米国の畜産物飼料作物の短期的な需給見通し
インフォーマ・エコノミクス社は11月19〜20日、「Fall Outlook Conference」を開催し、米国の主要畜産物および飼料穀物の短期的な需給見通しを公表した。世界的な景気低迷などに伴い国内外の畜産物需要が伸び悩む中、トウモロコシ価格の高止まりなど生産コストの上昇に苦しむ米国の畜産農家にとって、2010年はどのような需給状況が見込まれるのか、牛肉、豚肉、生乳、トウモロコシを中心に概要を報告する。
牛肉:生産の減少により需給が改善し、牛肉卸売価格は前年をやや上回る見込み
生産コストの上昇、販売価格の低下により、肥育牛生産者の経営状態が悪化していることから、牛肉の生産規模は縮小傾向が続いている。2010年1月時点の牛飼養頭数は1963年以来最少の数値となることが見込まれており、このような縮小傾向を反映し、2010年のと畜頭数は前年比1.1%減の33025千頭、枝肉生産量は0.9%減の25758百万ポンド(11684千トン)と見込まれ、牛肉卸売価格は生産の減少を反映して、7.8%高の152ドル/100ポンド(カットアウトバリュー、チョイス級600-900ポンド)と予測されている。
豚肉:生産者が頭数を十分に絞り込み、輸出が伸びれば、2010年の収益は黒字に転じる見込み
新型インフルエンザ(H1N1)の発生などに伴う豚肉の輸出の落ち込みや価格の低下により、養豚生産者は1頭出荷するごとに25ドルの損失を出している状況にある。2010年については、新型インフルエンザ(H1N1)の影響が緩和し輸出需要が増加することが見込まれており、輸出は前年比9.01%増の4405百万ポンド(1998千トン)と推測されている。また、生産量については、生産者が20〜30万頭の母豚をとう汰することを前提として、前年比3.5%減の22163百万ポンド(10053千トン)と見込んでいる。このような生産、輸出条件が揃えば、豚肉の卸売価格は前年比24.1%高の71ドル/100ポンド(カットアウトバリュー)になると見込まれており、この結果、2010年は肉豚生産者の収益は黒字に転じ、1頭当たり10ドル未満になると予測されている。
生乳:生産者の自主的とう汰の効果もあり、2010年は需給が改善し、乳価は上昇する見込み
昨年秋以降の世界的な景気悪化に伴う乳製品の国際価格の低迷や、米国内の生乳生産の増加などにより、米国内の生乳、乳製品価格は低下し、酪農家の収益(=乳価−飼料価格)は悪化した。2009年の収益は政府の補助金を加味しても、前年比36.9%減の7.3ドル/100ポンドとなっている。このような中、酪農家は自主的に母牛のとう汰に取り組み、昨年10月からこれまでに約25万頭のとう汰を行っている。この結果、2010年の生乳生産量は前年比0.1%減となることが見込まれている。また、米国同様、世界的にも生乳需給が改善方向に進んでいることから、クラスI(飲用向け)乳価は前年比39.9%高の16.05ドル/100ポンド、クラスIII(チーズ、ホエイ向け)乳価は同39.5%高の15.80ドル/100ポンド、クラスIV(脱脂粉乳、バター向け)乳価は同49.4%高の16.21ドル/100ポンドと見込まれている。この結果、2010年の収益は前年比68.1%増の12.27ドル/100ポンドに改善すると予測されている。
トウモロコシ:市場の動向などを踏まえ、作付面積は増加する見込み
トウモロコシの先物市場価格が好調なことや、トウモロコシの生産コストが2010年は低下し、収益性の向上が見込めることなどから、生産者はトウモロコシの作付を増やすと見込んでいる。具体的には、収量は前年(2009/10)の162.9ブッシェル/エーカーよりやや低下し161.4ブッシェル/エーカーと見込まれるものの、作付面積を前年比330万エーカー増の8970万エーカーと見込み、2010/11の生産量は前年を3.1%上回る13320百万ブッシェルとしている。また、生産者価格は前年比8.2%安の3.35ドル/ブッシェルとしている。なお、このトウモロコシの予測の前提としては、休耕事業への申し込み面積が270万エーカー減少することなどが挙げられている。
【上田 泰史 平成21年11月23日発】
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