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欧州委、08/09年度生乳供給量を公表

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超過国5カ国からの課徴金総額は99百万ユーロと前年度の3割の水準

 欧州委員会は10月15日、08/09年度における生乳供給量を公表した。EUの生乳クオータ年度は毎年4月1日から翌年の3月31日までとされ、各加盟国は9月1日までに前年度における自国の生乳供給量をEUに報告する制度となっている。これによれば、08/09年度に加盟国別に配分されたクオータを超過したのは、イタリア、オランダ、オーストリア、キプロスおよびルクセンブルクの5カ国で、前年度の7カ国から2カ国減少した。また、課徴金の水準は超過分100kg当たり27.83ユーロ(約3,729円:1ユーロ=134円)に設定されており、これら5カ国から徴収される課徴金の総額は99百万ユーロ(約133億円)と見込まれており、前年度の340百万ユーロ(約452億円)の3割の水準まで減少した。
08/09年度における生乳クオータ超過/未達率
資料:欧州委員会

08/09年度のEU全体の生乳供給量はクオータを4.2%下回る

 08/09年度の課徴金総額減少の要因としては、08年下期から続いている域内の乳製品市場悪化が挙げられる。域内の乳製品市場悪化に連動する形で生乳価格も大幅に低下したため、酪農家による購入飼料給与の制限や酪農経営離脱などが生乳生産にマイナスに作用したと考えられる。
EUの生乳価格の動向
 10月15日付のプレスリリースにおいて欧州委員会のフィッシャー・ボエル委員(農業、農村担当)は、08/09年度のEU全体の生乳供給量がクオータを4.2%下回ったことに触れ、「生乳供給量がクオータを4%以上下回ったということは、ここ数カ月の生乳価格の低迷は、クオータ制度の段階的な廃止と何ら関係がないということを示している。」と強調し、フランス、ドイツなどから繰り返し主張されているクオータの段階的拡大および撤廃に対する凍結論に対する否定的見解を改めて示した。

 9月19日から24日までドイツのベルリンで開催されたIDF(国際酪農連盟)ワールドディリィサミットの席上でも、欧州委員会農業総局のHoelgaard次長は、
  • 1984年以降クオータが維持されてきたにもかかわらず、域内の酪農家戸数が急減しているのは、クオータにより離農を防ぐことができないことを意味していること
  • クオータは市場のシグナルが反映されにくい古典的な手法であることから2015年に撤廃するとしたものであり、今後は介入買入制度によるセーフティネットに重点化すること
を強調しており、欧州委員会としては、CAPヘルスチェックによる酪農政策改革について確固たる意志を持っていることがうかがえる。
EUにおける酪農家戸数の推移
【前間 聡 平成21年10月16日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:井上)
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