2009/10年度農業プラン:融資の円滑な実行がポイント(ブラジル)
農業プランの概要
ブラジルの農業政策は、収穫時の価格暴落リスクの低減を目的とした最低価格保証制度を基にした農業融資と取引支援が主要施策となっている。毎年、改定される各品目の最低保証価格は、生産者の次年度の作付け意欲に影響する重要な要素となるため、作付けの方向を誘導する政策手段ともなっている。
2009/10年度の農業融資は営農融資、販売融資および投資融資に新たに特別融資が加わり、農業融資計画額は前年度を42.3%上回る925億レアル(4兆4770億円:1レアル=48.4円)となっている。なお、農業融資計画額に示された資金は、連邦政府が定める年利に調整するために充てられ、元金の融資は民間金融機関から行われる。
2009/10年農業プランの概要を以下に示す。
(1)営農融資
農畜産物の生産や加工に係る経費を対象として表2に示した限度額まで融資される。年率6.75%(注2)で償還期間2年である。品目別に定められている農家1戸当たりの融資限度額は、多くの作目において前年度から引き上げられている。
(注2):2009年6月のブラジルでの普通銀行の貸し出し金利は年利17%程度
(2)販売融資
収穫時における生産者の売り急ぎにより、販売価格の暴落を避けるため、連邦政府が生産者の保有する農産品を担保に融資を行うもので連邦政府貸し付け(EGF)と呼ばれている。
連邦政府が定める農畜産物の最低価格を基礎として農畜産物を担保に表3および表4に示した限度額まで融資される。米、生乳、キャッサバ、大豆、トウモロコシなど多くの品目について前年度から引き上げられている。融資の上限は表2に準じる。
このほか、特定品目の市場価格が最低価格を下回った場合、連邦政府が生産者から買い上げる仕組み(連邦政府買い上げ(AGF))が設けられているが、今回の農業プランの中でAGF対象品目は示されていない。
(4)投資融資
農畜産物の生産を行う経営が生産性の向上や増産を目的とした施設整備を行う場合の融資、協同組合の組織改革に係る経費への融資、農地の生産能力を回復し持続性ある生産システムを構築する場合の融資などに重点が置かれている。
融資の円滑な実行がポイント
農業経営の現状を見ると、2008年度には、トウモロコシ価格が高騰する中で種子費、肥料費、農薬費などの農業資材価格も上昇したが、2009年度になりトウモロコシ価格は2007年度の水準に戻った一方で、農業資材価格は2007年度の水準までには戻っていない。また、南部では降雨不足により、生産量が大幅に減少している。このため、2009年度の作付けに向けた運転資金の確保が重要なポイントとなっており、生産者団体は営農融資の拡大を求めてきた。
今回の農業プランに対するブラジル全国農業連盟(CNA)の評価は、「2009/10年度農業プランの農業融資計画額は期待を下回るものであったが、農業資材価格が低下傾向にあることから、農業経営者の資金需要を満たすことができるだろう。農業経営者が低利融資を確実に受けられるように、融資の円滑な実行が今後のポイントである。」とのことであった。
【松本 隆志 平成21年7月6日発】
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