2009年の牛肉生産量は減少するも、2010年以降は増産見込み(豪州)
牛の飼養頭数はゆるやかな増加見込み
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は8月10日、2009〜2013年までの5カ年の肉牛需給予測を公表した。今回の予測は、2009年1月29日に公表した肉牛需給予測の期中改定版である。
これによると、2009年6月現在の牛飼養頭数は1.8%増の2,782万頭となった。これは、クイーンズランド(QLD)州や北部準州(NT)といった北部を中心に気象条件の回復から、牛群の再構築が進んだためである。なお、今回の予測では、当初予測に比べ1.0ポイント下方修正されたが、この要因として、2009年初めにQLD州北西部やNT州東部を中心に洪水の発生により家畜が消失したこと、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、南オーストラリア州、タスマニア州といった南部において2008/2009年度(7〜6月)、乾燥気候の影響や乳牛のとう汰が進んだことで、雌牛のと畜が増加したことが挙げられる。
また、中期的には、牛の飼養頭数は、北部を中心に気象条件が平年並みとなること、飼養頭数に占める雌牛の比率が高水準で推移することなどを前提とした場合、2010年以降も緩やかに増加し、2013年は、2008年比で8.5%増の2,964万頭に達すると予測している。
牛肉生産量、2009年は前年比2.4%減、2010年以降は増産見込み
2009年の牛と畜頭数(子牛を含む)は、北部を中心とした牛群の再構築の進展を背景に前年比3.1%減の850万頭と減少を予測している。このうち去勢牛は、前半のと畜頭数はかなり減少したが、後半はQLD州から重量級のグラスフェッドの出荷が増えることから、同4.6%減とやや減少すると見込まれている。一方、雌牛においては、南部における乾燥気候の影響や乳牛のとう汰が進んだことで、前半のと畜頭数はやや増加したが、後半は牛群の再構築背景に保留傾向が強まることから、同1.6%減とわずかに減少すると見込まれている。
中期的に見ると、2010年について、去勢牛は、グラスフェッドおよび一部グレインフェッドのと畜が増加することから、前年比でかなりの増加が見込まれている。一方、雌牛については、牛群の再構築の動きを反映し、前年比でわずかな増加にとどまると見込まれることから、全体として、同3.6%増の881万頭と見込まれている。その後、と畜頭数は安定的に増加し、2013年には、2008年比で9.0%増の956万頭に達すると予測している。
2009年の牛肉生産量(枝肉ベース)は、成牛と畜頭数の減少見込みなどを反映して、前年比2.4%減211万トンと見込まれている。中期的に見ると、2010年以降は、と畜頭数の増加を反映して、増産傾向で推移し、2013年は2008年比で12.6%増の243万トンとなると予測している。
2009年の牛肉輸出量は日本、米国向けは増加、韓国向けは減少の見込み
2009年の牛肉輸出量は、輸出需要および牛肉生産量の減少などから、前年比1%減の95万トン(船積重量ベース)と見込まれている。最大の輸出先である日本向けについては、輸出量は同3%増の37万5千トンと見込まれるが、輸出額は、日本国内における低価格志向が進んでいることなどから、減少すると見込まれている。米国向けについては、豪ドル安、米国内における低価格志向、同国の雌牛の牛肉生産量の減少により、同21%増の28万3千トンと見込まれている。韓国向けは、米国産牛肉との競合や国内消費の減退などにより、同17%減の10万5千トンが見込まれている。東南アジア向けは、主軸のインドネシア向けの大幅な増加見込みなどから、同21%増の7万6千トンと見込まれている。ロシア向けについては、2008年が7万2千トンと急増したが、2009年は同79%減の1万5千トンと大幅な減少が見込まれている。
一方、2009年の豪州国内の牛肉消費量は、経済の減速に伴い、消費者が牛肉に対する支出を減少する傾向にあることや牛肉生産量の減少見込みなどから、同5%減の69万トン(枝肉ベース)と2年続けて減少すると予測している。
【玉井 明雄 平成21年8月17日発】
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