トピックス

●●●18年10〜12月の全国の乳用牛への黒毛和種交配状況は、30%超の高水準に●●●

 (社)家畜改良事業団と(社)日本家畜人工授精師協会は平成19年3月20日、18年10〜12月の乳用牛への黒毛和種の交配状況(速報)を公表した。それによると、延べ人工授精頭数のうち黒毛和種授精頭数が占める比率は、全国平均で32.8%となり、前期(7〜9月)の34.5%を1.7ポイント下回ったものの、4期連続で30%を超える結果となった。黒毛和種交配率は14〜17年の間、おおむね20%台後半で推移していた。

 10〜12月の全国の黒毛和種交配率の下落は、全国人工授精頭数の約75%を占める北海道で、前期を3.2ポイント下回る18.4%となったことが影響したものとみられる。

 黒毛和種交配率が比較的高い水準で推移していることについては、生乳減産計画下で乳用牛の飼養頭数の増頭が制限される状況にあることに加え、好調な枝肉価格を背景に、18年上半期に交雑種初生牛の取引価格が高値で推移したことなどが要因の一部と考えられる。図1を見ると、交雑種初生牛の取引価格は、16年までは、おおむね11万円台で推移していたが、その後上昇傾向で推移、18年上半期は前年同月を30%程度上回る水準で上昇し、18年5月には17万7千円(25.4%)まで値上がりしていた。しかし、18年下半期には、下落傾向に転じ、2月は13万3千円(▲19.8%)となっているため、今後の動向が注目される。

図1 交雑種初生牛価格と乳用牛への黒毛和種の交配状況の推移

資料:譖家畜改良事業団、譖日本家畜人工授精師協会機構調べ


●●●冷凍輸入品のロース、ばら卸売価格が高水準に推移●●●

 平成18年(1−12月)の豚肉輸入量は、冷蔵品22万トン(10.4%)、冷凍品50万トン(▲25.2%)で、合計72万トン(▲17.0%)となり、冷凍品が前年を大幅に下回った。特に冷凍品は、従来、3割のトップシェアを占めていたデンマークからの輸入量が、前年を27%下回る17万トンにとどまったのをはじめ、米国、カナダもそれぞれ前年を31%、36%下回った(図2)。これは、鳥インフルエンザ発生による欧州の鶏肉代替需要やロシア、中国などの輸入量増加、また、これによる現地価格の上昇など海外の豚肉貿易の変化が、わが国の輸入量減少の要因の一つとして考えられる。

 豚肉の推定期末在庫量は、その9割が冷凍輸入品で占められているため、冷凍品輸入量の減少は、国内の在庫量にも影響を与える。2月末現在の冷凍輸入品の推定在庫量は、163,651トン(▲9.1%)となっており、冷凍輸入品の1カ月当たりの出回り量のベースを6万トン程度とした場合、約3カ月分程度は在庫となっているものの、平成18年5月以降取り崩しが続いている。

 一方で、冷凍輸入品の仲間相場の推移をみると、ロイン系やばらなどが18年の後半から高止まりし、加工原料として需要の高いうでなどの下級部位は前年並みに推移していることなどから、実需者などには「冷凍品在庫の部位に偏りがあるのではないか」と推測する者もいる。

図2 冷凍品の国別輸入量の推移(1−12月)

資料:財務省「貿易統計」


図3 輸入豚肉(フローズン)の仲間相場
(H17平均=100)


資料:機構調べ


●●●食肉の表示に関するガイドラインで「黒豚」表示には原産地を併記●●●

 「黒豚」表示については、平成18年8月以降、農林水産省の「食肉の表示に関する検討会」において6回にわたり検討されてきたところであり、平成19年3月、農林水産省生産局長通知としてガイドラインが出された。

 これによると「黒豚」表示については、(1)「黒豚」は純粋バークシャー種の豚肉に限る、(2)外国産と国産品の誤認防止の観点からJAS法に基づく「名称」表示に限らず、「黒豚」と表示する場合には必ず原産地表示を併記する、(3)併記される原産地表示は、消費者が容易にその記載を認識できるよう適切な大きさにする−との表示方法が示された。

