トピックス

●●●8例目となるBSE感染牛を確認●●●

 厚生労働省は10月6日、茨城県での牛海綿状脳症(BSE)に関するスクリーニ
ング検査で陽性となった牛について、同日開催された「牛海綿状脳症の検査に
係る専門家会議」においてBSEと判断されたことを明らかにした。

 また、異常プリオンたんぱく質のタイプが従来のものと異なることから、非
定型的なBSEであるとし、今後、伝達性などを確認するための実験動物への接
種実験が必要であるとしている。

 国内でのBSE感染牛の確認は、2003年1月以来のことで、今回で通算8例目と
なる。確認された牛は、23ヵ月齢のホルスタイン種の去勢牛で、これまで確認
された牛に比べて極めて若齢であり、EUなど他のBSE発生国(地域)と比べて
も異例であること、当該牛が肉骨粉の給与禁止措置後に生まれていることなど
から、関係者の間に波紋を広げている。

 農林水産省では、当該牛の同居牛について、当面、患畜となる恐れのある家
畜として管理し、もう少し知見を収集した上で対応を判断するとしている。

 なお、現在、流通している牛肉は、と畜場において、月齢にかかわらず全頭
を対象としたスクリーニング検査で陰性となったもののみであり、安全性には
全く問題がない。

●●●豚肉の家計消費量、ジリ上がり●●●

 豚肉卸売価格(東京・省令)は、14年の夏場から低迷が続いており15年8月は
385円/kg、9月は394円/kgと夏場では異例の400円台割れとなっている。国産品
の仲間相場は、どの部位とも対前年20〜30%前後低く推移しているものの、国
産品の小売価格は、対前年度並みで、ロース230円/kg程度、ももで162円/kg程
度と安定的に推移している。

 総務省の家計調査報告による消費動向を見てみると、豚肉の高い消費は、BSE
の代替需要のため14年の秋口まで続いていたが、その後、平年並みの420kg/人
(全国平均)前後で推移し、15年8月の1世帯当たりの豚肉の消費量は、1,346g
(▲3.7%)、1人当たりでは422g(▲3.9%)となり、豚肉消費量は、好調で
あった対前年比を下回っているものの徐々に回復の兆しを見せている(図1)。

 また、当機構での小売動向調査(POS調査:レジ通過人数1,000人当たりの購入
数量)を見ると輸入量の増加に比例して、輸入豚肉の購入量が増加傾向にあり、
14年7月〜12月は9〜11kg、最近では、10〜11kgと安定して推移し、冷夏の影響
を受けて増産傾向にある国産品も、8月は27.6kg(1.2%)と健闘している(図2)。

 プロ野球優勝セールなどで景気回復の兆しが見え隠れする中、末端消費の不振
が心配されているが、今後の年末商戦に期待したい。
図1 1世帯当たりの家計消費量の推移(豚肉、前年同月比)
資料:総務省「家計調査報告」

図2 POS調査による豚肉購入量の推移(国産、輸入別)
資料:農畜産業振興機構
注:全国主要6地区の計9量販店でのレジ通過1,000人当たりの購買数量

●●●国産鶏肉卸売価格ようやく上向く●●●

 昨年の国産鶏肉卸売価格(もも肉)はBSEによる代替需要に加え、外国産鶏
肉の衛生問題もあり、国産品志向が顕著となった。その結果、例年値下がりが
懸念される8月も600円台を維持するなどかなり高い水準となった。15年は、例
年になく冷夏であったことにより育成率、増体率ともに上向いたため生産量は
昨年を上回って推移した。加えて、ブロイラーのBSEの代替需要も終息したこ
とから、7月を底に8月以降若干値上がりしたものの、昨年を大幅に下回る結果
となった。9月に入り生産調整の動きとともに、価格は上昇傾向となり、9月の
初め1キログラム526円(国産もも肉、東京)であったものが、10月初めには59
8円となり72円もの値上がりとなっている。

●●●鶏肉の栄養素について●●●

 鶏肉は必須アミノ酸のバランスが良く、身体に対する生理機能が優れている。
旨味成分であるイノシン酸を多く含み、そのため塩分を抑えてもおいしく食べ
られるとのことである。部位により栄養価、健康効果が違うので、部位別に調
理方法を変えると効果的である。

