需給動向 海外

◆米 国◆

当面は続く牛の飼養頭数の減少傾向


◇絵でみる需給動向◇


肉用繁殖雌牛飼養頭数は前年同月を2.4%下回る

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が1月30日に公表した牛の飼養動向調査「Cattle」によると、2009年1月1日現在における牛の総飼養頭数は、前年同月を1.6%(154万頭)下回る9,449万1千頭となった(注1)。これは1959年の9,332万2千頭以降の過去50年間で最小の飼養頭数となる。(図1)

図1 牛の総飼養頭数の推移

 牛の総飼養頭数は2004年の9,488万2千頭を底に上昇に転じたが、2007年の9,700万3千頭をピークに2008年、2009年と減少している。

 飼養頭数を部門別に見ると、肉用繁殖雌牛は3,167万1千頭と前年同月を2.4%(76万4千頭)下回っている。また、500ポンド(227キログラム)以上の更新用肉用未経産牛の飼養頭数も552万6千頭と前年同月を2.1%下回っている。

 肉用繁殖雌牛頭数の減少要因の一つとしては、2007年から2008年にわたって続いた干ばつの影響があり、テネシー、ケンタッキー、バージニアなど南東部の州では2年続けて大きく飼養頭数が減少していることが挙げられる。また、今回の金融危機により融資条件が厳しくなり資金調達が困難になったことも飼養頭数減少の要因として挙げられる。

 このように肉用繁殖雌牛が大きく減少していることから、飼養頭数の減少傾向は数年間は続くものと考えられる。

注1:USDA/NASSは2007年農業センサスなどの公表を受けて「Cattle」の2008年1月1日現在の数値を下方修正している。

フィードロット飼養頭数は前年同月を6.6%下回る

 同調査によるとフィードロット飼養頭数は前年同月を6.6%(97万6千頭)下回る1,385万1千頭となり、フィードロットにおいても大きく飼養頭数は減少している。

 また、USDA/NASSが毎月公表している収容能力1,000頭以上のフィードロットにおける飼養動向調査「Cattle on Feed」を見ると、2009年1月1日現在の飼養頭数は前年同月を7.1%下回る1,123万4千頭となっている。

 これにより収容能力1,000頭未満のフィードロット飼養頭数を算出すると前年同月を4.1%下回る261万7千頭となり、大規模フィードロットの方が飼養頭数の減少率が大きいことが分かる。(図2)

図2 フィードロットの規模別飼養頭数の増減率とトウモロコシ価格の推移

 これは、中小のフィードロットはコーンベルト地帯に多いことからDDGsの調達が容易であったり、大規模生産者ほど今回の金融危機による融資条件の悪化の影響が大きくなかったことなどが要因として考えられる。

 また、「Cattle」によるとフィードロット外の肥育素牛頭数(注2)は前年同月を1.0%上回る27,516千頭となっており、フィードロットの飼養頭数が減少し、フィードロットへ導入前の肥育素牛頭数が増えている。

 これは飼料穀物の価格動向や肥育牛の出荷価格などにより生産者がフィードロットへの導入を遅らせているものと考えられ、フィードロットにおける飼養頭数の減少の要因の一つに挙げられる。(図3)

図3 肥育牛価格とトウモロコシ価格の推移

注2:500ポンド以上の去勢牛、更新用以外の未経産牛および500ポンド未満の子牛


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