トピックス

●●●肉用子牛生産者補給金(17年度第3四半期)、全品種交付なし●●●

 1月24日、農林水産省が公表した17年度第3四半期(10〜12月)の指定肉用子牛の平均売買価格は、黒毛和種が507,400円/頭、褐毛和種が392,200円/頭、その他の肉専用種が240,100円/頭、乳用種が113,200円/頭、交雑種が260,000円/頭となり、5品種すべて保証基準価格を上回った。これにより、生産者補給金の交付はされない。また、子牛生産拡大奨励事業についても発動はない。生産者補給金が全品種そろって交付されなかったのは、平成2年度第2四半期(7〜9月)以来15年ぶりとなる。

 肉用子牛価格は肥育コストに直結することから、枝肉卸売価格に強く影響されるが、その枝肉卸売価格が、年末需要を背景として、特に堅調に推移したことに加え、15年12月の米国におけるBSE発生による米国産牛肉の輸入一時停止から品薄高が続いていた。このことで、肥育農家の導入意欲が高まり、子牛価格が高値で推移したことにより保証基準価格を上回ったと思われる。

表1 指定肉用子牛の平均売買価格(17年度第3四半期)


●●●17年(1〜12月)の牛肉輸入量、前年を6.4%上回る●●●

 貿易統計(速報)によると、17年(1〜12月)の牛肉輸入量(部分肉ベース)は、生鮮・冷蔵が229,987トン(前年比10.5%増)、冷凍が229,901トン(同2.7%増)、全体(煮沸肉、ほほ肉、頭肉を含む。)では460,923トン(同6.4%増)となり、前年を上回った。北米産牛肉の輸入停止により主要輸入国となった豪州産は411,847トン(同4.4%増)、ニュージーランド産が37,966トン(同13.2%増)となり、シェアはそれぞれ89.4%、8.2%となりその位置を高めた。(また、その他(米国、カナダ、豪州、ニュージーランドを除く)の輸入量も11,019トン(同194.6%増)となっており、メキシコなど中南米からの輸入が大幅に増えたことが特徴として挙げられる。(図1)

図1 牛肉輸入量の国別シェア

 なお、12月12日に2年ぶりに北米産牛肉の輸入が解禁されたことから、12月の輸入量には、米国産41トン、カナダ5トン(ともに生鮮・冷蔵)が含まれる。しかし、米国産については、1月20日にせき柱を含む米国産子牛肉が発見されたことから、再び輸入は停止となっている。

 

●●●17年の豚肉輸入量、チリが大幅に伸びる●●●

  貿易統計(速報)によると、12月の豚肉の輸入量は、冷蔵品16,999トン(前年同月比8.9%増)、冷凍品37,587トン(同25.3%減)、合計で54,601トン(同17.1%減)となった。これにより17年(1月〜12月)の豚肉の輸入量合計は87万3千トン(前年比1.1%増)となった。16年は、米国産牛肉の代替需要などの要因により、前年を15%上回っていたが、17年はわずかな伸びとなった。

 17年に輸入された豚肉の輸入量を国別にみると、米国が29万トン(シェア33%)、デンマークが23万トン(同26%)カナダ゙が20万トン(同22%)、チリ5万トン(同6%)、メキシコ3万トン(同4%)、その他7万トン(同8%)となった。昨年4年ぶりに米国を抜いてシェア第1位となったデンマークは、前年より3万7千トン輸入量を減らし、米国に次ぐ第2位となった。

 デンマークからの輸入豚肉は、そのほとんどが冷凍品でありベーコンなどの加工原料となるベリー(ばら)が多いのが特徴であるが、17年はEU域内での流通量が増加したことなどもあり、輸入量が減少したものと見られ、その分米国、カナダからの輸入量が増加した。(図2)

図2 豚肉の国別輸入量(1〜12月合計)

 一方、輸入量を最も大きく伸ばしたのはチリで、前年を1万3千トン上回る、前年比32.8%の増加となっている。チリとはEPA交渉の前提として17年1月から産学界からの協力を得つつ共同研究をすすめ、17年11月に、日チリ首脳会議で交渉開始に合意しているところである。チリとの農林水産貿易バランスは日本の輸入額が大幅に上回っており、主要品目に豚肉が挙げられているところである(16年農林水産物輸入実績で227億円 第3位)。また、メキシコとの間では17年4月にEPA協定が発効されており、従価税を4.3%から2.2%とする豚肉の特恵輸入枠を17年度の3.8万トンから21年度に8万トンとする措置が執られることとなっている。

 

