ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2008年 > 大規模畜産経営に対する環境規制適用除外措置をめぐる議論が再燃
(1) | 時間の経過に伴うCAFOの構造変化:USDAによると大規模畜産経営の総数は1982年から2002年の間に約230%増加し、大規模経営の家畜飼養頭数も増加しているが、CAFOに焦点を当てた正確なデータは存在しない。また、EPAは認可済のCAFOの総数すら把握していない。EPAは現在、州政府と協力して全国規模のデータベースを構築しようとしているが、現時点ではCAFOへの環境規制を効果的に行う上で必要な情報は存在しない。 |
(2) | CAFOで発生する廃棄物の量:大規模畜産経営から発生するふん尿の量は、最大で年間160万トンに達し、都市における年間し尿発生量を上回る場合もある。また、特定の地域に大規模経営が密集した場合、肥料として近隣の耕地に効果的に施用できないほど大量のふん尿が発生し、水質汚濁を招く潜在的可能性が高まると指摘する専門家もいる。 | (3) | 健康や環境への影響に関する研究成果:2002年以降に行われた68本の政府系の研究のうち、15本で家畜排せつ物由来の汚染物質と健康または環境への悪影響との直接の因果関係を認めている。EPAがこれらの汚染物質の危険性評価を行っていないのは、畜産経営から排出される汚染物質の量に関する重要なデータがないためである。 |
(4) | CAFOの大気汚染物質放出手続きの策定に向けた取り組み:2007年から大気汚染物質の放出に関するモニタリング調査が業界負担で全国的に行われているが、CAFOの大気汚染物質放出手続きを策定するために必要な科学的かつ統計学的に有効なデータは得られそうにない。また、EPAは、畜産経営におけるすべての排出源の相互作用や波及効果を考慮した高度で段階を踏んだモデルを開発するための戦略や時間的枠組みを定めていない。 | (5) | CAFOの水質汚濁物質放出規制に裁判所判決が与えた影響:2005年の「水質管理人」判決では、2003年の規則改正のうち、汚染物質を放出していないCAFOにも許可の取得を求めた点がEPAの権限を超えていると判断され、その実行停止が命令された。また、2006年の「レパノス」判決では、水質汚濁物質が連邦規制の下にある地表水を汚染しない限り、排水行為そのものが水質保全法に反するとは言えないと判断され、地表水汚染の挙証責任がEPAにあるとされた。これらの判決により、EPAがCAFOに対して規制を適用することが一層困難となった。 |