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米国農務省、2008年産の主要穀物の需要見通しを大きく下方修正

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 米国農務省(USDA)は1月12日、2008年産の主要農作物の生産・需要見通しと、2009年産の冬小麦の作付面積予測を公表した。

トウモロコシは推定生産量を引き上げる一方で需要予測量を大きく下方修正

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が公表した「Crop Production 2008 Summary」によると、2008年産のトウモロコシの推定生産量は11月の予測値から8,130万ブッシェル引き上げられ、121億120万ブッシェル(前年比7.2%減)となった。春先の低温多雨と中西部を襲った洪水の影響による不作が懸念されたものの、夏場以降は一転して主産地が好天に恵まれたことなどにより、1エーカー当たり収量は前年を3.2ブッシェル上回る153.9ブッシェルとなり、結果的に前年に次ぐ史上2番目の高い生産量を記録した。

 一方、世界農業観測ボード(USDA/WAOB)が公表した1月の世界農産物需給推計の月次報告によると、2008/09穀物年度(2008年9月〜2009年8月)の米国のトウモロコシ需要予測量は前月から2億3,500万ブッシェル引き下げられ、119億5,000万ブッシェル(前年度比6.2%減)になるとされている。用途別に前月予測量と比べると、飼料向けは主要家畜の飼養頭数減少などにより5,000万ブッシェル減、エタノール向けは販売価格の低落による工場の採算性悪化などにより1億ブッシェル減、食品加工用向けは甘味料やでんぷんなどの需要低迷などにより3,500万ブッシェル減とされており、さらに、飼料用小麦との競合が見られ始めている輸出向けについても5,000万ブッシェル減とされるなど、すべての用途で需要予測量が引き下げられている。

 推定生産量の引き上げと需要予測量の引き下げの結果、2008/09年度末の在庫予測量は、前月から3億1,600万ブッシェル引き上げられ、17億9,000万ブッシェルに上方修正されている。この水準は前年度の期末在庫(16億2,400万ブッシェル)を上回っており、景気後退の影響によりトウモロコシの需給環境が急速に変化していることがうかがえる。なお、昨年12月中頃から先物取引価格はやや上昇傾向にあったが、USDAは2008/09年度の平均農家販売価格を前月から0.1ドル/ブッシェル引き下げ、3.55〜4.25ドル/ブッシェルになると予測している。

大豆は国内需要予測量を引き下げる一方で輸出需要は堅調と予測

 USDA/NASSによると2008年産の大豆の推定生産量は11月の予測値を3,860万ブッシェル上回る29億5,920万ブッシェル(前年比10.6%増)となった。収穫面積は過去最大の7,464万エーカーに達したが、は種の遅れや秋口のハリケーン被害などにより1エーカー当たり収量が39.6ブッシェルと過去5年間で最低の水準となったため、生産量は伸び悩んだ。

 一方、USDA/WAOBによると、2008/09穀物年度の米国の大豆需要予測量は前月から2,100万ブッシェル引き上げられ、29億4,800万ブッシェル(前年度比3.5%減)になるとされている。これを用途別に見ると、大豆ミール需要の急落などにより国内搾油向けが前月から3,000万ブッシェル引き下げられる一方、輸出向けについては中国向け輸出の増加を受けて5,000万ブッシェル引き上げられている。ちなみに、2008/09年度の大豆の輸出契約数量はほぼ前年並みの水準を維持しているのに対し、トウモロコシは前年の半分程度に減少している。

 以上のような需給状況を反映して、2008/09年度末の在庫予測量は、前月から2,000万ブッシェル引き上げられ、2億2,500万ブッシェルに上方修正されている。この水準は前年度の期末在庫(2億500万ブッシェル)こそ上回っているものの、依然として米国の年間需要量(輸出向けを含む)の1割以下の水準にとどまっており、トウモロコシに比べると必ずしも余裕があるとは言えない。なお、大豆についても昨年末から先物取引価格はやや上昇傾向にあったが、USDAは2008/09年度の平均農家販売価格を8.50〜9.50ドル/ブッシェルとしており、中央値は9.00ドル/ブッシェルで前月予測から変更していない。

2009年産冬小麦の作付け面積は大幅に減少へ

 USDA/NASSが公表した「Winter Wheat Seedings」によると、2009年産の冬小麦作付け予測面積は4,210万エーカー(前年比9.0%減)で、前年から418万エーカー減少した。このうち、米国最大の冬小麦産地であるカンザス州の作付面積が900万エーカーと前年から60万エーカー減少したほか、ミズーリ州で45万エーカー、イリノイ州で35万エーカー、サウスダコタ州で30万エーカーの減少が予測されるなど、コーンベルト周辺の州における作付面積減少が目立っている。

 2008年度における米国の主要作物の総作付面積は3億2,409万エーカーであり、このうちトウモロコシが8,599万エーカー(全体の26.5%)、大豆が7,572万エーカー(同23.4%)、小麦6,315万エーカー(同19.5%。うち、冬小麦が4,628万エーカー。)を占めており、これに牧草の収穫面積6,006万エーカー(同18.5%)を加えた4作目で、米国の全作付面積の8割強を占めている(注)

 2009年産の冬小麦の作付面積が大きく減少している背景には、小麦価格が国際的に下落基調にあることなどを見込んで、農業者が小麦からトウモロコシや大豆に作付品目を変更しようとする動きがあるとされる。
特にコーンベルト周辺の冬小麦作付面積の減少が大きいことを考えると、冬小麦の作付面積の減少が2009穀物年度におけるトウモロコシや大豆の生産増加要素となる可能性は極めて高く、穀物全体の需給や価格に与える影響の側面からもその動向を注視していくことが重要と考えられる。

(注)米国の一部では冬小麦と大豆の二毛作が行われている。
表1 主要州におけるトウモロコシの単収と生産量
表2 主要州における大豆の単収と生産量
表3 米国における主要飼料穀物の需給見通し
【郷 達也 平成21年1月14日発】
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