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●●●肉専用子牛、肥育牛の所得、前年を大幅に上回る―平成18年生産費公表●●●

 農林水産省は平成18年11月8日、子牛生産費、去勢若齢肥育牛生産費をそれぞれ公表した。

 それによると、子牛生産費は前年に比べて1頭当たり0.6%、肥育牛生産費は1頭当たり2.6%それぞれ増加した。また粗収益も、子牛(繁殖めす牛1頭当たり)は前年比4.7%、肥育牛は5.3%増加した。

1.子牛(肉専用種)
 生産費は、種付料の増加(前年比5.7%増)や、原油価格の高騰による光熱水料および動力費が11.2%増加したものの、飼養規模の拡大による労働費の減少(同2.4%減)、繁殖めす牛売却価格の上昇により繁殖めす牛償却費が減少(同6.1%減)したことなどにより、全体では0.6%の微増となった。

 繁殖めす牛1頭当たりの粗収益は、和子牛市場価格が堅調に推移したことにより50万2,488円と前年に比べ4.7%増加し、また、1頭当たりの所得も同9.4%増の24万1,187円と、前年を20,672円上回った。

2.肥育牛(去勢若齢肥育牛)
 1頭当たりの全算入生産費は、もと牛導入時期(主に平成15年8月〜16年7月)におけるもと牛価格が上昇し、もと畜費が5.9%増加したことなどにより、前年に比べて2.6%増加し830,916円となった。

 1頭当たりの粗収益は、牛枝肉価格が堅調に推移したことから前年に比べ5.3%増加の932,316円となった。1頭当たりの所得は、15年以降黒字で推移しているが、18年は前年比14.6%増の170,001円と前年をなり大きく上回った。

表1 畜産物生産費及び収益性
資料:農林水産省「農業経営統計調査」

 
●●●肥育豚1頭当たりの粗収益は2年連続増加●●●

 農林水産省は平成18年11月8日に、平成18年の肥育豚生産費(17年4月から18年3月までの1年間:集計戸数324戸)を公表した。

  それによると、肥育豚1頭当たり生産費(資本利子・地代全額算入生産費)は29,676円で、前年に比べ0.9%減少した。

  これは、原油価格の高騰により光熱動力費が増加したものの、配合飼料価格が低下して飼料費が減少したことや家族労働時間が減少したことから労働費が減少したことなどによるものと見られている。

  生産費の内訳をみると飼料費が18,582円(前年比2.9%減)、労働費が4,490円(同2.0%減)、それぞれ費用合計の63.0%、15.2%を占め、17年の64.1%、15.4%と比べるとそれぞれ減少した。1戸当たり飼養月平均頭数678.4頭(同0.3%減)となった。

  10年前と5年前と比較すると8年は生産費28,912円のうち飼料費18,170円、労働費5,132円で費用合計に占める割合はそれぞれ61.6%、17.4%であり、平成13年では生産費27,483円、うち飼料費16,476円、労働費4,920円で費用合計に占める割合はそれぞれ55.9%、16.7%であった。また、8年の1戸当たり飼養月平均頭数は、521.1頭、13年は599.9頭であり、飼料費のシェアは変動があるものの、1戸当たりの飼養月平均頭数が増加するに従って労働費は確実に減少していた。(図1)

  さらに、1頭当たりの粗収益は、32,266円(前年比3.4%増)となり、前年より1,068円増加し、2年連続で前年を上回った。これは枝肉価格が堅調に推移したことによる増加と見られ、1頭当たりの所得は、6,304円と前年より24.0%(1,219円)増加した。

図1 肥育豚1頭あたりの生産費内訳の推移

資料:農業経営統計調査「肥育豚生産費」

 
●●●わが国の豚肉輸出量(1〜10月期)、前年同期比2.5倍増●●●

 世界的な日本食ブームの広がりやアジア諸国での経済発展に伴う高所得者層の増加などにより、高品質でかつ安全なわが国の農畜産物の輸出拡大の可能性が増してきている。このような中で、農林水産省は平成17年4月「農林水産物等輸出促進全国協議会」を立ち上げた。

 近年の日本の豚肉輸出状況を見てみると、12年に韓国、13年に世界的な豚肉輸出圏であったEUでそれぞれ口蹄疫発生が発生したことなどから、一時的に国内からも韓国、アイルランド、フランスなどへ豚肉を輸出した実績はあるものの、14年以降はごくわずかの量が、輸出されるのみであった。(図2)

