需給動向 海外 |
乳用牛のと畜頭数増加で、生乳の生産増を抑制へ |
1頭当たり乳量は3年半ぶりに前年を下回る米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が9月18日に公表した「Milk Production」によると、8月の生乳生産量は前年同月比1.1%増の712万1千トンとなり、昨年6月以降、最も低い伸び率にとどまった。8月の搾乳牛1頭当たり月間乳量は767キログラムと前年同月を0.2%下回った。1頭当たり乳量が前年同月を下回ったのは、前年がうるう年であった2005年2月以来ほぼ3年半ぶりのことになる。特に、米国最大の生乳生産量を誇り、1頭当たり乳量も全国平均を大きく上回るカリフォルニア州で、7月に続いて2カ月連続で前年の乳量を下回ったことが特徴的である。 8月のカリフォルニア州の1頭当たり生乳生産量は834.6キログラムであり、生乳生産量第2位のウィスコンシン州の750.7キログラムを83.9キログラム上回っている。しかし、両州の1頭当たり乳量には、昨年8月には115.6キログラム、一昨年8月には129.3キログラムの差があった。輸送費が高騰する中で、価格が大幅に上昇しているアルファルファを他州から購入せざるを得ないという生産構造が1頭当たり乳量の減少という形で表れているものと考えられる。 図1 主要州における搾乳牛1頭当たり月間乳量 搾乳牛頭数はとう汰事業の開始後も前年を上回る8月の搾乳牛頭数は、928万2千頭と前月より4千頭減少したものの、前年の頭数は1.3%上回った。USDAが毎月の搾乳牛頭数を公表し始めた98年以降、搾乳牛頭数が928万頭を超えたことはなく、これは97年3月の929万5千頭に次ぐ高水準にあたる(図2)。このような中、7月下旬から8月にかけて、生産者団体は自己負担による搾乳牛とう汰事業(CWT事業)を実施した。通算5度目になる今回の事業では、2,660万ドル(約27億9千万円。1ドル=105円)を投じて約2万5千頭の搾乳牛がとう汰され、1頭当たり平均で1,070ドル(約11万2千円。同)の支払いが行われた。 図3は乳用経産牛の週間と畜頭数の推移を示したものである。2008年の前半はほぼ前年並みのと畜頭数で推移してきたが、第30週(7月26日〜)以降は前年のと畜頭数を大きく上回る状況が続いている。CWT事業の効果の一部は8月の搾乳牛頭数に反映されていると考えられるが、実際のとう汰の多くが8月以降にずれ込んでいることから、その実績が統計数値に明確に表れてくるのは9月以降になるものと考えられる。 図2 搾乳牛頭数と前年同期比 図3 乳用経産牛の週間と畜頭数 酪農協共同基金(CWT)による搾乳牛とう汰事業の実績
乳牛用飼料価格はわずかに下落傾向にUSDA/NASSが9月26日に公表した「Agricultural Price」によると、9月のタンパク質含量16%乳牛用飼料(トウモロコシ51%、大豆8%、アルファルファ乾草41%で構成されるモデル飼料)価格の速報値は、100ポンド当たり9.88ドル(トン当たり約22,871円)と5カ月ぶりに10ドルを下回った。9月後半から10月にかけて、穀物の先物価格はさらに一段の下落を示していること、ひっ迫が懸念されたアルファルファも一部の高品質のものを除いて本年の供給に目途がついたとされること、原油価格の急落に伴って輸送燃料価格も下落傾向にあることなどから、地域ごとの飼料構成の相違による若干の濃淡こそあれ、出来秋を迎えて米国内における飼料価格は軟調に推移するものと考えられる。 図4 タンパク含量16%乳牛用飼料価格の推移 |
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