トピックス

●●●国産牛肉、小売価格が全般的にさらに値上がり●●●

 平成15年12月の米国で発生したBSEに伴い、米国産牛肉の輸入一時停止が措置された。それまで米国産への依存度が高かったわが国の牛肉市場は、大きく影響を受け、品薄状態となった。このことが、国産品にも大きく影響し、枝肉卸売価格が上昇し、現在も高値安定で推移している。(51ページ 図4参照)

 スライスや切り落とし商材として多く使用されている「ばら」は、もともと米国からの輸入量の約7割(15年実績)を占めるほど米国産への依存度が高かった。この輸入停止により、その代替品として国産品の需要が強くなり、小売価格も大きく影響を受けた。16年1月の小売価格は329円/キログラムと、「かた」や「もも」のそれと比べて安かったが、同年5月には363円/キログラムとなり、「かた」を上回り、さらに11月には398円/キログラムと、「もも」を上回り、現在も高値更新が続いている。(図1)

図1 牛肉の小売価格(部位別)

 一方、「ばら」以外の部位の小売価格を見ると、輸入停止当初は、この影響を受け上昇しているものの、「ばら」のように大幅な値上がりとはならなかった。このことから、「原料高の小売安」の傾向が一段と強くなり、卸売業者にとっては厳しい経営状況が続いていた。しかし、単価の高い「サーロイン」や「肩ロース」などの小売価格に徐々に転嫁され、17年5月以降再び値上がりをみせている。これは、いわゆる「カット屋」と称される枝肉を部分肉に加工する業者が値上げに踏み切ったものとみられる。業界関係者からは「量販店としては、今年は前年対比で9割の売上げを確保できれば御の字」という声を聞かれ、卸売り、小売り部門ともに牛肉販売担当者にとっては厳しい状況に変わりないようだ。(図2)

図2 牛肉卸売価格及び小売価格の推移(前年同月比)

 

●●●17年度の肉豚出荷頭数(見込み)、ほぼ前年度並み●●●

  9月16日、農林水産省において全国肉豚生産出荷協議会が開催され、17年度の肉豚出荷頭数は、ほぼ前年度並みが見込まれると報告された。
17年度の上期(4〜9月:9月は速報値)のと畜頭数は、昨年夏の猛暑による子豚生産頭数の減少などにより7,728千頭(前年同期比3.4%減)と前年度上期をやや下回って推移したものの、下期は、大規模農家の規模拡大による出荷頭数の増加も見込まれることなどから、前年度下期並みに推移すると予測されている。

 出荷状況について主要生産県ごとにみると、北海道および岩手などの東北地方は、飼養戸数が減っているものの廃業分を大規模農家が吸収している。また、茨城、群馬、千葉などの関東地方では、家畜排せつ物法の施行で中小規模の廃業が目立ったが、豚価が堅調だったため大規模層の生産意欲が高まっているなどとして東日本全体では、今後の生産見通しとして、ほぼ前年度並みを見込んでいる。

 一方、西日本の生産状況は、高齢化などにより中小規模層が減少傾向にあるが、豚価が堅調に推移していることなどから大規模層は規模拡大傾向にあり、今後の生産見通しとしては、特に熊本、宮崎、鹿児島などの九州地方の子取り用雌豚頭数が増加していることなどから出荷頭数もわずかに増加するものと見込んでいる。

図3 主要生産県の子取り雌豚飼養頭数
(16年2月1日現在)

 

●●●17年度のブロイラー需給見通し消費、供給量ともに拡大を予測●●●

 農林水産省は、9月16日に全国ブロイラー需給調整会議を開催し、17年度のブロイラー需給見通し(正肉ベース換算)について、「需要量」157万1千トン(前年度比6.1%増)、「供給量」159万5千トン(同8.0%増)、「期末在庫量」11万1千トン(同27.6%増)とした。

 需要量のうち家計消費量は、総務省が公表する「家計調査」により国民一人当たりの鶏肉消費量から50万3千トン(同6.1%増)と推計し、加工・業務用は推定出回り量からこの家計消費量を差し引いたものから算出し106万8千トン(同6.2%増)とした。これにより消費構成割合は、従来通りおおむね加工・業務用が7割、家計消費の割合が3割となった。

 一方、供給量は国内生産については、国産志向の高まりから13年度以降増加傾向にあり、17年度の出荷計画などから推計し95万5千トン(前年度比2.1%増)、輸入品については鶏肉としてはブラジル産の輸入量増加、米国産の回復を見込んで41万1千トン(同15.8%増)としている。また、鶏肉調製品については、焼き鳥、唐揚げなどの需要が強まったことから、大幅な増加を見込んで22万9千トン(同22.5%増)としている。

