畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2009年 > 採算がとれる水準以下の苦しい酪農経営(豪州)

採算がとれる水準以下の苦しい酪農経営(豪州)

印刷ページ

世界的な乳製品需要の低迷を受けて、苦しい酪農経営

 デイリー・オーストラリア(DA)は10月8日、340戸の酪農家を対象に経営状況について調査を実施(9月上旬)し、その回答を基に「酪農業の現状とその見通し」に関するレポートを公表した。今回の対象は、前回(2009年3月)調査時の酪農家の一部である。これによると、ほぼすべて(95%)の酪農家は、世界的な金融危機に伴う乳製品需要の低迷および低水準が続く国際乳製品価格、気象条件、低い生産者乳価などにより、採算がとれる水準と同等またはそれ以下の困難な経営を強いられていると回答している。

 9月調査時点では、回答者の60%(前回調査時から5ポイント低下)は、豪州全体の酪農業の将来について、見通しは明るいと考えている。また、回答者の66%、中でもタスマニア州については8割が、自身の酪農業の将来について、見通しは明るいととらえている。一方、見通しが暗いととらえている率が一番高かったのは西オーストラリア州であり、その割合は42%という結果となった。

16%の酪農家が離農を検討

 また、今後3年以内に離農する意向があると回答した酪農家は、前回調査時にはわずか3%であったが、今回の調査では、16%と増加している。中でも南オーストラリア州はその率が5%から32%まで増加した。これは、低い生産者乳価で長期間に及ぶ契約を提示されたことが影響している。また、冬期の多雨により、牧草の生育に影響が生じたタスマニア州では、0%から18%に増加している。

 多くの酪農家は、採算がとれない酪農経営を改善するため、次項のうち少なくとも1つは実施している。
  • 支出の削減(66%)
  • 負債の返済の先延ばし(43%)
  • 飼養頭数の削減(37%)
  • 補助飼料(穀物飼料、乾草含む)の給与量の削減(34%)
  • 雇用の削減(23%)
酪農家の現状とその見通し
 なお、調査実施後、多くの地域で春期の降水量に恵まれ、また、穀物飼料価格がいくぶん落ち着き、大手乳業メーカーからの生産者乳価の引き上げが発表された。また、かんがい用水の割当が改善され、国際乳製品市場においても価格および需要回復の兆しが見られるといった、豪州酪農経営にとって明るい側面も出てきている。今後は、豪ドル高が最大の懸案事項となるとの見方がある。

下落した生産者乳価について上院の経済諮問委員会が調査を開始

 今回の調査で、95%の酪農家が、初期生産者乳価(7月初旬各乳業メーカーが酪農家に提示)が過去5年の中で最低となったと回答している中、上院は9月10日、経済諮問委員会が複数の州において生産者乳価の下落要因などを調査することを要請した。委員会は、2010年2月28日までに報告することとなっている。
【杉若 知子 平成21年10月22日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:井上)
Tel:03-3583-9535