フィリピン農務省農業統計局(BAS)は、2008年1〜12月分の農業生産状況を公表した。農業部門全体における生産額(現行価格)は、前年比19.3%増の1兆1,623億ペソ(約2兆4,409億2千万円:1ペソ=2.1円)となった。
部門別では、作物部門が同23.9%増の6,349億ペソ(約1兆3,333億8千万円)、水産部門が同19.4%増の2,155億ペソ(約4,525億7千万円)となったほか、畜産関係については、家畜部門(牛肉、水牛肉、豚肉、ヤギ肉、生乳)が同11.0%増の1,810億ペソ(約3,800億5千万円)、家きん部門(鶏肉、アヒル肉、鶏卵、アヒル卵)も同10.7%増の1,309億ペソ(約2,749億1千万円)となった。このうち、家畜部門では豚肉の生産額が1,496億ペソ(約3,141億4千万円)で同部門生産額の約8割、家きん部門では鶏肉生産額が977億ペソ(約2,050億7千万円)で同じく約7割を占めている。特に、豚肉については、後述のとおり年間生産量が減少したものの、生産者販売価格が同13.1%高となったこともあり、生産額は同11.3%増と前年を上回った。
畜産関係の生産量を品目別にみると、家畜部門では豚肉が上半期に豚流行性下痢や豚コレラなどの疾病の影響で生産量が減少したことにより、通年では同1.6%減の185万6千トンとなった。しかし、他の品目では生乳が同2.8%増の1万4千トン、ヤギ肉が同1.9%増の7万8千トン、水牛肉が同2.5%増の14万トン、牛肉が同1.0%増の23万9千トンといずれも増加した。家きん部門では、鶏肉が同5.8%増の128万1千トン、鶏卵が同4.7%増の35万1千トンとなり、いずれも年間を通して好調を維持したものの、アヒル肉は同7.6%減の3万9千トン、アヒル卵が同9.7%減の4万2千トンとなった。BASは、鶏肉生産量が増加傾向で推移した理由として、北部のルソン地域でインテグレーターが養鶏農場を増設したことやブロイラーの委託契約生産農家数の増加などが主な要因と分析している。
作物部門の生産量は、トウモロコシが同2.8%増の692万7千トンとなったほか、サトウキビが同22.6%増の2,726万6千トン、キャッサバが同3.8%増の194万2千トンとなった。BASはトウモロコシ生産量について、生産者によるハイブリッド品種の利用拡大や耕作地の増加などにより前年を上回ったものの、大型台風による被害が6月下旬以降数回発生していることや、長雨による作付の遅れおよび肥料価格の高騰による肥料使用量減少の影響により、下半期における生産量の伸びが低下したとしている。また、サトウキビ生産量も大幅に増加していることについて、サトウキビの主要生産地域のうち中部のヴィサヤ地域と南部のミンダナオ地域が好天に恵まれたことが主な要因であるが、他作目からの転作も見られたとしている。
部門別の生産者平均販売価格は、豚肉が同13.1%高のキログラム当たり80.61ペソ(約169円)となったほか、鶏肉が同5.6%高のキログラム当たり67.36ペソ(約141円)となるなど、家畜および家きん部門ではすべての品目が前年を上回った。