●●●牛肉の推定出回り量、4カ月連続で前年同月を下回る●●●
平成18年5月の牛肉の推定出回り量は、輸入品が33,506トン(前年同月比17.9%減)、国産品が27,003トン(同1.6%減)となり、全体でも60,509トン(同11.3%減)と前年同月を4カ月連続で下回った。これは、輸入品、国産品ともに相場高が続いていることや、5月の大型連休の需要が、天候の影響から伸び悩んだことなどによるものと思われる。
この結果、推定期末在庫量は、国産品が9,991トン(同4.8%増)と前年同月を上回ったが、輸入品は、58,326トン(同8.7%減)となり、全体では、68,317トン(同6.9%減)と前年同月を下回った。(図1)
これは、5月の牛肉輸入量が34,287トン(同28.8%減)と大幅に減少する中で、冷凍品の輸入価格(CIF)は前年同月を3.7%下回ったことから、輸入品の在庫調整の動きがうかがえる。
また、未通関在庫を見ると、4,186トンとなり、前月よりやや増加したものの、この中には、1月20日までに輸入されているが、輸入手続きが終了していない米国産牛肉が約2割含まれており、実質の未通関在庫としては決して多い数量ではないと見込まれる。これから需要期に入る中、6月以降の輸入動向が注目される。
図1 牛肉の需給の推移
資料:農畜産業振興機構調べ
●●●ハム・ソーセージ製造業者、相次いで値上げを発表●●●
平成18年5月の豚肉卸売価格(東京・省令)は、1キログラム当たり480円(前年同月比9.3%減)と前年同月を下回っているものの、安定上位価格と同額になり、夏前の相場としては比較的高い水準で推移している。
これは、16年末以降、と畜頭数が前年同月を下回る月が続いていることが、その要因として挙げられる。
一方、輸入豚肉の仲間相場の動きを見ると、16年度以降にハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工用原料となるうで、ももなどの下級部位価格が高水準にある。(図2)
また、海外の大きな流れとして、鳥インフルエンザ発生などによる代替需要から豚肉の需要が高まっており、豚肉などの原料価格が高止まりしている。これに加えて、原油価格も高騰していることから、国内のハム・ソーセージ製造業者は相次いで加工製品の値上げを発表した。
図2 輸入豚肉仲間相場(フローズン)の推移
資料:農畜産業振興機構調べ
●●●鶏肉在庫量、過去最高の15万トン台に●●●
平成18年5月末の推定期末在庫は、157,183トン(同61.4%増)となり最高値を更新した。内訳をみると国産品28,940トン(前年同月比52.2%増)、輸入品128,243トン(同63.6%増)となった。国産品は12カ月連続、輸入品は16カ月連続で前年同月を上回って推移している。
この結果、当該月の推定在庫数量が推定出回り量を上回る月が18年3月以来3カ月連続している。
これは、鳥インフルエンザが世界的に拡大し、貿易の不透明感から、輸入業者による需要量以上の輸入が行われたためと推測される。
さらに、中国、タイからのやきとり、唐揚げなどの鶏肉調製品の輸入恒常化による鶏肉の加工仕向け需要の減少や鶏肉の輸入先がブラジルに限定されていることも影響しているものと考えられる。
また、これに加えて、国産鶏肉が加工用に仕向けられることを見込んだ生産者の増羽意欲もあり、国産品の在庫量も徐々に増加している。
図3 鶏肉推定在庫量の種類別推移
資料:農畜産業振興機構調べ
●●●全国平均乳量(ホルスタイン種)、14年ぶりに前年を下回る●●●
(社)家畜改良事業団が、「乳用牛群能力検定成績速報(平成17年度)」を公表した。これによると、17年の検定に参加しているホルスタイン種の平均乳量(305日、2回搾乳、立会検定)は、北海道が、前年より112キログラム減の9,089キログラム、都府県が、同8キログラム減の9,179キログラムとなり、全国では、75キログラム減の9,121キログラムとなった。乳量が前年を下回ったのは、平成3年以来14年ぶりとなる。(図4)減少の要因として、北海道などで行われた生乳計画生産の影響が挙げられる。
また、乳成分率(全国平均)を見ると、乳脂率が前年より0.01%減の3.95%、無脂固形分率が前年同の8.75%となった。北海道と都府県で比較すると乳脂率、無脂固形分率とも北海道が高くなっている。(表1)
なお、17年度の乳用牛群検定の実施状況は、検定農家比率が42.5%、検定牛比率で54.5%と、いずれも前年度の比率を上回った。
図4 ホルスタイン種1頭当たり乳量
資料:(社)家畜改良事業団「乳用牛群能力検定成績速報」
注:ホルスタイン種、305日検定2回搾乳
表1 平均乳成分率
