トピックス

●●●依然として大きい食料品小売価格の内外価格差●●●

 農林水産省が公表した「東京及び海外主要5都市における食料品の小売価格調査結果」によると、平成15年11月時点での東京およびニューヨーク、ロンドン、パリ、ジュネーブ、シンガポールの各都市の一般小売店舗で販売されている食品29品目について、内外価格差(東京=100)を比較すると、ジュネーブで122と東京より割高である一方、その他の都市では57〜92といずれも東京より割安であった。

 昨年の調査結果と比較すると、内外価格差は、ニューヨーク、ロンドン、パリでは3〜10ポイント縮小し、東京に比べて割高なジュネーブでは14ポイント拡大した。この要因としては、(1)野菜などを中心として東京の生鮮食料品の価格が平年に比べて大きく下落したこと、(2)欧州の一部で記録的な猛暑から食料品の価格が高騰したことなどが挙げられる。

図1 食料品の内外価格差
資料:農林水産省
 注:東京における小売価格を100とする。

 畜産物について品目別にみると、牛肉(ロース)および豚肉(肩肉)では、ジュネーブで東京より割高であるほか、その他の都市では割安となっている。鶏肉(むね肉)については、東京の価格がシンガポールに次いで2番目に割安であるものの、ボンレスハムや牛乳では、東京が最も割高となった。

東京および海外主要5都市の畜産物等の小売価格(平成15年11月)

●●●豚のと畜頭数、5カ月ぶりに前年同月を下回る●●●

 5月の豚肉の卸売価格(東京・省令価格)は、457円となり年明け以降、前年を上回って推移している。東京中央卸売市場などによると、関東周辺の入場頭数は、例年に比べ少く、価格を押し上げる原因となっているとのこと。

 入場頭数減少の要因は、「肉豚生産出荷予測」にもみられるように、昨年の受胎率が低かったことや空梅雨、猛暑による増体重の停滞などが考えられ、秋口までは、前年を下回ると予想されていることから、国産豚肉の価格は堅調に推移すると思われる。

 一方、この時期、輸入豚肉の関税の緊急措置解除が重なり、4月以降、輸入量が一気に増加したことにより在庫量が20万トンを超え、夏休みによる給食の停止や海外旅行などによる消費の落ち込みを考慮すると、在庫の積み増しも心配される。

図2 と畜頭数と卸売価格(東京・省令)の推移
資料:農林水産省「食肉流通統計」、東京食肉市場(株)

●●●最近の国産鶏肉卸売価格の動き●●●

 ここ3年間の国産鶏肉の卸売価格は、BSEの代替需要、海外での疾病の発生などによる輸入量の減少などに影響を受けた。

 もも肉は、13年12月の752円(1kg当たり、東京、以下同じ)をピークに14年前半には、牛肉の代替需要により前年を上回ったものの、その後牛肉需要の回復により前年同月を下回って推移していた。

 国内で鳥インフルエンザが発生した16年の年明けには価格は大きく落ち込んだものの、5月に入って、消費の回復とともに鶏肉は特売品として扱われることも多くなり、特にもも肉の品薄感が強まり、5月、6月は540円、587円と上昇した。

 一方、むね肉の価格は、13年12月の331円を最高に、14年以降価格は低下し、200円前後で推移し、もも肉に比べ価格大きな変動は見られなかった。

 しかし、国産鶏肉の卸売価格の動きに、鳥インフルエンザの発生などにより大きく影響を受ける輸入品の推定在庫量を重ねてみると、特に輸入品と競合し外食用や冷凍食品用に回ることの多いむね肉は、輸入在庫量が少なくなったときに、国産むね肉の引き合いが強くなり価格が上昇する傾向にある。

図3 国産鶏肉卸売価格(前年同月比)と輸入在庫量の推移
注:卸売価格は東京

●●●チーズ総消費量に占める国産割合が低下●●●

 農林水産省が6月17日に公表した「平成15年度チーズの需給表」によると、国産ナチュラルチーズの生産量(在庫の取り崩しを含む)は、直接消費用が前年度に比べて2.4%上回ったものの、プロセスチーズ原料用が6.7%減少したことから、合計では前年度をやや下回る34,899トン(▲3.3%)となった。

 ナチュラルチーズの輸入量は、プロセスチーズ原料用が1.7%増加し、直接消費用が同4.6%増加した結果、総量としては前年度をやや上回る195,751トン(3.5%)となった。

 一方、チーズの消費量は、ナチュラルチーズが前年度に比べて4.4%増加し、プロセスチーズも増加したため、総消費量としては前年度をわずかに上回る255,889トン(2.6%)となった。

 次に消費量に占める国産割合についてみると、プロセスチーズ原料用のナチュラルチーズの国産割合は、前年度に比べ1.6ポイント低下し、22.4%となった。チーズ消費量全体に占める国産の割合は、前年度に比べ0.9ポイント低下し、14.7%となった。

図4 チーズ総消費量・国産割合
資料:農林水産省生産局畜産部牛乳乳製品課

●●●鶏卵の卸売価格 7週連続上昇●●●

 全農鶏卵センター(東京)での卸売価格は、4月の第4週目の145円/kgから7週連続で価格が上昇し、6月の第2週目には185円/kgとなり約15ヵ月ぶりの180円台となった。

