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米国農務省、2010年の農業観測会議を開催

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 米国農務省(USDA)は2月18〜19日、「Agricultural Outlook Forum 2010」を開催し、2010年の米国の主要農産物をめぐる情勢について議論された。このうち、主要畜産物および飼料穀物の2010年需給見通しについて報告する。

ヴィルサック農務長官の基調講演

 フォーラムの開催に当たって、ヴィルサック農務長官より、農家の高齢化が急速に進んでいるが、これは米国の地域社会の現状を表しているものであり、USDAとしては地域社会の今後の発展のために、(1)生産性向上などの研究開発の推進、(2)食品の安全性確保を通じた市場の維持、(3)地産地消の推進や食料へのアクセス改善による国内市場の拡大、(4)技術支援など、各国の状況に応じたアプローチによる輸出促進、(5)農畜産物および農畜産物残さのエネルギー利用、(6)天然資源を活用したハンティングやフィッシングなどの推進、などの取り組みを実施する旨の講演が行われた。

牛肉:牛群は2010年も減少傾向、繁殖農家の経営は改善の見込み

 キャトルサイクルは、2005年から2007年にかけて上昇し、その後下降局面に入っている。こうした中、生産コストの上昇および販売価格の低迷により肉牛生産者(繁殖農家および肥育農家)の経営は赤字に陥っており、頭数拡大のインセンティブが働かない状況にある。2010年の牛肉生産量は、と畜頭数の減少などから前年比1パーセント以上の減少となる257億ポンドと、生産規模の縮小傾向が続くと見込まれている。

 2010年の牛肉輸出量については、米ドル安と世界経済の回復を背景に、経済成長の継続が見込まれるアジア諸国メキシコを中心として、前年比9パーセント増の20億4千万ポンドが見込まれている。

 2010年の肉用牛経営のうち繁殖経営については、生産規模の縮小に伴い、肥育素牛の供給が減少し、素牛価格の上場が見込まれることから、繁殖農家の経営状況は改善すると見込まれている。

 また、肥育農家の経営状況についても、2010年の肥育牛(去勢、チョイス級、ネブラスカ)の平均価格は、前年の100ポンド当たり82.68ドル(約7,700円。1ドル=93円)を上回る同85〜91ドル(約7,600〜8,500円)に上昇すると予測されており、緩やかに改善するものと見込まれている。

豚肉:2010年の後半から収益性は改善する見込み

 飼料コストの上昇や新型インフルエンザ(H1N1)の発生などに伴う豚肉の需給緩和により、養豚生産者はこの2年間赤字が続いている状況にある。アイオワ州立大学によると、昨年は、1頭出荷するごとに26.04ドル(約2,400円)の赤字となっており、2010年1月も依然として1頭当たり2.23ドル(約207円)の赤字となっている。

 2010年の豚肉生産量は、米ドル安およびカナダ国内における飼養頭数の減少によりカナダからの豚の生体輸入が大幅に減少することや、生産者の母豚とう汰の取り組みによりと畜頭数が減少することなどにより、前年比2%減の225億ポンドと見込まれている。また、輸出量については、世界経済の回復及び米ドル安により、前年比9%増の45億ポンドと見込まれている。このように前年に比べ豚肉需給がひっ迫することから、肥育豚価格(赤身率51-52%)は昨年の100ポンド当たり41.24ドル(約3,800円)を上回る、同46-49ドル(約4,300〜4,600円)になると見込まれており、養豚生産者の収益性も今年の後半から改善するとみられている。

鶏肉:輸出量の減少が鶏肉価格に影響を与える可能性

 ブロイラー生産者は、2008年の飼料コストの上昇や収益性の悪化により生産削減を実施し収益性の改善を図ってきたところである。しかし、2009年11月〜12月のひなふ化羽数は前年並みとなっており、2010年の鶏肉生産量は、前年比約1%増の359億ポンドになることが見込まれている。特に、2010年の第4四半期には前年比3%の増加が見込まれている。