資料:家畜改良事業団「乳用牛群検定成績速報」
注:立会検定、ホルスタイン種
●●●茨城県鳥インフルエンザ、発生からほぼ1年で終息宣言●●●
平成17年6月26日、茨城県常総市(旧水海道市)において弱毒タイプ(H5N2亜型)の高病原性鳥インフルエンザウイルスの発生が確認された。その後、茨城県では40農場から抗体もしくはウイルスが確認された。
発生が確認された農場では、病原体のまん延を防止するために家畜伝染病予防法および特定家畜伝染病防疫指針に基づき、飼養鶏の殺処分、周辺地域を対象とした移動制限などを実施した。
その結果、約568万羽を処分した。
これまでに「鶏卵、鶏肉を食べることにより、鳥インフルエンザウイルスが人に感染することは世界的にも報告されていない。」という繰り返しの報道、通知などの甲斐があり、顕著な鶏肉、鶏卵の消費減退は見られなかった。
そして、全農場の清浄化が確認され、発生からおよそ1年後の18年6月23日、茨城県知事による終息宣言が発表された。
しかし、鶏卵生産量全国一を誇った茨城県の採卵鶏飼養羽数は16年の1千2百万羽から殺処分などにより18年には850万羽(29.4%減:それぞれ2月1日現在)にまで減少した。
今後、茨城県では異常家きんの早期発見やモニタリング検査、サーベイランス検査の拡充および野鳥の調査など鳥インフルエンザの監視体制の強化を図るとともに県産の鶏肉、鶏卵の消費拡大を講じていくとしている。
今般の発生事例では、未承認ワクチンなどによる人為的な汚染の可能性も否定できないこと、疫学的調査実施時の不適切な採材など、家畜衛生の監視体制のあり方にも一石を投じた。
●●●平成18年7〜9月期配合飼料価格、約500円値下げ●●●
全農は6月20日、平成18年7〜9月期の配合飼料供給価格を、シカゴ定期は堅調なものの、外国為替の円高と海上運賃の値下げなどから、18年4〜6月期に対し、全国全畜種総平均トン当たり約500円値下げすることを公表した。
<最近の原料コスト動向など>
1.飼料穀物
トウモロコシのシカゴ定期は、5月の米国農務省の新穀需給見通しで(1)生産量見通しが市場予想を下回ったこと、(2)エタノール需要が大きく伸びていること、(3)輸出需要が旺盛であることなどから、期末在庫が大幅に減少する見通しとなったため上昇に転じ、現在は250セント台後半で推移している。
今後は、天候による相場展開となるが、(1)エタノール用需要が依然高いこと、(2)輸出需要が増加する見通しにあることなどから、堅調に推移するものと見込まれる。
7〜9月期の国内トウモロコシ価格はシカゴ定期が上昇するものの、海上運賃の値下がりと円高の影響により、4〜6月期に比べ値下がりすると見込まれる。
2.たんぱく質原料
大豆かすのシカゴ定期は、米国産大豆の期末在庫予想が過去最大となったことから軟調に推移したが、天候の懸念から現在180ドル/ショートトン台前半で推移している。
7〜9月期の国内大豆かす価格は、搾油量の減少により大豆かすの需給にひっ迫感があるものの、円高の影響により、4〜6月期に比べ値下がりすると見込まれる。
魚粉価格は、(1)輸入魚粉が主産地ペルーの漁獲高の減少と、中国の旺盛な需要から急騰していること、(2)国内魚粉も国内漁獲高の減少と加工処理の中国などへのシフトにより生産量が大幅に減少し高騰していることなどから、7〜9月期の価格は、4〜6月期に比べ、大幅に上昇すると見込まれる。
3.海上運賃
米国ガルフ・日本間のパナマックス型海上運賃は、3月以降中国の鉄鋼原料の荷動きが鈍くなったことから軟調に推移し、現在は35ドル/トン台で推移している。
今後は、(1)中国、インドの粗鋼生産量が増加し船腹需要が堅調に推移すると見られること、(2)火力発電用石炭が夏場の需要期を迎えて荷動きが活発化すると見込まれることなどから、値下げ基調に底入れ感があるものの、7〜9月期海上運賃は前期に比べ大幅に上昇すると見込まれる。
4.外国為替
外国為替、(1)4月のG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)による世界的な不均衡是正声明、(2)米国政策金利引き上げの停止観測の強まりなどから円高ドル安となり、一時109円台まで円高が進んだが、急激な円高への警戒感や日米金利差が早急に縮小に向かうとの観測が後退したことから、現在は112円台の展開となっている。
今後は、米国の景気減速感から米国政策金利引き上げの停止観測などにより、ドル安基調が見込まれるものの、7〜9月期の外国為替は4〜6月期に比べ、円高が見込まれる。
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