 しかし、その後17年の輸出促進全国協議会の成立を機に、香港、マレーシアなどへの豚肉輸出量が増加し、その後も輸出先、数量ともに増加し、平成18年1月〜10月までの輸出量は51,087トン(前年同期比158%増)と急増している。

 輸出するためには、各国の諸規制を順守する必要があるが、これらの具体的な書類申請などの手続きや検疫証明書の添付など様々な準備が求められることになる。

 輸出に当たり多くの支援体制が必要となっているが、これらの総合支援の確立がさらなる輸出促進につながるものと見込まれている。これらの努力が、関係業界に好影響を与え、活力をもたらすものと期待されるところである。

図2 国別豚肉輸出量の推移

 
●●●韓国における高病原性鳥インフルエンザの発生状況●●●

 11月23日、韓国全羅北道(韓国南部)の肉用鶏農場において高病原性鳥インフルエンザ(H5型)の発生が確認された。これを受けて、農林水産省は韓国からの家きんおよび家きん肉等の輸入停止措置を行うとともに発生地が地理的かつ物流などの面から勘案して日本に非常に近いことから、国内防疫のため、国内の農場における飼養衛生管理の徹底や的確な病性鑑定の実施などを呼びかけた。(「韓国における高病原性鳥インフルエンザの発生に伴う国内防疫の徹底について」平成18年11月24日付け18消安第9317号農林水産省消費・安全局長通知)

 さらに、本病のわが国への侵入防止に万全を期すため、同省は都道府県などと連携し、(1)韓国からの旅客全員に対する靴底消毒および車輌消毒の徹底、(2)鶏舎への野鳥などの侵入防止、農場出入り口での消毒の徹底、異常鶏発見時の早期通報、(3)情報収集と情報の共有─などについて改めて取り組むこととしている。

 なお、韓国農林部によると全羅北道における高病原性鳥インフルエンザの発生は、23日に確認された初発農場につづき28日に2キロメートル離れた種鶏場でも確認され、さらに12月10日、18キロメートル離れたウズラ飼育場においても3例目が確認されている。



 
●●●飼養頭数は乳用牛は減少、肉用牛は増加●●●

 農林水産省が公表した「乳用牛及び肉用牛の飼養動向(平成18年8月1日現在)」によると、乳用牛の飼養頭数は、160万9千頭(前年同月比2.0%減)となり、前年同月と比べて3万2千頭減少したものの、肉用牛の飼養頭数は、278万3千頭(同1.6%増)となり、前年同月から4万3千頭増加した。

1.乳用牛
 乳用牛を区分別に見ると、経産牛が104万7千頭(同1.0%減)、未経産牛が56万1,900頭(同3.5%減)とともに前年同月と比べて減少した。(図3)

 飼養頭数全体の半数を占める北海道は、経産牛が49万6,200頭(同0.4%減)、未経産牛が34万9,600頭(同4.4%減)となり全体では84万5,800頭と前年同月を2.1%下回った。また、都府県は、経産牛が56万500頭(同1.6%)、未経産牛が21万2,300頭(同2.0%減)となり、全体では76万2,900頭と前年同月を1.8%下回った。(図4)

 この減少の要因は、生乳需給の緩和による減産型計画生産の強化や高齢化などによる飼養農家の休廃業があったことなどが挙げられる。

 なお、分娩頭数は前年同期とほぼ同水準となった。

図3 乳用牛の飼養頭数の推移
資料:農業水産省「乳用牛及び肉用牛の飼養動向(平成18年8月1日現在)」
注:データは全て8月1日現在


2.肉用牛
 肉用種は、めすは前年同月比2.2%増、おすも1.2%増とともに増加し、全体では173万頭と、前年同月比1.8%増となった。このうち、生産基盤である子取り用めす牛の飼養頭数は62万千頭(同1.5%増)となり、15年8月以来の増加となった。

 乳用種は、交雑種が前年同月を2.6%上回り、ホルスタイン種他が前年同月とほぼ同水準となった結果、105万3千頭(同1.2%増)となり前年同月から1万2千頭の増加となった。(図5)

 この増加の要因は、高齢化などによる飼養農家の休廃業があったものの、枝肉価格が高値で推移していることから、規模拡大を図る農家がみられことなどが挙げられる。


図5 肉用牛の飼養頭数
資料:農業水産省「乳用牛及び肉用牛の飼養動向(平成18年8月 1日現在)」
注:データは全て8月1日現在

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