米国、ロシアと米国産豚肉輸入再開に合意
ヴィルサック米農務長官は3月5日、米ロシア両国政府は、抗生物質の残留関係でロシア向け輸出が禁止されていた米国産豚肉および豚肉製品について、ロシアへの輸出を再開することで合意に至ったと発表した。
早ければ3月8日の週から輸出可能な施設の認定を開始
米国産豚肉のロシア向け輸出については、昨年12月、ロシア当局が、抗生物質の残留量がロシアの基準を満たしていないとの理由により、同国向け豚肉の9割以上のシェアを占める13食肉施設からの輸入を禁止する意向を示していた。その後、本件に関しては両国間で継続的に協議が行われていたが、3月1日からモスクワで行われていた交渉において、輸出再開の合意に達したところである。
今回の合意は、ロシアの抗生物質の残留基準を満たしている旨の証明書を新たに発行することで輸出が可能となるものであり、輸出再開を希望する施設は、ロシア向け輸出証明プログラムを作成している米国農務省農業市場流通局(USDA/AMS)から認定を受ける必要がある。USDA/AMSは早ければ3月8日の週から施設の認定を開始すると見込まれている。
ヴィルサック農務長官は豚肉輸出におけるロシア市場の重要性を強調
ヴィルサック農務長官は今回の輸出再開合意に当たって、「米国の豚肉産業において輸出は極めて重要であり、第5位のロシアへの輸出再開は米国養豚生産者にとって非常に良いニュースである」と米国豚肉産業における今回の合意の重要性を強調している。これに対して、全米豚肉生産者協議会(NPPC)のバトラー会長は、「ロシア向けの輸出再開は非常に喜ばしく、USDAや米国通商代表部(USTR)のこれまでの努力に感謝する」とコメントする一方で、「米国の豚肉は国際的基準を満たしており、新たな輸出証明プログラムは必要ないと思っていた。しかし、ロシアは新たな輸出証明プログラムを必要としており、我々もロシアに輸出したかった」と今回の合意に関して複雑な心境の一端をのぞかせている。
上昇傾向にある豚肉価格に対してさらなる好材料
ロシア向け豚肉輸出については、ロシアが米国に対する2010年の関税割当数量を2009年の100,000トンから57,500トンに減らしている。このため、今回の合意によりロシア向け輸出が再開されたといっても、ロシアへの年間輸出量が昨年を上回る可能性は少ないものと考えられるが、供給減により昨年末から好調な状態を維持している豚肉卸売価格および肥育豚価格にとっては、今回の合意決定は相場のさらなる好材料になるものと考えられる。
【上田 泰史 平成22年3月5日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 (担当:藤井)
Tel:03-3583-9532