 5月の平均価格(東京・M)は、171円/kgで、例年の連休明けの供給増加による価格低下が見られず、前年同月と比べると18.8%上回った。

 これは、鳥インフルエンザ発生による消費の減退から、生産者が早期とう汰、強制換羽を実施するなどの生産調整を行った結果、生産量が減少した。一方、消費は徐々に回復したことによるものと思われる。

 なお、6月下旬以降は、強制換羽後の出荷量増加から、価格は弱含みとなった。

 また、同様に小売価格(東京・L・パック)も5月は190円、6月は203円と上昇してきている。

 今後の生産量の目安となる採卵鶏のえ付け羽数は、前年同月比で6月±0%、7月▲1%、8月1%とほぼ前年並みと見通されているところである。

図5 鶏卵卸売価格(東京・全農・M)
資料:全農「畜産販売部情報」

●●●15年の国産加工卵の推定割合は総出荷量の22%●●●

 (株)全国液卵公社がまとめた15年の加工卵の流通調査によると、国内の生液卵と乾燥卵などの加工卵生産量は、26万トンとほぼ前年並みとなった。

 形態別の割合は、生液卵8割、凍結卵2割で、さらに、生液卵に占める全卵、卵白、卵黄の割合は、全卵8割、卵白1.5割、卵黄0.5割であった。

 また、公社が試算した加工卵総生産量を殻付き換算した量は、469,689トン(推算値)となり、平成15年の鶏卵出荷量2,430,355トンの19.3%(前年より0.7ポイント上回る)に当たり、この他にドレッシング類の生産に用いられた原料卵537,634トンを合わせると、出荷量の22.1%となった。

 加工用原料仕向量は年々増加しており、15年の加工卵の販売先の状況をみると製菓製パン業者51%、加工卵専門業者16%、中間業者16%、食肉加工練製品業者11%となった。平成11年、13年と比較すると製菓製パン業者が半分以上の加工卵を使用する状況は変わらないものの中間業者や食肉加工練製品業者の使用割合が増減する傾向が見られた。

図6 加工卵の販売先別販売量の割合
資料:H15(株)全国液卵公社「加工卵の生産と流通」
H11,13「加工卵の流通調査」

●●●7〜9月期配合飼料価格、引き上げ●●●

 全農は6月21日、7〜9月期の配合飼料供給価格を全国全畜種総平均トン当たり約1,800円値上げすることを公表した。この値上げは、トウモロコシや大豆油かすが前期に比べ値上がりすると見込まれていることなどによるものである。特に価格が顕著に上昇しているトウモロコシ、大豆油かすの配合割合が高い鶏・豚用飼料は、平均値上げ額を上回る改定になるとしている。

 全農の動きに追随し、専門農協系および商系もそれぞれほぼ同額の引き上げを公表している。

<最近の原料コスト動向等>

 全農では、最近の原料コストの動向について次のように見込んでいる。

1.飼料穀物

 トウモロコシのシカゴ定期は、・米国産トウモロコシの新穀作付面積が予想を下回ったこと、・国内・輸出ともに需要が堅調であることから期末在庫(8月末)が大幅に減少すると予想されることから、4月には一時340セント/ブッシェル近く(7月限)まで上昇したが、5月に入り作付けの早期完了とその後の産地の天候が順調なことから、現在は300セント/ブッシェル台を割る水準で推移している。

 今後は、需要増加により世界的に飼料穀物需給のひっ迫が予想される中、産地の天候に敏感に左右される天候相場が続くと見込まれる。

 7〜9月期に使用されるトウモロコシ価格は、上記のとおり作付完了前に高値が続いたことにより、4〜6月期に対し値上がりするものと見通される。

2.たんぱく質原料

 大豆かすのシカゴ定期は、昨年の米国産大豆生産量が天候不順により大幅に減少し期末在庫率が史上最低水準となることに加え、南米産大豆が天候不順から当初見通されたほどの豊作ではなく平年並みの生産量となったことから、世界的に大豆・大豆かすのひっ迫感が高まり、4月には一時330ドル台/ショートトン(7月限)まで上昇した。その後5月に中国の南米産大豆輸入停止により相場は下落し、直近では270ドル前後で推移している。

 7〜9月期の国内大豆かす価格は、シカゴ定期の上昇と外国為替の円安により、4〜6月期に対して値上がりすると見通される。

 輸入魚粉は平年並みの漁獲量により産地価格は落ち着いているものの、円安により輸入価格は上昇している。また国内魚粉の生産は引き続き低調であり、7〜9月期の価格は前期に対して値上がりが見通される。

3.海上運賃

 米国ガルフ・日本間のパナマックス型海上運賃は、中国を中心とする世界的なばら積貨物の荷動き活発化により上昇を続け3月から4月には70ドル/トンを超える水準で推移していたが、5月以降中国の南米産大豆の輸入停止をきっかけに下落し、50ドル/トン台まで値下がりした。

 今後は、中国の南米産大豆の輸入停止は継続しているものの、中国の粗鋼生産量増加に伴う鉄鋼原料の荷動きが依然として活発なこと、世界的な需要増加に伴い原油価格が史上最高値まで上昇し船舶用燃料価格も高騰していることにより、おおむね現行水準での相場展開が予想される。

 7〜9月期の海上運賃は4〜6月期に対し、値下がりするものと見通される。

 
<補てんの実施>

 なお、配合飼料価格安定制度による通常補てん金4,800円/トンが交付される。このため、実質的な生産者の負担増はトン当たり1,200円となる見込み。

図7 副原料の輸入価格(CIF)
資料:財務省「貿易統計」

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