米国牛肉・豚肉業界の大手JBS社、鶏肉業界大手のピルグリム・プライド社を買収
米国牛肉・豚肉業界大手のJBS社は16日、米国鶏肉業界大手のピルグリム・プライド社の買収に合意したと発表した。ピルグリム・プライド社は、2006年末に業界第3位のゴールド・キスト社を買収した際の負債やトウモロコシの先物取引に失敗したことなどにより経営難に陥ったことから、昨年12月に連邦破産法第11条の適用による民事再生の手続きを開始しており、現在、再建中のところであった。
ピルグリム・プライド社は、再建計画に基づき、既発行株式が36%となるよう新たな株式を発行することとし、残りの64%に相当する新株式をJBS社が8億ドル(736億円:1ドル=92円)で購入するとしている。
企業買収により拡大するJBS社
JBS社はブラジルに本社を置き、牛肉部門ではブラジル、アルゼンチン、米国、豪州およびイタリアで、また、豚肉部門では米国で活動している世界最大の食肉企業である。
JBS社は2007年にスイフト社を買収し米国牛肉業界第3位となった。昨年には同第4位のナショナル・ビーフ社と同第5位のスミスフィールド・ビーフ社の買収に合意し、成立すれば同業界第1位になるところであったものの、寡占化を懸念する司法省の提訴によりナショナル・ビーフ社の獲得には至らなかった経緯がある。
JBS社は、牛肉および豚肉の両部門においてそれぞれ業界第3位の生産規模を誇っているが、今回、ピルグリム・プライド社を買収し新たに鶏肉部門に参入したことにより、この買収が認められれば、牛肉・豚肉・鶏肉の3部門でいずれも第2位の生産規模を誇るタイソン・フーズ社と肩を並べることになる。
米国の食肉業界の将来を左右する司法の判断の行方
これまで効率化を求めて企業の垂直統合を進めてきたJBS社にとって、今回の買収は、経営の多角化を進めリスクを分散させるという試みともいえる。昨年のJBS社に対する司法省の提訴は牛肉部門における寡占化を懸念したものであり、今回の部門を越えた合併においては問題はないとする意見がある一方、政権が変わったことにより厳しい結果になると見る向きもいる。司法の判断は現時点では不明であり、今後の動向が注目される。
【中野 貴史 平成21年9月17日発】
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