 会議での主なコメントとしては生産者などから、(1)茨城県などでの一連の鳥インフルエンザの発生に際し、行政側が報道など通じて、再三にわたり「鶏卵、鶏肉の安全性について」情報提供を行ったおかげで、量販店、消費者が冷静な対応をとり消費の減退はみられなかったこと、(2)消費傾向としては(初めての現象として、)もも肉の売れ行きが停滞していること、(3)輸入品が大幅に減少した影響で、国産むね肉が加工仕向けとして取り扱われるようになったが、その流通が安定してきたこと─などが述べられた。

表 正肉ベース換算 平成17年度需給見通し


●●●8月の北海道の検定乳量、前年同月を上回る●●●

家畜改良事業団が公表した、「月別検定成績(速報)」によると、検定牛1頭1日当たりの乳量は、8月の北海道は28.2キログラムとなり、前年同月を0.4%上回った。また、9月の都府県は26.9キログラムとなり、前年同月を0.7%上回った。(図4)

 都府県は、16年10月以降、前年同月を下回っていたが、17年6月に前年同月と同水準となり、それ以降3カ月連続で上回り、回復傾向にある。

 一方、北海道は、昨夏は平年より暑かったことなどが影響し、16年7月は前年同月と同水準であったが、16年8月以降前年同月を下回って推移していた。1年ぶりに前年同月を上回り、回復の兆しが見えてきたようだ。

図4 1日1頭当たり平均泌乳量

 

●●●鶏卵類の輸入量が増加●●●

 鶏卵の価格は、通常、夏場の低需要期に停滞し、需要の高まる冬に高水準になる季節変動が明確に現れるが、最近の卵価は、15年1月に鳥インフルエンザが国内で発生し、一時的に価格が落ち込んだものの、16年5月以降は、生産抑制などにより前年同月を上回る月が続いている。

 高水準な卵価が維持された結果、国内の生産意欲は増大するが、一方では、お菓子、パンなどの加工材料用としての国産鶏卵の手当が経費の面から輸入品へ代替している。8月の鳥卵類(卵黄粉、全卵粉、液卵など)や殻付き鶏卵などの鶏卵類の輸入量は1万6千トン(前年同月比45.2%増)となり16年5月以降15カ月連続で前年同月を上回って推移している。(図5)

図5 鶏卵類の輸入量の推移

 

●●●10〜12月期配合飼料価格、引き下げ●●●

 全農は9月20日、10〜12月期の配合飼料供給価格を、以下の飼料原料・外国為替情勢などを踏まえ、7〜9月期に対し、全国全畜種総平均トン当たり約800円値下げすることを公表した。なお、穀物・大豆かすなどの値下がりが大きいことから、原料配合割合によって畜種別の改定額は大きく異なるとしている。

<最近の原料コスト動向など>

1.飼料穀物

 トウモロコシのシカゴ定期は、米国東部産地での降雨不足による作柄悪化懸念から、7月には期近限月で260セント/ブッシュエルまで上昇した。その後、断続的な降雨が見られ生産量の大幅減少に対する懸念が薄らいだこと、8月の米国農務省需給見通しで国内飼料需要が下方修正されたことなどから下落し、現在は220セント(12月限)前後の水準となっている。今後は、収穫期の天候と需要動向が相場変動要因となるが、現在のシカゴ定期はここ数年の中では安値圏にあることから、底固く推移すると予想される。

2.たんぱく質原料
 大豆かすのシカゴ定期は、米国産地での降雨不足による新穀大豆の作柄悪化懸念から、7月には220ドル/ショートトン(9月限)台まで上昇した。その後8月に断続的な降雨が見られ減産懸念が後退したことから相場は下落し、現在は180ドル/ショートトン台で推移している。

 10〜12月期の大豆かす価格は、7〜9月期に対して値下がりすると予想される。
 魚粉の国内生産は引き続き低調であり、また、輸入魚粉価格の高騰から国産魚粉への引き合いが強く、需給はひっ迫している、燃料費の高騰もあり、10〜12月期の価格は7〜9月期に対して値上がりすると予想される。

3.外国為替
 外国為替は、6月以降日米の景況感・金利格差、日本政治の不透明性を材料にドルが買われ、7月下旬は一時113円台となった。その後(1)中国政府が人民元切り上げを実施したこと、(2)政府月例経済報告や経済指標により日本の景況感の改善が示されたことなどによりドルは売られ、現在は110円前後で推移している。今後は日米の景況感や金利動向が引き続き注目されるが、米国は好調な景気動向を背景に今度とも利上げ継続する可能性が強く、ドル強基調が見込まれる。

図6 副原料の輸入価格(CIF)

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