需給動向 海外

◆米 国◆

好調が続く米国の乳製品輸出


◇絵でみる需給動向◇


チーズが生乳の最大の仕向け先

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)は4月25日、「Dairy Products 2007 Summary」を公表し、この中で、2007年に生産された8,419万トンの生乳の最終製品別使用量を乳成分別(乳脂肪と無脂固形)に示している(表1)。

 これによると、国産生乳由来の乳脂肪供給量310万トンのうち、全体の約4割にあたる124万トンがチーズの生産に使用されており、バター向けの56万トン、飲用牛乳等向けの47万トンがこれに続いている。これに対し、無脂固形供給量738万トンについては、飲用牛乳等に全体の約3割の223万トンが使用され、次いでホエイの106万トン、チーズの95万トン、脱脂粉乳の57万トンの順に多くなっている。

 このことから、米国産生乳の最大の仕向先はチーズであること、低脂肪乳が消費の主流であるため飲用牛乳等に向けられる乳脂肪の割合が低いこと、無脂固形のかなりの割合が種々のホエイ調製品に使用されていることなどの特徴がわかる。

表1 米国における生乳の最終製品別使用量(2007年)


主要乳製品の輸出量は順調に拡大

 表2は2007年の主要乳製品の生産量と貿易量を比較した表である。脱脂粉乳を除き、主要乳製品の生産量は前年を上回り、輸出量も大きく増加している。これに対し、輸入量は脱脂粉乳と乳糖を除いて前年を下回っている。

表2 主要乳製品の生産量と貿易量(2007年)

 脱脂粉乳については、生産量がほぼ横ばいの一方で輸出量が10.0%減少し、輸出比率(生産に占める輸出の割合)は38%に低下した。これに対し、ホエイについては生産量がほぼ横ばいとなる反面、輸出量が26.5%増加して輸出比率は56%に上昇している。乳糖もホエイと同様の傾向を示しており、生産量が2.3%増にとどまる一方で、輸出量は41.0%増加して輸出比率が98%に上昇している。加工原料乳価が上昇する中で、ホエイや乳糖の輸出が増加しているのは興味深い。

 これに対し、チーズやバターは生産量全体に占める輸出比率が低く、かつ、近年は輸入量が輸出量を上回る構造が続いてきた。しかし、2007年はともに輸出量が大きく増加し、バターについては1997年以来10年ぶりに輸出量が輸入量を上回った。また、近年輸出がほとんどなかったオランダ向けやベルギー向けに、それぞれ約8,100トン、3,400トンのバターが輸出されたことも注目される。


乳製品の貿易収支は黒字に転換

 乳製品輸出量の順調な拡大に加え、国際的な乳製品価格の上昇により、2007年の米国の乳製品輸出額は前年から6割以上増加し、総額でほぼ30億ドル(3,210億円:1ドル=107円)に達した。図1は米国の乳製品の輸出金額と主要乳製品別の品目構成を示したものである。長く10億ドル(1,070億円)前後で推移していた乳製品の輸出額は、2004年前後から脱脂粉乳やホエイを中心に急速に増加しているが、これはメキシコや東南アジア向けの輸出が拡大したことに伴うものである。

図1 米国の乳製品輸出金額と品目構成

 前述のとおり、2007年の脱脂粉乳の輸出は数量では前年を10%下回ったが、輸出単価の上昇により、輸出額は8億3,563万ドル(894億1,241万円)と前年実績を41.9%上回った。ホエイの6億7,621万ドル(723億5,447万円、対前年106.4%増)、乳糖の3億375万ドル(325億125万円、同86.0%増)と併せると、この主要3品目で全輸出額の6割以上を占めることになる。

 2008年に入っても、米国の乳製品輸出は好調を続けている。オセアニアの干ばつが顕在化した2006年末頃から上昇し始めた米国の乳製品輸出額は、2007年5月にはついに輸入金額を上回り、2007年の乳製品貿易収支は1993年以来14年ぶりに1,740万ドル(18億6,180万円)の黒字となった(図2)。USDAが5月29日に公表した「Outlook for U.S. Agricultural Trade」によると、2008年度(2007年10月〜2008年9月)の乳製品輸出予測額は2月予測を大きく上方修正する37億ドル(3,959億円、輸入は32億ドル)とされており、2008年の乳製品貿易収支も黒字となる可能性が高い。

図2 米国の乳製品貿易収支の推移


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