 2010年の鶏肉輸出量については、ロシアにおいて関税割当数量の削減や塩素処理した鶏肉の輸入禁止が措置されたことや、中国においてアンチダンピング措置により2月13日以降、米国産鶏肉に43〜105%の関税が課せられることにより、前年比約15%減の58億3千万ポンドと見込まれている。

 2010年の鶏肉卸売価格(丸どり(中抜き))については、2009年の1ポンド当たり77.6セント(約72円)と比較して平均同77〜82セント(約72〜76円)と予測されるが、生産量が増加する第4四半期には数セント下がると見込まれている。

酪農:生乳需給の改善により乳価は回復するものの、2007〜2008年の水準には達しない見込み

 2008年秋の世界的な金融危機の発生に伴い乳製品輸出が減少したことや国内の需要が弱まったことなどから、それまで増加傾向にあった米国の生乳生産は過剰気味となり、2009年前半の乳価低迷につながった。このような深刻な状況を踏まえ、生産者は酪農協共同基金(CWT)を活用して2009年後半の半年間で20万1千頭の乳用牛とう汰を実施し、2009年の生乳生産量を前年比0.4%減に押さえるなど、生乳需給の改善に努めたところである。2010年の生乳生産量については、約2%程度の経産牛飼養頭数の減少が見込まれるものの、1頭当たり乳量が1.8%伸びることが予想されるため、前年比0.2%減の1889億ポンドとわずかな減少にとどまることが見込まれている。

 乳製品輸出量については、世界的な景気回復と国際乳製品価格の上昇から、乳脂肪分ベースでは前年比17.1%増の48億ポンドとなり、無脂乳固形分ベースでは同13.2%増の257億ポンドと見込まれている。

 生乳需給が前年に比べ改善するため、2010年の乳価は上昇すると予測されるが、2007年、2008年の水準には到達しないとみられる。なお、2010年の100ポンド当たりの全生乳平均価格は、2009年の12.65ドル(約1,176円)から2010年には16.20〜16.90ドル(約1,500〜1,570円)になると予測されている。

飼料:トウモロコシの生産予測量は、過去最大の前年をわずかに上回る。大豆の生産予測量は前年をわずかに下回るも高水準

 2010年産トウモロコシについては、1エーカー当たりの収量は過去最大となった昨年より4.3ブッシェル下回る160.9ブッシェル、作付面積は昨年より2.5百万エーカー増となる89百万エーカーとされ、生産量は過去最大が見込まれている昨年を9百万ブッシェル上回る13160百万ブッシェルと予測されている。

 総消費量は、エタノール向けが昨年より200百万ブッシェル増の4500百万ブッシェルとされる。なお、2月3日に公表された新たな再生可能燃料基準(RFS2)の最終規則および今年の夏にも予想されているガソリンへの混合率の上限値の変更はこの予測値に加味されていない。1ブッシェル当たりの生産者平均販売価格は、昨年より0.1ドル(約9円)下回る3.60ドル(約335円)と予測されている。

 大豆については、2010年産の作付面積は肥料価格が低下していることからトウモロコシへの作付転換が進むと見込まれ、昨年を0.5百万エーカー下回る77百万エーカーと予測されている。また、1エーカー当たりの収量も42.9ブッシェルと昨年より減少し、生産量は過去最大となった昨年を101百万ブッシェル下回る3260百万ブッシェルと予測されている。一方、輸出量は、競合する輸出国のアルゼンチンとブラジルの豊作が予測されていることから、昨年より75百万減少の1325百万ブッシェルとなり、1ブッシェル当たりの生産者平均販売価格は昨年を0.65ドル(約60円)下回る8.80ドル(約820円)と予測されている。
【中野 貴史、食肉生産流通部食肉事業課 三部 史織、
調査情報部調査課 藤井 麻衣子 平成22年2月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤井)
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