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米国食品医薬品局、体細胞クローン家畜由来の畜産物の安全性を確認

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 米国食品医薬品局(FDA)は1月15日、体細胞クローン家畜およびその子孫から生産される畜産物の安全性は通常の畜産物と変わらないとする、最終リスクアセスメント報告を公表した。また、同日、米国農務省(USDA)は、流通への影響を最小限にとどめるため、当面の間、流通の自主規制措置を継続することを公表した。

FDAは畜産物としての安全性には問題ないとする原案の結論を維持

 今回、FDAが公表したリスクアセスメント報告書は、2006年12月に公表された原案に対する一般からの意見を120日間受け付けた後、新たな科学的知見を加えて作成されたものであり、体細胞クローンの牛、豚およびヤギおよびその子孫から生産される食肉および生乳の食品としての安全性は、通常の方法で生産された畜産物と変わらないとする原案の結論を維持する内容となっている。

 また、FDAの要請で2001年以降継続されてきた畜産業界による流通の自主規制措置については、円滑かつ秩序ある流通への移行の観点からUSDAが業界関係者と議論を行い、その結果を踏まえて業界が判断するとの考えを示している。

 さらに、FDAとしてクローン家畜由来の畜産物に何らかの表示義務を課すことはないとし、業界がクローン不使用表示などを希望する場合にはその信頼性や誤認の可能性を考慮した上で個別に許可を与えることを検討するとしている。

USDAは業界による流通自主規制の継続を公表

 これを受け、USDAは食品流通・動植物検疫担当のブルース・ナイト次官が会見を行い、クローン家畜由来の畜産物の安全性には問題なく、通常の家畜から生産される畜産物と何ら変わるところがないとするFDAの最終報告を完全に支持するとする立場を表明した。その上で、USDAは、これらの畜産物の流通を促進するために業界関係者と協議するとともに、円滑かつ秩序ある流通に移行するまでの間、これらの畜産物の販売を引き続き自主規制するよう、クローン技術の提供企業に求めていくことを明らかにした。

 また、同次官は、クローン技術は受精卵移植や人工授精と同様に家畜の改良の目的で開発された技術であり、遺伝的に双子と同様の形質を持つ子孫を作成することで、家畜の改良を短期間に行えるようになるとし、その技術的有用性も評価する考えを示した。

 なお、2007年12月末に成立した2008年度包括歳出法に基づく議会からの要請を受け、クローン家畜由来畜産物の流通解禁が国内畜産や国際貿易に与える経済的影響について、USDAが調査分析を行う考えも表明している。

米国の畜産関係団体は消費者の反応を重視すべきとの立場

 米国の畜産関係団体の反応は、総じて今回の決定に肯定的な食肉関係団体と、より慎重な対応を求めてきた牛乳乳製品関係団体でその反応がやや異なっているが、消費者の反応に十分な注意を払うべきという点では、両者の立場は共通している。

 主に米国の食肉処理・加工業者を会員とし、クローン家畜に対する消費者向けの啓蒙パンフレット作成なども行ってきた米国食肉協議会基金のジェームス・ホッジス会長は、FDAがクローン技術をめぐる科学的知見を注意深く検討したことを評価する一方、家畜のクローン作成は新たな技術であり、会員はその技術の効用と消費者の反応を慎重に見極めているところであるとして、流通自粛措置の継続に対する評価は避けている。その上で、食肉業界は、科学を取り巻く技術を分析し、我々の製品に対する消費者の要求を満足させるよう努力してきた歴史があり、本件についてもこれまでと同様に進めていきたいとしている。

 これに対し、米国の酪農家を会員とする全米生乳生産者協議会のジェリー・コザック会長は、FDAがクローン家畜由来の畜産物の安全性を再確認したとはいえ、市場環境の変化に伴う潜在的な経済的影響の調査分析が完了するまでの間は現行の流通自主規制の継続を強く支持するとして、USDAの要請に応じてクローン家畜を所有する会員が自主規制に従うとの考えを表明した。また、同会長は、クローン技術に対する消費者の不安の程度を調査することの重要性を指摘するとともに、主要な輸出市場における規制の状況を把握し、これと足並みを揃えていくことが必要であるとしている。

表示ルールの整備なども今後の検討課題に

 現在、米国内には約600頭の体細胞クローン家畜が飼養されており、このうち乳用牛は約150頭程度とされているが、全体から見るとその割合はわずかなものでしかない。また、これらの家畜の大半が家畜改良を目的として生産されたものであり、仮にUSDAの求める流通自主規制が解除されたとしても、クローン家畜由来の畜産物が直ちに市場に出回ることは考えにくい。

 しかし、クローン家畜に対する米国の消費者の抵抗感は根強く、議会にも今回の動きに反対する意見がある。昨年12月末に成立した2008年度包括歳出法(前述)には、メリーランド州選出のミクルスキー上院議員の提案により、FDAのリスクアセスメント結果の公表の先送りとUSDAによる経済的影響の調査の実施を強く求める文言が盛り込まれていた。

 また、同議員は、昨年1月にクローン家畜由来の畜産物の表示を義務づける法案も提出しているが、カリフォルニア州では、昨年、州法により可決されたクローン家畜由来畜産物の義務表示案に、シュワルツェネガー知事が実行が困難であることなどを理由に署名しない考えを明らかにするなど、表示をめぐる議論も焦点となりつつある。

 なお、USDAのナイト次官は、現行の有機食品生産法に照らせば、クローン家畜から生産される畜産物は有機として認められないとの見解を示す一方、クローン家畜の子孫から生産される畜産物については全米有機基準ボードの勧告に基づいてUSDAが必要な規制を検討していることを明らかにしている。
【郷 達也 平成20年1月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤井)
Tel:03-3583-9532



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