飲用牛乳価格は前年よりも2割以上の高値
米国農務省農業市場流通局(USDA/AMS)によると、2007年夏を境に大きく上昇した飲用牛乳の価格は、2008年に入っても引き続き高水準を維持している。2008年2月の牛乳小売価格(労働統計局調査:都市部平均)は、3.869ドル/ガロン(1リットル当たり103.2円:1ドル=101円)と前年を25.5%上回っており、これで昨年7月以降、8カ月連続で前年を20%以上上回る結果となった。
価格高騰の最大の原因は、国際的な乳製品価格の高騰により、多くの地域で飲用向けの原料乳価格が大きく上昇したことにある。連邦ミルクマーケティングオーダー制度によるクラス1(飲用向け)生乳の平均価格は、昨年6月に100ポンド当たり20ドル(キログラム当たり44.5円)の大台を超えた後、本年2月まで20ドル超えの水準を維持してきた。3月のクラス1生乳平均価格は19.35ドルに下落したものの、それでも前年を14.2%上回っており、4月には再び20ドルを超えることが確実視されている。
これに対し、乳業メーカーや小売店などの製造・流通マージンは、2000年以降、100kg当たり40ドルから50ドル(100ポンド当たり18ドルから22ドル)の範囲内で安定しており、大きな変動は見られない。このため、昨年夏以降の原料乳価格の上昇により、小売価格に占める原料乳価格の割合は50%を超える状況が続いている。
飲用牛乳の原料価格・小売価格と消費量の増減の推移
飲用牛乳の消費量は総じて安定
このような小売価格の高騰にもかかわらず、米国の飲用牛乳の消費量には、これまでのところ大きな影響は見られていない。
USDA/AMSによると、2007年の飲用牛乳等の販売量は、平均小売価格が前年に比べ13.7%上昇したにもかかわらず、2,510万トンと前年を0.4%上回った。2004年に牛乳の小売価格が前年を14.3%上回った際も、飲用牛乳等の販売量は前年比0.7%減にとどまっており、米国では小売価格の変動にかかわらず飲用牛乳等の消費は安定している。(表1)
表1 米国の牛乳小売価格と飲用牛乳等の販売量の推移
2008年2月の飲用牛乳等の販売量は前年比2.7%増の203万6千トンとなった。特に、米国の飲用乳の主流となっている2%低脂肪乳の消費が前年比3.7%増の66.1万トンとなっていることに加え、1%低脂肪乳は同5.4%増の24万9千トン、無脂肪乳は同3.8%増の30万3千トンとなっており、うるう年による増加の要因を考慮しても前年を上回る結果となっている。また、量的にはわずかだが、有機普通牛乳や有機低脂肪乳は昨年後半から前年を30〜40%上回る勢いで消費増を続けており、これが長期低落傾向にある普通牛乳の消費の減少を補う格好となっている。
飲用牛乳の販売量と前年比(2008年2月)
今年上半期は牛乳乳製品の価格高騰が続く公算大
USDAの経済研究所(USDA/ERS)が4月17日に公表した畜産物需給予測によると、2008年の全生乳平均価格は100ポンド当たり17.65〜18.15ドル(キログラム当たり39.3〜40.4円)となり、2007年の19.13ドルを5.1〜7.7%下回るものと予想されている。特に、第3四半期および第4四半期は、それぞれ100ポンド当たり16.60〜17.30ドル、17.45〜18.45ドルと、昨年の水準(21.67ドル、21.60ドル)から2割前後低下すると見込まれている。
一方、USDA/ERSが3月21日に公表した食品の消費者物価指数予測では、2008年の牛乳乳製品の消費者物価指数について、前年比7.4%の上昇となった2007年の水準からさらに3.0〜4.0%上昇するものとされている。これは、2月の時点で2.0〜3.0%の上昇と予測していた値をさらに1.0%引き上げたものであり、原料乳価格の下落予想にもかかわらず、牛乳乳製品の小売価格は上昇を続けるという予測結果になっている。
米国の原料乳の価格は、飲用向けも含めて、脱脂粉乳、バター、チーズ、ホエイの市場価格(乳業者が報告する工場出荷価格で長期契約価格を含まない)から算定される基準価格をベースに、乳業者と生産者(多くの場合酪農協)との交渉で毎月決定される。飲用牛乳の小売価格が原料乳価格(クラス1乳価)の動向と平行して決まる構造にあることを考えると、年度後半の飲用牛乳の小売価格は、短期的な国際需給に左右される主要乳製品の価格動向により、現在の予測から大きく変動する可能性もある。 |