南米の農畜産業をめぐる情勢(2009年12月)
(アルゼンチン)
大統領が2009年の牛肉輸出の大幅な増加を発表
クリスチーナ・キルチネル大統領は、2009年の牛肉輸出量(ヒルトン枠などを含む)を約58万9000トンと見込み、過去最高であった2005年の水準近くになると発表した。また、国家動植物衛生機構(SENASA)によると、アルゼンチンの牛肉輸出(冷蔵・冷凍、製品重量ベース。ヒルトン枠、内臓類を除く)は、同年1月〜11月の輸出量が前年同期比70.3%増の約33万6000トンとなったのをはじめ、ヒルトン枠や内臓類など各品目で軒並み増加している。
牛肉輸出増加の原因は、収益性の高い大豆生産の拡大や一部地域での干ばつにより放牧地が減少していることから、繁殖用メス牛などのと畜が増加していることが大きいが、この結果、同国の牛飼養頭数は減少していることから、2010年の牛の供給不足が一部で懸念されている。なお、牛肉価格は12月に入り、年末需要を控えていることなどもあり上昇している。
2009/10年度の大豆収穫量は過去最高の5080万トンの見込み
穀物を扱うロサリオ商品市場の予測によると、2009/10年度の大豆のは種面積は1870万ヘクタール、収量は1ヘクタール当たり2.75トンとなっており、収穫量は過去最高の5080万トンと見込まれている。この原因としては、コルドバ州やサンタフェ州などの一部の地域におけるトウモロコシ栽培からの転換などが考えられる。
(ブラジル)
2010年の牛肉輸出は増加の見込み
ブラジル牛肉輸出産業協会(Abiec)によると、2010年の同国の牛肉輸出量は、前年比20%増の約228万トンと見込まれている。この原因として、現在のレアル高にもかかわらず、チリやアフリカ諸国などへの輸出増加が見込まれることが挙げられている。また、輸出価格も2009年の1トン当たり3,000ドル(約28万2000円、1ドル=94円)台から4,000ドル(37万6000円)へ上昇するとしている。
ブラジル製初の遺伝子組み換え種子の販売を許可
国家バイオ安全技術委員会(CTNBio)は、ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)とドイツの多国籍企業BASFが共同で開発した、除草剤に耐性を持つ遺伝子組み換え(GM)大豆の販売を許可した。
10年間の調査の結果として開発された新品種は、これまで国内の販売が許可されていた唯一の品種、MONSANTO製のRoundupReady(RR)と競合することになる。新品種は2012年より利用が開始され、国内市場だけでなく、中国を含む20カ国の大豆生産国で利用される可能性も考えられている。
2010年のブラジル フーズの投資額は10億レアル以下の見込み
ブラジル鶏肉業界第1位のぺルジゴン社と第2位のサジア社の合併による新会社、ブラジル フーズ(BRF)のジョゼ・アントニオ・デ・プラート・フェイ社長によると、同社の2010年の投資額は2009年における合併前の二社の投資額合計した11.7億レアル(約620億円(推定)、1レアル=53円)を下回る10億レアル(530億円)と見通している。
同社長によると、今後2年間のBRFの経営戦略は、合併による相乗効果を利用することにあり、また、2010年は2015年までの新たな投資計画の準備を始めねばならず、その場合、海外における買収計画が大きく影響すると述べた。なお、BRFの営業活動は、既に経済擁護管理委員会(CADE、ブラジルの国内の市場の独占を規制する機関)から、海外市場については認可されているが、国内市場については、2010年上半期までに認可されると見込まれている。
JBS社が豪州の高級羊肉パッカーを買収
JBS社は、JBS豪州(旧スウィフト社)を通じて豪州の高級羊肉パッカー、Tatira Meat社を買収したと発表した。買収額は3000万ドル(約28億2000万円)で、と畜処理能力は、JBS豪州を合わせると、1日当たり2万4500頭となり、豪州最大の羊肉パッカーが誕生することになる。同社はBordertown South Austrariaと呼ばれる高級羊肉を生産する地帯に工場を持ち、年間売上高は約2億豪ドル(約174億円、1豪ドル=87円で、海外市場への展開も視野に入れている。
ある業界アナリストによると、JBS社は牛肉部門でのシェア拡大が困難になってきているため、牛肉以外の食肉部門でのシェア拡大を図りつつあるとしている。
【石井 清栄 平成22年1月12日発】
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