 なお、ガイドラインの位置付けは、特色ある食肉の表示をする上での指針となるべきものであり、事業者などの自主的な取り組みを促すものである。


●●●わが国、豚コレラ清浄国となる●●●

 豚コレラは、豚コレラウイルスにより豚およびイノシシに季節に関係なくすべての発育段階に発症する急性伝染病である。一般的に死亡率が高く、伝播力が強いことから、発生した場合には莫大な経済的被害が生じるほか、豚、畜産物などに移動制限が課されるため、流通にも大きな影響が及ぶこととなる。わが国では昭和7年の発生頭数をピークに全国にまん延していたが、ワクチンの実用化などにより、発生が激減し、平成4年以降発生は、確認されていなかった。このため、農林水産省では、本病の完全な清浄化を達成することを目的に、8年度からワクチンを使用しない防疫体制を確立し、段階的にウイルスの存在を否定していった。

 12年からは、原則として全国的にワクチン接種を中止し、その後、発生を見ず5年が経過したことから、18年3月31日をもって予防的使用のワクチン接種は事実上禁止され、今般、OIEの規則に従い、わが国は4月1日に豚コレラ清浄国となった。


●●●平成19年度のブロイラー需給見通し、国産志向強まる●●●

 農林水産省生産局畜産部食肉鶏卵課は3月29日、全国ブロイラー需給調整会議を開催し、19年度の需給見通しなどを公表した。これによると、19年度見通し(試算)の「需要量」は、家計消費量が国産志向などを背景に前年度を0.5%上回る599千トン、加工業務用が0.5%上回る1,113千トン、合計で前年度を0.5%上回る1,712トンと見込んでいる。

 これは、前年度の見通しに比べ、輸入量の減少による加工業務用需要量の伸びの鈍化が反映されている。

 一方、素ひな出荷羽数より推計した生産量(骨付きベース)は、生産意欲の増大から前年度を1.4%上回る1,359千トンとし、輸入量は前年度と同程度を見込んで「供給量」全体では、前年度を1.1%上回る1,702千トンと試算した。(表1)

 また、参考として、鶏肉調製品を含めた正肉換算ベースの見通しとして、(表2)が示された。それによると、前年度に対し「需要量」は0.4%、「供給量」は1.2%上回るものと推計しており、大幅な伸びではないにしろ、今年度も24万トンベースの鶏肉調製品が輸入されるものと予想している。

 18年度は国内で高病原性鳥インフルエンザの発生をみたものの、適切な対応が功を奏し消費に大きな影響はみられず、逆に国産鶏肉に対する信頼感が生まれているものと思われ、更なる国産志向の強まりから、生産者側にも増産意欲がうかがえる。

表1 平成19年度需給見通し


表2 (参考)正肉ベース換算平成19年需給見通し


●●●はっ酵乳生産量は、10カ月連続で前年同月を上回る●●●

 牛乳乳製品統計によると、平成19年2月の生乳生産量は624,474トン(▲2.7%)となり、そのうち飲用牛乳等の生産量は311,607トン(▲2.4%)で、30カ月連続で前年同月を下回った。牛乳消費の低迷が続く中、牛乳と加工乳・成分調整牛乳の生産量が前年同月を下回って推移する一方で、乳飲料とはっ酵乳の生産量が前年を上回って推移している(図4)。

 乳飲料、はっ酵乳の生産量は、暖冬の影響もあり、それぞれ10カ月連続で前年同月を上回る88,846キロリットル(6.2%)、65,910キロリットル(5.2%)となった。18年度の累計(18年4月〜19年2月)を見ると、乳飲料が前年同期比4.1%増の1,159,739キロリットル、はっ酵乳が同5.9%増の775,535キロリットルとなっている。

 はっ酵乳について、POS情報によるレジ通過客千人当たりの購買数量を見ると、昨年4月以降ほとんどの月で前年同月を上回っており、18年度平均では、前年同期を5.4%上回っている。主要タイプ別に見ると、フルーツタイプの同購買数量が、18年度平均で同12.8%増加しており、はっ酵乳全体の購買数量を押し上げていることがうかがえる。

 乳飲料については、同購買数量は年度平均で前年同期を1.1%下回るが、タイプ別では、好調なチルドカップ乳飲料を含むコーヒータイプで同2.2%上回っている。(図5、巻末資料参照)

図4 種類別牛乳等生産量(対前年同月増減率)

資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」


図5 はっ酵乳・乳飲料
POSレジ通過客千人当たりの購買数量


資料:日経新聞社のPOS情報サービス「NEEDS−SCAN」より作成


●●●平成19年度鶏卵生産指針、2〜4%の減産を●●●

 農林水産省において「全国鶏卵需給連絡会議」が平成19年3月29日に開催され、平成19年度の鶏卵生産指針素案が示された。

 指針素案の中では、18年12月現在の生産意向調査として、調査先958件(うち5万羽以上656件)に対する今後1〜2年の生産意向が公表された。調査結果からは、現状維持55%、増産8%、減産3%、未定34%の意向が得られ、増産、減産の意向を示した生産者の飼養規模と増(減)産程度から推計した総飼養羽数は、4.1%増となり回答者の増産意欲がうかがわれた。

