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南米の農畜産業をめぐる情勢(2010年2月)

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(アルゼンチン)

政府は2010年の牛肉輸入を否定

 昨年末から、肉牛の供給不足に伴い国内の牛肉価格が上昇している中、アルゼンチンの農牧団体幹部は、独立200周年である2010年にウルグアイなどから牛肉を輸入せざるを得なくなると警告している。これに対し、ドミンゲス農牧漁業相は、同国が牛肉を輸入しなければならない可能性はないと反論している。

「国家養豚開発計画」を発表

 クリスチーナ・キルチネル大統領は、アルゼンチンの豚肉消費拡大などを目的とした「国家養豚開発計画」を発表した。同計画の一環として、(1)豚肉の小売価格を引き下げるため、国家農牧取引監督機構(ONCCA)が養豚業の飼料の一部を助成すること、(2)豚肉の長所を普及させ国内消費を振興すること−などが行われる。同国では、豚肉の安定的な国内供給のためには、豚の保有頭数の増加が必要となっている。

国際金融危機の影響で、2009年の鶏肉および乳製品輸出金額が減少

 2009年のアルゼンチンの鶏肉および乳製品輸出は、国際金融危機の影響を受け、数量では増加したものの金額で減少した。
 
 ONCCAによると、2009年の鶏肉輸出は、数量で前年比8.8%増の約14万6000トンとなった一方で、金額では同6.9%減の約1億9700万万ドル(約179億3000万円、1ドル=91円)となった。 

 また、国家動植物衛生機構(SENASA)によると、2009年の主要乳業メーカー30社の乳製品輸出は、数量では前年比6.0%増の約31万5000トンとなったものの、金額で同39.0%減の約7億3600万ドル(669億8000万円)となった。

大豆収穫は5200万トン以上の見込み

 ブエノスアイレス穀物市場によると、2009/10年度の大豆収穫量は恵まれた降水量により作柄がさらに改善され、5200万トン以上と見込まれている。一部の業界関係者によれば、5500万トンに達するのではないかとの見方もある。

(ブラジル)

2010年に期待される中国向け牛肉輸出

 在北京ブラジル大使館が本省に送った報告によると、中国は、マットグロッソドスル州で発生した口蹄疫により2005年以降続けてきたブラジルからの牛肉輸入制限について、国際獣疫事務局(OIE)が認める口蹄疫清浄地域(ミナスジェライス州ほか15州およびブラジリア)を認知し、これらの地域について輸入制限を解除することを決定した。これは、中国おける牛肉消費の増加を背景とし決定されたもようだ。米国農務省(USDA)によると、中国の牛肉輸入は、2008年の6000トンから2010年には2万5000トンになると見込んでいる。

2009年の1人当たり牛肉消費量が増加

 民間農業調査会社の推計によると、2009年のブラジルの1人当たり牛肉消費量は、国内牛肉価格の低下から消費意欲が上がったため、前年比10.0%以上増の同33〜34キログラムとなった。2010年については、消費量の増加が見込まれるものの、牛肉輸出の増加も見込まれることから、2009年の上昇率には及ばないとしている。

南米最大の酪農協同組合が発足へ

 ミナスジェライス州のITAMBE、CEMILおよびMINAS LEITE、ゴイアス州のCENTRO LEITE、パラナ州のCONFEPARの5つの酪農協同組合が経営統合し、今月、南アメリカ最大の酪農協同組合が発足する見込みである。

 発足後の組合名はITAMBEが使用され、組合員4万人、1日当たりの生乳受入量700万リットル(ブラジル国内の10%)、年間売上高40億レアル(約2040億円、1レアル=51円)の規模となり、ブラジル乳業界第1位のネスレ社に迫るものとなる。

 民間調査会社のアナリストによれば、今回の経営統合は国際金融危機の影響により誘発され、今後の国際市場におけるブラジル産乳製品の競争力強化に貢献することが見込まれている。

GM農作物の栽培面積が拡大

 国際バイオテクノロジー調査機関(ISAAA)によると、2009年のブラジルの遺伝子組み換え(GM)農作物の栽培面積は、前年比35.4%増の2140万ヘクタールとなり、米国に次ぐ世界第2位のGM農作物栽培面積を保有する国となった。その内訳は、大豆1620万ヘクタール(作付面積全体の75.7%)、トウモロコシ500万ヘクタール(同23.4%)、綿花15万ヘクタール(同0.7%)などとなっている。

(チリ)

2009年の豚肉消費量は前年比8.0%減

 チリ養豚生産者協会(ASPROCER)によると、2009年の同国の1人当たりの豚肉消費量は、国際金融危機の影響による国内消費の不振から、前年比8.0%減の18.5キログラムとなった。なお、現地新聞報道によると、同年の食肉消費量は、同4.9%減の70.1キログラムとなった。

(パラグアイ)

2009/10年の大豆生産量は700万トンの見込み

 世界第4位の大豆輸出国であるパラグアイでは、2009/10年の大豆生産量について、降雨不足と病害による減少が懸念されていたが、従来の予想通りとなる700万トンが見込まれている。
ブラジル鶏肉、チリ豚肉 2009年12月の需給
【石井 清栄 平成22年3月18日発】
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