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欧州委、世界の農産物市場の見通しを公表

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 欧州委員会は今般、2009年から2018年までの10年間の農産物市場の動向について分析、その見通しについて公表した。

 今回の見通しは、経済協力開発機構(OECD)、国連食糧農業機関(FAO)および食糧・農業政策研究所(FAPRI)による見通しを参考に分析を行っている。

中期的には楽観的な見通し

 同委員会によると、昨年の焦点は農産物の価格高騰であったが、現在は一転して昨年末からの世界的不況による景気後退やその回復速度が焦点となっている。一方、中期的には、全般的に、好調だった2007年以前の価格よりも上昇するとしており、楽観的な見通しとなっている。

「Meat&dairy prices projected under Baseline and DG Agri simulation」
  「Meat&dairy prices projected under Baseline and DG Agri simulation」
資料:OECD−FAO&DG Agri


品目別の見通しは以下のとおり。

トウモロコシ

 2003年以降、中国、メキシコなどの開発途上国の輸出の増加や、米国におけるバイオエタノール向け利用の拡大などにより需要が急増していたが、米国のエタノール需要は2015年にピークを迎え、それ以降は鈍化し、飼料向け利用に回されるとしている。また、最近の市場好調を背景に、耕地面積は拡大されており、その結果、2018/19年の生産量は、2009/10年と比較して1億トン以上の増加となる9億1千万トンとしている。
需要急増により高騰していた価格については、世界的不況や生産量の増加によりピーク時よりは落ち込むものの、高水準で推移するとしており、OECD、FAOの分析によると、直近10年間の平均価格と比較して約85%上昇するとしている。

食肉

 短期的に見ると、最近の世界的不況により食肉市場は鈍化、2009年はさらに落ち込み、2012年までには回復は見られるものの大きな改善は見られないとしている。しかし、長期的には、世界的な人口増加や開発途上国の経済成長により食肉市場は拡大するとしており、今後の10年間の食肉全体の生産・消費は1.9%拡大するとしている。品目別消費量を見ると、最も増加するとしている家きん肉は1年当たり2.3%増、続いて豚肉、羊肉でともに1.8%増、牛肉は1.3%増となっている。また、家きん肉の食肉消費量の占める割合は、全体の37%となり、豚肉(36%)を上回る予測となっている。

牛乳・乳製品

 今後10年間の生乳生産量は、経産牛1頭当たりの乳量が着実に増加していることから、約19%の増加を予測しており、この増加分の2分の1を中国、インドなどのアジア地区が、3分の1を米国、ブラジルが占める。
乳製品の生産量も生乳生産量の増加に伴い、大幅な増加を予測している。また、乳製品市場は、世界的不況からの経済回復や人口増加による消費拡大が予測され、特にバター、チーズの消費量が大幅な伸びを見せるとしている。なお、現在世界最大のチーズ輸出地域となっているEUについては、チーズの域内需要の拡大により輸出向け数量が減少し、その座をニュージーランドに譲ると分析している。乳製品価格については、2010年までは下降するとしているものの、長期的には、需要の増加と併せて飼料費や燃料費の上昇などにより高水準で推移し、1999〜2006年の平均価格と比較すると、大幅に上昇するとしている。しかし、生産者の収益は、生産費の上昇により2007〜08年と比較すると減少するとしている。
【小林 奈穂美 平成21年8月12日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:井上)
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