●●●17年の子取り用雌豚頭数が0.2%増加●●●

 (社)日本養豚協会の「子取り用雌豚飼養頭数と戸数」調査によると、17年8月1日現在の子取り用雌豚の飼養頭数は、914,737頭と前年を0.2%上回った。(図3)

 これを飼養頭数規模別に見ると、500頭以下の飼養規模層が前年の頭数に比べ3%程度減少する一方、500頭以上の層が5%程度増加しており、引き続き大規模層が頭数を増やしている。この傾向は11年以降変わっていない。

 特に1,000頭以上の層は、前年に比べ7.5%増と伸びが大きく、小規模層の減少を補うかたちでの増頭が進んでおり、この結果、119戸の1,000頭以上層は、戸数シェアでは1.7%であるが、頭数シェアでは、26.7%と全体の4分の1を上回る規模層となっている。

 子取り用雌豚飼養頭数の推移を地域別に見ると、昨年に比べ増加傾向にあるのは、北海道、東北地域と九州、沖縄地域で、それぞれ、1.9%、0.6%の伸びとなっている。両地域とも1,000頭以上の規模層が3割以上を占めており大規模経営の先進地域といえる。

 反対に、減少率が大きい地域は東海、近畿地域で、前年に比べ、それぞれ3.2%、7.3%の減少となっている。

図3 子取り用雌豚の飼養頭数

 一方、養豚経営農家戸数は、16年11月の家畜排せつ物法の施行に伴い経営を断念する農家が増加することが懸念されていたが、全体で7,731戸と436戸(5.3%減)の減少であった。経営形態別のうち減少率が最も大きかったのは子取り専門農家(10.7%減)であった。

 


●●●鶏肉の家計消費量、増加●●●

 17年12月の鶏肉推定出回り量は、156,362 トン(1.0%)となった。その内訳を見ると国産品119,350トン(3.6%)、輸入品37,012トン(▲6.4%)となった。最近の国産鶏肉の消費動向を当機構調べのPOS情報で追ってみると、17年8月から購買量が伸びており、12月では1,000人当たり20キログラムを超え、昨年の同月を2キログラム程度上回った。(図4)

図4 国産鶏肉の購買動向(POS情報)

 また、総務省の家計調査による家計消費量を見ると12月の鶏肉の消費数量は、1人当たり406グラムでこの調査でも前年の12月を19グラム(4.9%)上回った。

 さらに、POS調査における鶏肉の主要部位別の購買動向を見ると16年10月から17年1月までは冬場の鍋物需要などで鶏肉が全般的に伸びていたものの2月から6月までは、むね、もも、手羽類の購買量が低下し、ささみが増加した。昨夏は暑さが厳しかったため、脂肪分の少ないあっさりしたささみ肉を使ったメニューが好評だったことから季節の販売戦略として販売店舗が力をいれた商品であったことが伺える。

 7月以降は動きが徐々に逆転し、最需要期の年末に向かうにつれ、むね、もも、手羽類の購入量が増加した。(図5)

図5 鶏肉主要部位別の購買動向(16年10月=100)

 


●●●牛乳消費減退要因分析調査結果●●●

 牛乳類の消費量は、平成6年をピークに減少し、14年は一時的に増加したものの、15年から再び減少傾向となっている。16年は、記録的な猛暑となり、牛乳類の消費の伸びが期待されたが、予想ほど伸びず、また、秋以降大幅に減少している。このため、社団法人日本酪農乳業協会では、「なぜ、消費者が牛乳から離れていったのか」を明らかし、今後の牛乳消費拡大に向けての手がかりとするため、「牛乳消費減退要因分析調査」を行った。

 まず、今回の調査で、牛乳消費の増減の両面でどこが転換期になっているかが確認できた。

〈減少〉
最も顕著なタイミングは、全世代共通して15歳で、学校給食がなくなったのを機に減少。2002年での減少も特徴的で「ほかの飲料を飲むようになった」という意見が目立ち、豆乳などの台頭により、他飲料の陰で牛乳の存在感が弱まったことがうかがえる。

〈増加〉
以下の三つのタイミングと理由が発見された。(1)1990年後半:世代に関わらず「骨粗しょう症、骨を丈夫にするために」「健康を意識して」(2)2003年:特に50代以上のシニア層において「健康を意識して」(3)2005年:30代後半以上を中心に増加

 また、牛乳には、「太る・カロリーが高い」という飲用に対して否定的な意識が強く、「肥満・生活習慣病が気になる」という健康意識の変化に対応していない。また、飲料全般で「すっきり・さっぱり」志向が高く、牛乳の特徴である「コク」「まろやかさ」への期待は低いことが明らかになった。消費減退の主な要因は二つある。