 また、近年の家計消費量などから、今後の消費を横ばいないし増加傾向で推移すると見込んだ。
 これらを踏まえて、価格安定および需給に見合った鶏卵を生産するには、18年度の水準よりも2〜4%程度の減産が必要との指針が示された。

 なお、生産意向調査は、宮崎、岡山県での鳥インフルエンザ発生前に実施されたものであり、その後、トウモロコシ相場高騰に伴う配合飼料価格の値上がりなど鶏卵を取り巻く状況は加味されていない。


●●●平成18年 卵用鶏初生ひなの輸入状況●●●

 動物検疫所から公表された18年(1〜12月)の初生ひなの輸入羽数は、卵用鶏30万羽、肉用鶏41万羽となり前年に比べそれぞれ57%、67%と大きく下回った。

 卵用種の主な輸入元は、ドイツが11万羽:シェア38%(内訳:原種鶏(種鶏を生産する親鳥)、種鶏(コマーシャル鶏を生産する親鳥)、採卵鶏)とトップで次いでカナダ8万羽:同26%(種鶏、採卵鶏)、アメリカ5万羽:同18%(原種鶏、種鶏)となった。(図6)

 種類別では、原種鶏の合計は、21,159羽(▲35.4%)、種鶏は274,254羽(▲58.8%)、採卵鶏3,385羽(▲29.1%)となった。

 18年3月にはオランダで、また、18年8月に一時輸入停止が解除されたイギリスでは19年2月に再び輸入停止措置がなされるなど、鳥インフルエンザは依然として海外でまん延しており、初生ひなの輸入先にも大きな影響を与えている。

図6 平成18年初生ひな(卵用鶏)国別輸入状況


資料:動物検疫所公表統計


●●●トウモロコシ輸入価格(CIF)が高騰、平成19年4〜6月期配合飼料価格は約3,200円値上げ●●●

 トウモロコシの輸入価格(CIF価格)が高騰している。貿易統計によると、平成19年2月のトウモロコシ輸入価格は、前年同月を49.1%上回るトン当たり25,316円となった。輸入価格高騰の要因となっているトウモロコシのシカゴ相場を見ると、バイオエタノール需要を背景としたトウモロコシ需要の増大に加え、豪州の干ばつによる世界的な飼料穀物供給減少への懸念から、昨年夏以降上昇し、2月の先物・期近価格はブッシェル当たり4ドル25セント(87.2%)、3月は同3ドル75セント(67.4%)となった。(図7)

 配合飼料の主要な原料であるトウモロコシの価格高騰を受け、全農が3月19日に公表した平成19年4〜6月の配合飼料供給価格は、前期に対して全国全畜種総平均トン当たり3,200円の値上げがなされることとなった。前期の5,500円の大幅な値上げに続き、3期連続の値上げとなった。全農は、大幅な値上げとなった今回の価格決定の背景について、以下の通り見解を示した。
(1)トウモロコシのシカゴ定期が、アメリカのエネルギー政策を背景に、トウモロコシのエタノール需要がおう盛なことから、引き続き上昇することが見込まれる。
(2)大豆作付面積の一部がトウモロコシに転換し、生産量が減少するとの懸念から、大豆についてもシカゴ定期の上昇が見込まれる。
(3)海上運賃は、中国での粗鋼生産が続伸する見通しであることや南米産穀物への船腹需要の増加などから、強含みで推移する。

 このように配合飼料の原料コスト上昇が懸念される一方、農林水産省は、自給飼料増産やエコフィード利用の促進を柱とする飼料自給率の向上に向けた取り組みを推進している。2月に農林水産省が開催した全国飼料増産行動会議においては、自給粗飼料増産運動として、20年度における作付面積を稲発酵粗飼料(WCS)7,500ヘクタール、トウモロコシ85,000ヘクタールに拡大することや、国産稲わらの自給率100%を達成することなどが目標として設定された。また、エコフィードについては、生産者の利用体制を確立するためのエコフィード認証制度の創設に向けた取り組みの推進、消費者などに向けエコフィード利用畜産物に関する一層の普及・広報を目的とした情報の発信、エコフィード推進を技術面で支援するための大学・試験研究機関などとの連携の強化などが行動計画に盛り込まれている。

図7 トウモロコシシカゴ相場とCIF価格の推移

資料:財務省「貿易統計」、日本経済新聞


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