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欧州委、7月22日に乳製品市場報告書を公表

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実施中の支援措置継続を表明する一方、生乳クオータ拡大凍結は拒否

 7月22日、欧州委員会は、6月の農相理事会の場で分析を要請されていた域内の乳製品市場報告書を公表した。この報告書の中で、欧州委員会は、「引き続き酪農家を支援し、域内市場を安定させるために講じ得るすべての措置を継続していく。」と表明する一方で、ドイツ、フランスなど主要酪農国より強く要請されていた生乳クオータの段階的拡大(毎年1%)の凍結については、現時点においてもEU全体の生産量はクオータを4.2%下回っており、状況の改善にはつながらないとして拒否した。

 この報告書の発表以前より、共通農業政策(CAP)の見直し作業として行う「ヘルスチェック」の一環で昨年末に政治的に合意された、生乳クオータの段階的拡大と2015年における撤廃という方針の転換はないとの見方が大勢を占めていたほか、実施中の支援措置継続についても必要な手続きが既に進められていることから、今回の報告書の内容は「想定の範囲内」と評価できよう。

欧州委は各般の支援措置を提示

 欧州委員会によれば、報告書の内容は以下のとおり要約されている。
  • 欧州委員会は、介入買い入れ、民間在庫補助、輸出補助金などの措置を継続する。
  • 生産者に支払われる予定の直接支払いの支給を前倒しするとともに、新たな乳製品消費促進プログラムを立ち上げる。
  • 上記のほかにも、割り当てられたクオータを超過した生産者から徴収した課徴金を自主的に酪農経営から撤退する生産者へ支給することや、各加盟国において講じられている生産者に対する緊急支援措置の拡大が含まれる。
  • さらに、各加盟国は、農村開発政策の枠組みにおいて酪農家を支援することも可能ではあるものの、昨年のヘルスチェック合意に基づき、酪農部門に対する支援を再配分することも可能である。
  • 欧州委員会は、食品供給チェーン、特に酪農部門における公正取引阻害のおそれある活動について調査を継続する。
  • 6月の欧州理事会の結論については、欧州委員会はクオータ制度について既になされた決定を覆さない。
 このように、欧州委員会は、クオータの段階的拡大の凍結を除き、講じ得るすべての措置を機動的かつ柔軟に講じていることをアピールする一方で、食品供給チェーン、特に牛乳・乳製品の生産、加工、流通における価格の反映について重大な関心を持っていることを明示している点は興味深い。これは、昨年来、生産者乳価と牛乳・乳製品の小売価格が必ずしも連動していないことについて、欧州委員会が問題意識を有していることの表れと考えられ、今後の欧州委員会側の動向が注目される。


乳製品市場報告書(欧州委員会ホームページ)
http://ec.europa.eu/agriculture/markets/milk/report2009/com2009_385_en.pdf
【前間 聡 平成21年7月23日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:井上)
Tel:03-3583-9535