畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2009年 > 鶏肉の生産調整を実施し、需要回復を期待(ブラジル)

鶏肉の生産調整を実施し、需要回復を期待(ブラジル)

印刷ページ

ひなのふ化羽数は減少傾向

 ブラジルブロイラー用ひな生産者協会(APINCO)によると、2008年のひなふ化羽数は、海外での鶏肉の需要が好調であったため、2007年からの増加傾向が続き前年比9.6%増の56億4,860万羽となった。また、生産量(骨付きベース)は、過去最高の2007年(1,030万5千トン)を7.0%上回る1,103万3千トンとなった。

 2007年1月以降のブロイラー用ひなのふ化羽数(図の青線)を見ると、2008年7〜10月に増加していることが分かる。

(図)ブロイラー用ひなのふ化羽数と輸出価格
(図)ブロイラー用ひなのふ化羽数と輸出価格
資料: ブラジルブロイラー用ひな生産者協会、ブラジル開発商工省貿易局

 鶏肉輸出はドル建てで契約されていることから、ドル高レアル安の進行によるレアルベースでの輸出価格(図の緑線)の上昇より、ふ化は数を増加させたと見られる。2008年11月をピークに輸出価格は低下傾向であることから、減少傾向に転じている。

日本の需要回復を期待

 ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、鶏肉輸出は2006年に特に欧州で発生した鳥インフルエンザの影響による鶏肉需要の減退から、98年以来8年ぶりに減少に転じたものの、2007年から需要が好転し、2008年に入っても9月の米国に端を発する国際金融危機の影響が見られるまでその傾向が継続した。

 2008年の鶏肉輸出量(骨付きベース)は、主要輸出先である日本や香港、サウジアラビアなどの国で軒並み増加したことから、過去最高の2007年(300万7千トン)を8.7%上回る326万8千トンとなった。しかしながら、国際金融危機の影響などを受け、2008年の11〜12月の鶏肉輸出は、数量で前年同期比15.7%減の44万7千トン、金額で同12.9%減の7億1,700万ドル(702億7,000万円)と減少した。輸出量の減少と併せて国内の鶏肉価格も低下傾向となったことから、鶏肉パッカー各社は、出荷後の鶏舎に新たにヒナを導入しないことにより、生産調整を進めており、この結果、ふ化羽数は、2008年10月をピークに減少傾向で推移し2009年2月には前年同月比4.0%減の4億1,100万羽まで減少し、3月には4億羽を下回ると見られている。

 現在の輸出先国の状況を見ると、
(1) 日本は大量の鶏肉在庫を抱えていること
(2) サウジアラビアなどの中東諸国やベネズエラ、ロシアは、国際金融危機の影響による原油価格の大幅な下落から景気が後退したこと

から輸出需要は大きく減少している。また、

(3) 中国については、ブラジル政府は、中国と家きん肉に関する衛生協定の締結に向けて取り組んでいるが、中国の需要は輸出価格の低い手羽やモミジ(鶏足)が主体であること

から早急な輸出回復が見込めない状況にある。このような中、いくつかの食鳥処理場では、輸出先国で解凍してもドリップの出ない冷凍鶏肉を提供するため、低温処理施設(おおむね4度以下)への改修を実施しており、鶏肉関係者が、日本の需要回復を強く望んでいることがうかがえた。

2009年は前年並みの輸出は可能か

 また、鶏肉パッカー数社から現在の経営状況について聞き取りを行ったところ、

(1) 2008年上半期までドル安レアル高が続いていたことから、多くの輸出パッカーは為替予約を行っていたが、下半期に逆転現象が起こり、損失を出している
(2) 食鳥処理場の稼働率を下げるため、休暇の前倒しにより生産調整を行っている

とのことである。これらを踏まえ、2009年の鶏肉輸出について、

(1) ブラジル鶏肉輸出協会(ABEF)では、第2四半期以降、中東諸国向けの輸出が原油価格の下落による牛肉からの代替需要により回復することに加え、マレーシアやフィリピンなどの輸出増加が期待できることなどから、最終的には2008年に比べ5.0%増の343万トンになると予測している。
(2) 一方、鶏肉パッカー各社からの聞き取りでは、2009年の輸出量は高く見積っても前年比95%から前年並みであるとみている。

イタジャイ港では高い在庫率

なお、2008年11月の洪水で被害を受けた鶏肉の主要輸出港であるイタジャイ港は、

(1) 4カ所ある埠頭のうちの機能が回復したものはいまだ2カ所と輸出能力が低下していること
(2) 輸出先国の鶏肉需要が減少していること

から、冷蔵庫の在庫率は95%と非常に高い状況になっている。なお、サントス港やサンフランシスコドスル港、パラナグア港へ出荷港を変更することはコスト高要因であるが、イタジャイ港に出荷するとしても倉庫料がかかるため、コストはほぼ変わらないということであった。
イタジャイ港では高い在庫率
【松本 隆志 平成21年3月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
Tel:03-3583-9805