乳業メーカーの新規参入でフォンテラの集乳シェアが低下(NZ)
フォンテラの集乳シェアは9割以上を占め他社を圧倒
ニュージーランド(NZ)の酪農乳業は、巨大酪農協フォンテラが集乳シェアの9割以上を占め他社を圧倒している。2008/09年度(6〜5月)の同社の集乳量も乳固形分ベースで1281千トンと過去最高を記録した。しかし、ニュージーランド農林省(MAF)が先ごろ発表した同業界における競争施策について業界の意見を求めた諮問書によると、フォンテラの集乳シェアは、近年、低下傾向にある。
競争施策のもとフォンテラは生乳を他社へ供給
NZ酪農乳業界では2001年、乳製品輸出の一元管理の権限をニュージーランドデイリーボードに付与する法律が廃止されるなど規制緩和が行われた。また、この年設立されたフォンテラが、NZの集乳シェアの95%以上を占めることとなったことから、業界内の競争を促進するためいつくかの措置が設けられ、その中で、政府はフォンテラの集乳量の最高5%まで統制できるようになった。この結果、フォンテラは現在、年間60万キロリットルを上限として生乳(regulated milkと呼ばれる)を他社にフォンテラの支払乳価に準じた乳価で義務的に供給している。供給先は、国内市場でフォンテラと競合関係にある食品大手のグッドマンフィールダー社(上限:25万キロリットル)、独立系乳業メーカーなど(同:1社につき5万キロリットル)となっている。
フォンテラの集乳シェアは2001/02年度の96%から2008/09年度に92%へ低下
同報告書によると、2001/02年度、フォンテラの集乳シェアは96%、残る4%を小規模な2つの酪農組合であるタツア(Tatua Dairy Co-operative Ltd)とウェストランド(Westland Milk Products Ltd)が占めていた。しかし、その後、オープンカントリーデイリー社、ニュージーランドデイリーズ社、シンレイ社といった独立系乳業メーカーが新規参入を図り、2004年以降、輸出向けの粉乳やチーズを主体に製造を開始したことから、2008/09年度におけるフォンテラの集乳シェアは92%に低下している。なお、これら3社以外にも新規参入の意向を発表している企業が数社ある。
フォンテラの集乳シェアは南島でより低下
また、これら独立系乳業メーカー3社の2008/09年度における集乳量の地域別内訳を見ると、南島が約6割、北島が約4割を占めている。同国の生乳生産量のうち約3分2を北島が占める中で、南島の割合が高いのは、これら独立系乳業メーカーの進出が、ほかの畜種から酪農への経営転換などにより生乳生産が増加傾向にある南島でより顕著であるためとしている。こうしたことから、2004/05年度から2008/09年度におけるフォンテラの集乳シェアは、南島で90%から85%、北島で98%から95%と、南島がより低下している。
フォンテラによる生乳供給義務措置の撤廃条件を2012年5月末にも満たす見込み
なお、フォンテラ以外の乳業メーカーの1シーズンにおける集乳量が一定の条件を満たした場合、フォンテラに生乳供給を義務付ける措置は撤廃されることになっている。この条件は、北島と南島で異なり、北島では、島内乳固形分総生産量のうち12.5%以上になった場合であり、一方、南島では、乳固形分ベースで65千トン(生乳ベース:約78万キロリットル)以上を集乳し、かつ、うち1社がウエストランド地方以外から25千トン(同:約30万キロリットル)以上を集乳するようになった場合である。MAFでは、2012年5月末にはこれらの撤廃条件を満たすと見込んでいる。しかし、この場合、特に、新規参入の意向を発表している企業にとっては、原料乳確保に支障を来すことなどから、MAFは撤廃条件の見直しについて業界の意見を求めており、今後これから意見を踏まえ、同措置をどのように取り扱うのかその行方が注目される。
【玉井 明雄 平成22年1月22日発】
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