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酪農経営の収益改善にはチーズの輸出動向が大きく影響(アルゼンチン)

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 世界的に乳製品の輸出価格が低下する中、アルゼンチンでは生乳価格の下落に伴う酪農経営の収益低下により、生乳生産量が減少の恐れがあることについては既報(http://lin.alic.go.jp/alic/week/2009/ar/ar20090401.htm)の通りである。このような現状を乳業関係者はどのように見ているのかについて、アルゼンチンの乳製品輸出企業で組織する団体(Centro de la Industrial Lechera:CIL)から、聞き取りを行った。

1 アルゼンチン国内における需要拡大は困難

 2007年のアルゼンチンにおける1人当たり年間飲用牛乳消費量は42.75リットル、同じく乳製品消費量は32.55キログラムとなっている。生乳換算で1人当たり年間約200リットル(わが国の約2倍)に達していることから、乳業メーカーは国内需要をこれ以上伸ばすことは困難とみている。
(表1)一人当たり牛乳乳製品消費量の推移

2 チーズの輸出量に着目

 アルゼンチンでは、国内生乳生産量の約2割が乳製品となって輸出(表2)されている。
 
 最も輸出量が多い品目は全粉乳である。このため全粉乳の輸出価格は、生乳価格の重要な決定要素の一つとなっている。しかし、輸出需要が減退すれば、国内市場に供給さざるを得ないため、輸出については、価格より量が重要視されている。この点から見ると、全粉乳については、いずれの輸出先国も高緯度に位置する乳牛の飼養に向かない国であることから、景気動向に関わらず安定した需要があるはずとみている。

 一方で、チーズについては先進国の輸出先が多いため、景気動向が今後の輸出動向に影響するとみている。
このためチーズを減産し、全粉乳を生産する企業も見られる。

3 生乳価格は適正との見方

 生乳価格については、生産者側から大幅引き上げを求める声があるが、生乳価格をトウモロコシ価格で除した比率(表)から見た場合、現状では、生乳生産はトウモロコシ生産に比べ若干不利な状況であるが、生産者が訴える「このままではアルゼンチンは乳製品輸入国になる。」状況とは考えていない。年に一回しか収穫しない穀物生産に比べ、生乳は毎日生産されるため、日々の収入があることも酪農経営のメリットである。

 また、全粉乳1トン当たりFOB価格は現在約2,000米ドルであるが、輸出先国が再び全粉乳を買い始めたら2,200米ドルまでは回復するとみている。全粉乳の価格が回復すれば、現在1リットル当たり0.20米ドルの生乳価格を0.22米ドル程度までは引き上げることができるのではないかとしている。
(表)生乳価格とトウモロコシ価格の比率
(表の説明)

生乳生産と飼料用トウモロコシ生産の優位性を簡単に判断するため、アルゼンチンでは、生乳価格を飼料用トウモロコシ価格で除す方法が用いられている。

青線は、1リットル当たり生乳価格を1キログラム当たりトウモロコシ価格で除した値、赤線は青線で結んだ値の平均値である。

赤線より上の場合は生乳生産が有利、赤線より下の場合は飼料生産が有利となるが、この方法で見た場合、現状は生乳生産が著しく不利とは言い難い。
 このようにアルゼンチンの乳業メーカーは、特に全粉乳とチーズの今後の輸出動向について着目していることがうかがえた。
【松本 隆志 平成21年4月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤原)
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