(1)生活者の牛乳に対するイメージは非常に貧困で、漠然とした健康感は感じられているものの、牛乳・乳製品が持っている本来の健康・美容に対する近年明らかになった価値が十分に認識されていない。したがって、生活者が現在持っている抗肥満・骨・歯を強くする、骨粗しょう症の予防、よく眠れるなどの健康ニーズに対応しきれていないこと。

(2)牛乳の飲用シーンは、「朝食時」に極端に特化されており、かつ、その朝食の摂取率は若年になるほど減少している。このことが牛乳の消費減退に二重に影響を及ぼしていること。

 これらの結果を踏まえて、今後の課題としては、今までの漠然として健康感ではなく、具体的な健康ニーズを期待して日常的に万人に飲まれる牛乳に強化し、大人の飲用機会を促進し、牛乳飲用層を拡大することが必要と考えられる。

たとえば、

・牛乳のタンパク質が分解されてできるオビオイドペプチドには鎮静作用があり、心地よい眠りに誘う。

・牛乳に含まれるビタミンAは肌の新陳代謝を促し、ビタミンB2は皮脂の分泌を調整し、肌の状態を整える。

・乳糖や乳酸菌は、腸内環境を整え、女性に多い便秘の解消や肌荒れの防止につながる。

・日本の中高生を調査した結果、牛乳を1日400ミリリットル飲み続けた生徒は、ほとんど飲まない生徒に比べ、体脂肪率が2パーセント も低下した。

 などといった具体的な健康ニーズを満たす飲料としての理解浸透を図ることが上げられる。
また、消費者の嗜好の変化に対応するため、「すっきり・さっぱり」志向や「後味のよさ」に応える新商品開発が求められる。

 

●●●サイズ別鶏卵価格、17年平均はMS玉が高値●●●

 鶏卵の流通価格はサイズ別に設定されているが、一般的に価格水準が高いときには小玉卵(MS、Sなど)が高く、大玉(L、LL)が比較的安く、価格水準が低いときには反対の傾向があると言われている。

 12年から17年のサイズ別卵価をみたところ、顕著な傾向はなかったが、卵価が高水準に推移した17年は、LL中値の平均値は195.5円、L中値平均202.6円、M中値平均204.4円、MS中値平均204.5円、S中値平均194.3円、SS中値平均112.7円となり、M玉を100としたときの指数はそれぞれLL96、L99、MS100、S95、SS55となった。この間は、比較的MS玉が高い価格となった。(表2)

表2 東京での鶏卵卸売価格

 鶏卵は、家計仕向けと業務・加工仕向けがほぼ半々で消費されているが、近年は一世帯当たりの人数の減少により少量、小型包装の食品の流通形態が増加してきており、鶏卵の場合も、従来の10個パックに並んで、L玉6個パックの形態や特殊卵を1個ずつの選べるものなど数量、サイズなどを選択できる多様な購入形態になってきている。

 

●●●99.9%の畜産農家が管理基準に適合(家畜排せつ物法)●●●

 農林水産省生産局畜産部畜産企画課は、平成17年12月1日時点における家畜排せつ物法の規定に関する施行状況について調査結果を公表した。

 これによると、管理基準適用対象農家(飼養規模、牛:10頭以上、豚:100頭以上、鶏:2,000羽以上、馬10頭以上)は、61,312戸であり、全畜産農家数134,394戸のうち45.6%であった。また、管理基準に適合している畜産農家数は、61,237戸であり、管理基準適用対象農家に占める割合は約99.9%となった。

 残りの管理基準に適合していない畜産農家数は75戸であり、前回調査(17年6月1日時点)の170戸に比べて減少している。

 一方、法に基づく行政指導などの実施状況は17年12月1時点までに47戸(指導及び助言)および3戸(勧告)となっている。

図6 管理基準への対応状況(態様別)

表3 管理基準への対応状況(畜種別)


お詫びと訂正
 前月号(2006.2)鶏肉のトピックス(P45〜46)「ブロイラー養鶏経営農家の全国平均所得率は
 8.3%」の記事に下記のとおり誤りがありましたのでお詫びして訂正させていただきます。
  1 P45左の上から2行目「平成16年個別経営の営農累計別経営統計」→「類型
  2 同4行目「ブロイラ−養鶏経営農家(ブロイラ−出荷羽数3万羽以上)」→削除
  3 P46左の上から1行目「平均的な養鶏農家」→「ブロイラ−養鶏農家
  4 P46右の上から1行目「飼養頭羽数」→「ブロイラ−販売数


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