乳製品の介入買入在庫の一部を生活困窮者への食料支援制度で処理へ(EU)
生活困窮者への食料支援制度とは
生活困窮者への食料支援制度とは、1987年に創設された、EUの農産物に関する介入買入在庫を有効活用し、生活困窮者に食料を無料で配布する制度である。制度の発足当初は、配布される食料は介入買入在庫のみとされていたが、介入買入在庫が常に活用可能とは限らないことから、1990年代半ばより、一時的に在庫が活用できない場合は同種の農産物を市場から調達することも可能とされた。しかし、2005年以降、活用できる介入買入在庫(牛肉、バター、脱脂粉乳、砂糖、米、穀物)が急減し、2008年5月の時点では、砂糖を除き介入買入在庫が解消された状態となったことから、同制度は2008年に再び見直され、必要に応じて常時市場から農産物の調達が可能となると同時に、生活困窮者の増加予測に対応する形で予算も2009年より前年比6割増の約5億ユーロ(約685億円、1ユーロ=137円)まで拡充されることとなった。
バターおよび脱脂粉乳の介入買入在庫の一部が2010年において同制度の対象に
関係者からの情報によれば、11月5日に開催された乳業管理委員会において、累積したバターおよび脱脂粉乳の介入買入在庫の一部について、2010年の生活困窮者の食料支援制度の対象とすることが議論されたもようである。同制度の生い立ちを考えれば、この議論の流れは当然と言えよう。また、介入買入在庫の相当量を、回復途上にある域内市場に水を差さない形で処分できるという点も考慮されたとみられる。現時点で想定されている処理量は、バター51,000トン(11月5日現在の介入買入在庫:約83,000トン)、脱脂粉乳65,000トン(同約283,000トン)で、処分期間は2010年5月から9月の5カ月間とみられる。なお、バターについては、同制度に仕向けられる割合が大きいものの、2009年当初より累計で136,000トン余りのバターが別途民間在庫補助として保管されている点にも留意する必要があろう。
【前間 聡 平成21年11月10日発】
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