは2008年の家きん飼養羽数を公表したが、鶏が前年比13.9%増の1億5千万羽、アヒルが同2.6%増の1千万羽となっており、全体の飼養羽数はおおむね増加傾向で推移している。また、鶏のうちブロイラーの飼養羽数は5千2百万羽で鶏全体の約3割を占め、地鶏の飼養羽数は7千7百万羽で鶏全体の5割を占めている。近年、ブロイラーの飼養羽数は、インテグレーターによる設備投資などにより大幅に増加しているが、庭先養鶏が中心の地鶏については飼養羽数が横ばいないし微増傾向で推移している。
トウモロコシ生産量は引き続き好調
作物部門では、トウモロコシが前年同期比19.6%増の329万トンとなったほか、サトウキビが同32.2%増の1,893万トン、キャッサバが同4.6%増の95万トンとなった。BASは、トウモロコシ生産量の大幅増加について、生産者販売価格が高値で推移したことにより生産者の増産意欲が強いことと政府によるハイブリッド品種の積極的な使用奨励および期間中に十分な降雨量があったことなどがその理由としている。ただし、BASは下半期のトウモロコシ生産量について、6月下旬発生した大型台風の影響が懸念されるほか、肥料価格の高騰により生産者が肥料使用量を縮小することが予想されるため、上半期ほどの伸び率は期待できないとしている。また、サトウキビ生産量も大幅に増加しているが、BASによればサトウキビの主要生産地域のうち同国中部のヴィサヤ地域と南部のミンダナオ地域が好天に恵まれたことが主な要因としている。
供給減で豚肉価格は高値推移
部門別の生産者販売平均価格では、豚肉が前年比18.0%高のキログラム当たり84.36ペソ(約211円)となったほか、鶏肉が同5.2%高のキログラム当たり74.69ペソ(約187円)となるなど、畜産および家きん部門ではすべての品目が前年を上回った。また、作物部門のトウモロコシについても、同6.9%高のキログラム当たり11.03ペソ(約28円)となった。第1四半期に引き続き、豚肉の高値が継続していることについて、同国の全国養豚協会(National Federation of Hog Farmers Inc.:NFHFI)は、疾病の影響による豚肉の供給減少が主な要因と分析している。さらに、通常、同国では第2四半期から第3四半期にかけて豚肉供給量が減少し、豚肉価格が上昇する傾向が強いことから、NFHFIは豚肉価格の高値がしばらく継続するものと予想している。
【林 義隆 平成20年9月25日発】
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