南米の農畜産業をめぐる情勢(2010年1月)
アルゼンチン
牛肉価格上昇に伴い、肉牛価格も上昇が続く
昨年末からアルゼンチン国内の牛肉価格が上昇していることに伴い、肉牛価格も上昇している。市場関係者によると、国内の去勢牛価格は1キロ当たり1.28〜1.33ドル(約116〜121円、1ドル=91円)となり、これまで同国より割高であったウルグアイの去勢牛価格を上回ることになった。INAC(ウルグアイ牛肉研究所)によると、ウルグアイの去勢牛価格はアルゼンチンの価格を4%以上下回る同1.22ドル(111円)となった。
2009年の牛肉の平均輸出価格がメルコスール諸国で最上
アルゼンチン農牧漁業省市場局によると、2009年の同国の牛肉平均輸出価格は、1トン当たり3,972ドル(約36万1000円)とメルコスール諸国の中で最も高く、ウルグアイは同3,680ドル(33万5000円)、ブラジルは同3,268ドル(29万7000円)であった。同局は、この原因として同国の家畜品種の優秀性、牛肉パッカーの優れた加工技術などを挙げている。
クイックフ−ド社が大規模フィードロット建設へ
ブラジル第2位の牛肉パッカーであるクイックフード社(マルフリグ社の企業傘下にある牛肉パッカー)は、収容能力が年間2万2000頭の大規模フィードロットを建設するため、コルドバ州アルタ・グラシア県モンテ・ラ−ロ市に150ヘクタ−ルの土地を購入した。土地代などを含めた投資額は、640万ドル(約5億8200万円)とみられており、州や市の建設許可などの手続きが順調に進めば、年内にも稼働する予定である。
過去最高の大豆収穫で200億ドル近くの外貨収入見込み
2009/10年度の大豆収穫量が過去最高の5000万トン以上を記録すると見込まれる中で、アルゼンチンの2010年の大豆および大豆製品の輸出による外貨収入は、輸出価格の回復も相まって前年比50%増の200億ドル(約1兆8200億円)近くになるとみられている。また、これによりパンパを中心とする大豆生産地域の経済活性化も期待されている。
ブラジル
2009年の鶏肉輸出額は前年比15.9%減
ブラジル鶏肉輸出協会(ABEF)によると、2009年の同国の鶏肉輸出は、輸出量では前年比0.3%減の約363万トンであったが、国際金融危機の影響による日本、ロシアなどの需要減少、輸出価格の低下、レアル高などにより、輸出額では同15.9%減の約58億ドル(5,280億円)となった。ABEF関係者によれば、2010年はこれら諸国の需要回復に加え、輸入関税を引き下げが予測されるインドへの新たな輸出が期待されている。
大豆生産は過去最高の見込み
国家食料供給公社(CONAB)の2009/10年度第4回穀物調査結果によると、今年度の同国の穀物生産量は歴代2位の1億4135万トンとなる見込みである。特に、大豆は前年度比14%増の6516万トンと過去最高を記録する見込みである。一方、トウモロコシについては、同3.2%減の3280万トンとなる見込みである。
大豆栽培が北部・北東部へ拡大
CONABによると、ブラジル北部・北東部への大豆栽培が拡大している。同地域における2009/10年度の生産量は、前年度比15.7%増の644万トンと、全国の生産量の10%に達すると予想される。特に、マラニャン州、トカンチンス州、ピウアイ州の伸びが著しく、前年度比18%増加する見込みである。
着実に業績を上げるミネルバ社
業界第1位のJBS社と第2位のマルフリグ社の2極化が進むブラジルの牛肉パッカー業界で、自社の経営合理化を進めてきた業界第4位のミネルバ社が着実に業績を上げている。2009年における同国の輸出に占める同社のシェアは、1月の15%から9月には22%へと増加し、国内最大となった。これを反映し、同社の同期間における株価上昇率はJBS社の91%、マルフリグ社の152%を大きく上回る230%となった。同社の同年第4四半期の収益は、過去最大であった前四半期を大幅に上回るものと予測されている。なお、同社は、大規模農業協同組合のAURORA ALIMENTOSを買収するのではないかと伝えられている。
チリ
2009年の豚肉輸出は前年比7.8%増
チリ養豚生産者協会(ASPROCER)によると、2009年の同国の豚肉輸出は、国際金融危機やペソ高の影響が懸念された中で、主要輸出先の一つである韓国向けが回復したことなどから、輸出量が前年比7.8%増の20万6000トンとなった。しかし、輸出額は輸出価格の低下から、ほぼ前年並みの3億6800万ドル(334億9000万円)となった。2010年については、国際需要の回復や新規市場開拓などにより、前年比14%増の23万3000トンと見込まれている。
【石井 清栄 平成22年2月19日発】
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