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豪州乳業最大手マレー・ゴールバン、ワーナンブール買収に意欲

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MGCは酪農家に対しWCBの買収提案に関する声明文を発表

 豪州乳業最大手のマレー・ゴールバン酪農協(以下、「MGC」という。)は1月29日、傘下の酪農家に対する声明文を発表し、この中で、MGCが昨年12月、ワーナンブール・チーズ&バター・ファクトリー社(以下、「WCB」という。)に対し買収提案を行ったものの、WCBが12月下旬、これを拒否する旨を豪州証券取引所(ASX)に通知していたことを明らかにした。現地報道によると、MGC以外にもカナダ資本の乳業大手サプート社がWCBに対し買収提案を行ったが、同様に拒否されたとしている。

 デイリー・オーストラリア(DA)の資料によると、2008/09年度(7月〜6月)における豪州の生乳生産量939万キロリットルうち、MGCの集乳量は第1位の約340万キロリットル(36%)、WCBはパルマラット社と並び第4位の約60万キロリットル(6%)となっている。WCBは、ビクトリア(VIC)州の西部や中央部、南オーストラリア州の南東部に約600戸の酪農家を傘下に収め、国内外の市場に乳製品を供給している。
2008/2009年度における豪州乳業メーカーの集乳シェア

WCBはMGCの買収提案を拒否するも、MGCは今後も合併交渉を継続する意向

 豪州乳業界では、国際乳製品価格の下落などを反映して2009年1〜2月にかけて乳業メーカー各社が生産者乳価の引き下げを行ったが、WCBは同年3月末にも乳価の再引き下げを発表した。このため、傘下の酪農家の一部が乳価の引き下げによる収入の目減りを嫌い、生乳の供給先をほかの乳業メーカーに移すといった事態が起き、WCBの業績悪化が取りざたされていた。なお、業界関係者の間では、現在、国内外の乳製品価格が上向きであることなどから、WCBの業績は改善しているとみられている。

 MGCは、今回の声明文において、WCB社との合併は、国内外の市場での事業拡大や生産者乳価の改善につながり、両社双方の酪農家に利益をもたらすなどとしている。一方、WCBは、MGCの買収提案について、WCBの価値を正当に評価していないなどとして、これを拒否したとされる。しかし、MGCは、今後もWCBとの合併交渉を継続する意向を示している。

干ばつによる生乳生産量の減少によりMGCはビクトリア州北部のチーズ工場を閉鎖

 また、MGCは2月3日、VIC州北部リーチヴィル(Leitchville)のチーズ工場を閉鎖すると発表した。MGCよると、VIC州北部およびニューサウスウェールズ州南部リベリナ地域は、全国の生乳生産量の約2割を占める主要酪農地域であるが、近年の干ばつによる影響で同地域の生乳生産量は、2001/02年度の300万キロリットルから2009/10年度の175万キロリットルまで落ち込むと見込まれている。こうした中、同社は、VIC州北部にある同社の5工場すべてで操業を続けることは困難であるとし、リーチヴィル工場の閉鎖に踏み切った。これにより同工場の従業員80人の雇用に影響が出るとのことである。なお、VIC州北部のほかの4工場(コブラム、ロチェスターほか)や同地域以外の工場については、従来通り操業し、リーチヴィル工場の減産分については、同社のほかの工場で補うこととなるとしている。また、今回の決定は、顧客への製品受渡しに支障を来すものではないとしている。
【玉井 明雄 平成22年2月4日発】
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