高タンニン型のソルガムの拡大傾向が続く(アルゼンチン)
ソルガムは、放牧地用牧草のギニアグラスと穀実採取用の子実型ソルガムに大別されるが、アルゼンチンでは、前者が50万ヘクタール、後者が70万作付されるほか、サイレージ用としてギニアグラスや子実型ソルガムが合わせて15万ヘクタール程度作付されているとみられる。
近年アルゼンチンでは降雨不足の傾向が続いているが、その中で、トウモロコシよりも耐乾性が強いソルガムの特長が着目され、作付拡大傾向にある。一方、わが国でのアルゼンチン産ソルガムの評価は、タンニンを多く含むため苦みがあり家畜の嗜好性が低いといわれている。そこで、ソルガムの生産流通関係者も会員となっているアルゼンチントウモロコシ協会(MAIZAR)で、ソルガム生産の現状について聞き取りを行った。
鳥害防止には高タンニン型が有利
ソルガムには、いくつかの果皮があり、外果皮(ワックス性の層)、中果皮(デンプン性の層)に加え、内果皮(タンニンを含む層)を有するタイプ(高タンニン型)と無いタイプ(低タンニン型)がある。
この観点からアルゼンチンの穀実採取用の子実型ソルガムの作付構成を見ると、高タンニン褐色型が約70%、高タンニン白色型は無し、低タンニン褐色型が約29%、低タンニン白色型が約1%と見られる。
低タンニン褐色型の多くは、コルドバ州中部で生産され、地元の酪農経営が利用している。また、低タンニン白色型はエントレリオス州で生産され、地元の養鶏経営が利用している。
協会としては、家畜の嗜好性を高めるため、なるべく低タンニン型を作付するように指導しているが、
ア. |
特にアルゼンチン北部では鳥害がひどいが、高タンニン型は被害が少ないこと |
イ. |
収穫期に降雨があった場合に穂発芽の恐れがあるが、内果皮を有する高タンニン型は、低タンニン型に比べ穂発芽しにくいこと |
ウ. |
このように低タンニン型は生産に関するデメリットがある上、農家販売時には低タンニン型にプレミアムが付くことは無く、高タンニン型と同じ価格で取引されること |
から、高タンニン型が生産される傾向にある。
ソルガム生産の拡大傾向は続く見込み
穀実採取用の子実型ソルガム生産は拡大傾向にあるが、
ア. |
大豆のローテーション作物の一つであること |
イ. |
トウモロコシよりも耐乾性が強いこと |
ウ. |
ソルガムの遺伝子組み換え品種はまだ無いことから、non-GM家畜飼料として注目されていること |
から、今後も拡大傾向は続くものとみられる。
低タンニン型の作付拡大のためには付加価値が認められることが必要
ソルガムの国内需要を見ると、多くは家畜飼料向けで、その他はアルコール飲料の原料に向けられる程度である。また、バイオエタノールの原料作物として利用試験が行われているが、ブラジルと異なり、一般車両も含め多くがディーゼルエンジンであることから、今後とも国内需要の大幅な拡大は見込まれない。
ソルガム生産の拡大傾向の中で低タンニン型の生産が伸びていく可能性については「低タンニン型に付加価値が認められれば、分別流通も可能ではないか」との見解であった。
【松本 隆志 平成21年4月21日発】
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