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ホルモン牛肉紛争に絡む米EU間の暫定合意に主要牛肉輸出国が懸念を表明(EU)

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 既報(http://lin.alic.go.jp/alic/week/2009/eu/eu20090507.htm)のとおり、ホルモンを投与された牛肉の貿易をめぐる紛争に絡み、2009年5月6日付けで米EU間の暫定合意内容が公表されたところであるが、新設される無税の関税割当(当初の3カ年:2万トン、4年目:4万5千トン)が穀物肥育による高級牛肉注 に限定されるため、牧草肥育主体の南米、オセアニアの主要牛肉輸出国は、この措置から実質的に締め出されかねないことに懸念を表明した。

 これらの輸出国は6月19日、世界貿易機関(WTO)の紛争解決機関(DSB: Dispute Settlement Body)において、この「高級牛肉」に関する無税の関税割当の新設により、EUの輸入牛肉市場における米国・カナダ産牛肉のシェアの大幅増が見込まれるとして、同関税割当は牛肉輸出国に平等に門戸が開かれるべきだと主張した。これに対し、欧州委員会側は、新設されることとなるホルモンが投与されていない「高級牛肉」に係る関税割当は、「非差別的」で「原産地を問わない」ものであり、条件を満たすいかなる国にも門戸を開いていると説明し、議論は平行線をたどった。WTOの枠組みでは、EU側は前述のような説明をせざるを得ないものの、「高級牛肉」の定義を厳格化することにより、新設される関税割当において米国・カナダ以外の輸出国からの参入のハードルをできるだけ高く設定したと評価できよう。

 なお、公式な発表はまだなされていないものの、カナダも米国と同様にEU市場におけるノンホルモン牛肉の市場アクセス改善についてEU側と協議を開始するとみられる。この場合、カナダ側は「高級牛肉」の条件を満たすホルモンフリー肉牛生産システムを構築し、EU市場向け食肉処理施設で牛肉を生産するということが条件付けづけられるとみられる。
注:新設される関税割当の対象となる「高級牛肉」の定義は以下の通り。
30カ月齢未満の未経産牛または去勢牛由来の牛肉であり、少なくとも、と畜直前の100日間について、濃厚飼料の含有率62%以上の飼料、および/または、乾物1キログラム当たり12.26メガジュール以上の代謝エネルギー(Metabolisable Energy)内容物を有する穀物粕のみで肥育され、かつ、対象となる未経産牛および去勢牛は、平均で、乾物換算で1日当たり生体重の1.4%以上の量を給与されていること。

※1カロリー=4.184ジュール
【前間 聡 平成21年7月15日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:井上)
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