豚肉および鶏肉価格は高値継続(タイ)
豚肉および鶏肉価格は高値継続
タイでは、原油価格や飼料原料価格の高騰などもあり、鶏肉のほか豚肉の価格も前年を上回る水準で推移している。タイ商務省国内取引局は8月の卸売価格を公表したが、豚肉が前年同月比21.2%高のキログラム当たり55.95バーツ(約168円:1バーツ=3.0円)、鶏肉が同21.0%高のキログラム当たり44.45バーツ(約133円)となった。
昨年末から続く、主に生産費の上昇に起因する豚肉卸売価格の高騰(平成20年3月17日海外駐在員情報参照)に伴い小売価格も上昇したが、これは必ずしも需給を反映したものではないため、消費者の豚肉離れを引き起こした。タイ養豚協会(SRAT)は、小売価格の高騰により豚肉需要が30%程度減少し、卸売価格が低下したとして、5月にはSRAT加盟の生産者に対して生産調整を要請した。その後、7月までは卸売価格、小売価格とも下落傾向で推移したものの、8月には上昇に転じた。この間の価格水準は、消費者にとっては依然として高水準であるものの、生産者にとっては生産コストの上昇分を賄いきれない水準であるとされる。
報道によれば、SRATは9月に入り、キログラム当たり56バーツ(約168円)とされる生産コストの低減を図るため、政府に対して、飼料原料の大豆かすに課税される輸入関税(4%)の免税を再び要求した。
国内では、豚肉価格の上昇に伴い、価格優位性の高い鶏肉需要が増加しており、このため、鶏肉卸売価格についてもタイの旧正月(ソンクラーン)を迎える4月には、キログラム当たり42.33バーツ(約127円)となるなど高値で推移した。しかし、タイ旧正月明けには食肉需要も落ち着きを取り戻したことから、鶏肉卸売価格は5月以降、前月を下回って推移したが、8月には再び上昇した。
豚肉調製品の輸出量は好調を維持
タイは、国際獣疫事務局により口蹄疫の常在地域とされていることから、同国政府が清浄化対策を実施しているものの、現時点では国際基準に基づく口蹄疫清浄地域となっていないため、同国産の生鮮冷凍豚肉を輸入する国・地域は限られている。タイ農業・協同組合省(MOAC)の取りまとめによれば、冷凍豚肉の輸出数量は2002年に約11,000トンであったが、2007年には約5,200トンと半減している。同国産冷凍豚肉の輸出先は香港、カンボジアなどとなっており、このうち約9割が香港向けとなっている。
一方、豚肉調製品の輸出量は年々増加しており、MOACによれば豚肉調製品の輸出量は2005年に約5,800トンとなり冷凍豚肉輸出量を上回った。2006年および2007年についても、豚肉調製品輸出量は冷凍豚肉を上回る7千トン台で推移している。また、タイ財務省(MOF)によれば、2008年1月から8月までの豚肉および豚肉調製品などの輸出数量については、生鮮冷凍品(HSコード0203)が前年比50.9%増の約3,200トン、ソーセージ(HSコード1601)が同49.9%増の約1,700トン、調製品(HSコード1602)が同29.5%増の約3,400トンとなり、いずれも前年同期より増加している。
生体豚の輸出が急増
さらに、タイからは近隣諸国を中心に豚の生体も輸出されており、近年の輸出頭数はおおむね増加傾向で推移してきた。カンボジアやラオスなど、輸入国側のコールドチェーンが十分に整備されていないことから、生体による輸送が主流を占めている。MOFによれば、今年は8月までの輸出実績が前年同期比476.3%増の約25万頭となっており、このうち、カンボジア向けが約16万頭と全体の約6割を占めている。特に、カンボジア向けの生体豚輸出が急増した要因として、タイとカンボジアにおける売買価格差が主な要因とされており、タイ商務省によれば、タイ国内の生体豚価格がキログラム当たり58〜60バーツ(約174〜180円)であるのに対し、カンボジア国内では同70〜75バーツ(約210〜225円)で取引されているとしている。
【林 義隆 平成20年10月16日発】
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