 むね肉はアンセリン、カルノシンが多く含まれ脳の神経細胞を保護し、活性
酸素除去効果がある。アンセリン、カルノシンは水溶性であるため汁ごと食べ
るとより効果がある。

 もも肉にはカルニチンが多く含まれ、カルニチンを摂ると中性脂肪やコレス
テロールを下げる効果がある。カルニチンの効果を引き出すには焼くのが良い。

 ささみにはナイアシンを多く含んでおり、血液の循環を良くし、精神安定作
用がある。ビタミンEを含む食品と一緒に食べるとより効果を増す。

 など、栄養面を配慮した調理方法の普及が望まれる。

●●●脱脂粉乳在庫増の背景●●●

 平成12年6月の食中毒事件以降、加工乳の需要は落ち、一方、乳飲料の需要
はかなり回復し、健康志向によりヨーグルトの需要も拡大している。改訂され
た公正取引規約の効果によって生乳100%の飲用牛乳のみが、「牛乳」という
商品名を使用することが認められたため、低脂肪やビタミン添加といった機能
性よりも自然のもののイメージの方が消費者に受け入れられた形となっている。
そのため、脱脂粉乳の在庫増が続いており、6カ月連続で8万トンを超えている。

 今夏は例年にない冷夏となり、予想された生乳の需給のひっ迫は緩和された
感があるが、9月に入り学校給食の開始と気温の上昇により、一部の地域で生
乳の不足が顕在化した。

●●●全国鶏卵需給調整協議会での新たな計画生産●●●

 15年9月19日に農林水産省において全国鶏卵需給調整協議会が開催され、従
前の検討会で検討されてきた新たな計画生産への移行のイメージが提示された。

 現行では、「行政主導で羽数枠管理による需給調整の計画生産」を推進して
いるところであるが、今後は、「生産者の自主的判断に基づく生産」に移行し
ていくに当たり、その前提条件等の説明がされた。

 具体的な対応方針としては、

@生産者の自主的判断にあたり同省が、「生産ガイドライン」を作成・提示し、
 生産者はそれを踏まえて個々に経営診断を行う。

A中小経営の構造転換への支援としての予算措置及び大規模層の協力による卵
 価基金への拠出負担の軽減の検討。

B生産者による生産者のための組織を発足させ、新たな生産体制への転換の円
 滑化等を推進。

 これらを、実施していくためには、タイムスケジュールに則った鶏卵生産ガ
イドラインの作成、各団体等の意見調整等が重要になってくるが、生産者と行
政が一丸となって取り組んでいくことが今後の国内の安定的な鶏卵生産、ひい
ては、消費者の安全・安心志向の高まりなどに対応していく強力な手段と思わ
れる。
新たな鶏卵対策の検討方向について


●●●10〜12月期配合飼料価格、引き下げ●●●

 全農は9月22日、10〜12月期の配合飼料供給価格を全国全畜種総平均トン当
たり約200円値下げすることを決定した。この値下げは、海上運賃が前期に比
べ値上がりすると見られる一方で、8月から高値が続いていた飼料穀物価格が
若干下がると予想されていることなどを踏まえてのもの。全農の動きに追随し、
値下げ幅は異なる場合があるものの、専門農協系および商系もそれぞれ引き下
げた。

<最近の原料コスト動向等>

・とうもろこしのシカゴ相場は、8月に入り米国の中西部で高温・乾燥が続き、
 生育状況の悪化が懸念されたことから、240セント/ブッシェル台まで上昇し
 た。しかし、今後は、米国産トウモロコシの豊作が予測されていることなど
 から、前期に比べて下がりするものと見込まれている。

・副原料の大豆かす価格は、シカゴ市場で米国産大豆の期末在庫の減少により
 高騰し、需給がひっ迫していた。国内大豆油かす価格も同様にシカゴ市場の
 高騰を受け値上がりしたが、10〜12月期は、前期に対してやや値下がりする
 と見込まれている。魚粉価格は、主産地ペルーが10月末まで禁漁であるもの
 の、主要輸入国の買い控えのため、産地相場は弱含んでいる。国内魚粉の生
 産が低調であるが、需給が安定して いるため、現行水準での展開が見込ま
 れる。
図3 副原料の輸入価格(CIF)
資料:財務省「貿易統計」


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