肉牛取引課徴金の据え置きを勧告(豪州)
現行の1頭当たり5ドルに据え置く旨の勧告を発表
豪州国内の牛肉産業関係者で組織する牛肉マーケティング資金拠出委員会(仮称)は5月上旬、生産者が肉牛の取引を行う際に課される肉牛取引課徴金(CTL)について、2006年に引き上げられたCTLの使途の評価分析を踏まえ、現行の1頭当たり5.0豪ドル(約364円:1豪ドル=72.7円)に据え置く旨を勧告した。
CTLについては、第一次産業課徴金法により定められ、その使途は、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)による食肉の研究開発や販売促進の財源の一部として、また、豪州動物衛生協議会(AHA)の行う家畜疾病対策や全国残留物質調査(NRS)に用いられている。その額は、1991年の6.25豪ドル(約454円)を頂点に引き下げが続き、1996年8月以降、3.5豪ドル(約254円)で据え置かれた。しかし、課徴金の引き上げが業界の将来的な利益につながるとして、2006年に1.5豪ドル(約109円)引き上げられ、1頭当たり5.0豪ドルとなっていた。なお、この引き上げの際の取り決めでは、業界側が豪州農漁林業大臣に代替案を提出しなければ、2011年1月以降、前回水準の3.5豪ドルに引き下げられることになっている。
同委員会は、資金拠出の見直しやCTLの使途を分析することを目的に、独立した組織として設置され、クイーンズランド州の肉牛生産者を委員長に、MLA、肉牛の牧草肥育や穀物肥育に関する部門を代表する豪州肉牛協議会(CCA)、豪州フィードロット協会(ALFA)、食肉処理加工業者や輸出業者などで構成される豪州食肉産業協議会(AMIC)、肉牛生産者、生体家畜輸出業者から選出された計14名の委員により構成されている。
課徴金の据え置きは、引き続き将来的な利益に
同委員会は、2006年以降におけるCTLの引き上げについて、(1)BSE発生の影響で米国産牛肉の輸入が制限されている日本および韓国市場において、販売強化により豪州産牛肉の地位を高めたこと、(2)環境問題や健康上の理由から赤肉消費を避ける風潮もある中、国内の牛肉消費支出を高い水準で維持させたこと、(3)ロシアおよび中国における販売促進のための事務所設立などにより、新興国での豪州産牛肉の地位を高めたこと、(4)インドネシア向けの生体家畜輸出を促進したことなど、業界に大きく貢献したとしている。
また、同委員会は、CTLを据え置く理由として、(1)追加投資の1.5豪ドル分は、生産者に投資額の約5倍の利益をもたらしたこと、(2)CTLを財源とした販促活動は、2006年以降の肉牛価格の堅調な推移に寄与したこと、(3)業界は、環境保全対策や主要市場における競合激化への対応など重要な課題を抱えていること、(4)業界は、牛肉市場における豪州産牛肉の地位向上を図るため広範囲のプログラムに投資を続けなければならないこと、(5)現行のCTLは、大きな金額ではないが、業界の将来にとって適切な投資であること、などを挙げている。
勧告内容について、今後、全国各地において関係者の間で議論
今回の勧告は、5月4日〜9日の間、クイーンズランド州のロックハンプトンで開催された全豪肉牛品評会「ビーフ・オーストラリア2009」のセミナーで発表された。この勧告について、業界団体の一部から引き下げを求めるなど反対の声も出ているものの、同セミナーに参加した多くの肉牛生産者はおおむね賛成との見方を示したと現地紙は報じている。
同委員会によると、今回の勧告内容については、2009年11月のMLA年次総会の際に行われる課徴金負担者による投票でその是非が問われることになっているが、同投票に向け、今後、全国各地において肉牛生産者など関係者の間で議論が展開されるとしている。
【玉井 明雄 平成21年5月19日発】
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