EUの豚枝肉卸売価格は、7月をピークに低下傾向で推移しており、9月は前月を4%下回った。このため、2009年第3四半期における卸売価格は、欧州委員会が春先に公表した予測値を常に下回る結果となった(図1)。既報(「畜産の情報」7月号)のとおり、09年の卸売価格は、域内の飼養頭数の大幅減による供給量の減少(2008年比3.6%減の2,179万トン(枝肉ベース))を受け、好調であった08年には及ばないものの、それに近い水準で堅調に推移すると予測されていた。英国の農業・園芸開発委員会(AHDB)によれば、と畜頭数が例年に比べ高水準であった一方で夏期休暇シーズン終了に伴う需要の低下により、卸売価格が引き下げられたと分析している。
例年、EUの豚枝肉卸売価格は、夏場の需要期にピークを迎え、冬場に価格が低下するという季節変動を見せる。09年の夏は欧州全域で好天が続き、観光部門が経済危機の中で健闘したと報道されたが、少なくとも豚枝肉卸売価格については、顕著な追い風とはならなかったと言えよう。
図1 EUにおける豚枝肉卸売価格の推移
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09年のEUの1人当たり豚肉消費量は前年比で1%弱減少の見込み
欧州の調査会社であるGIRAが2009年7月時点で行った予測によれば、09年のEUの1人当たり豚肉消費量は、前年比で1%弱減少すると見込まれている(図2)。近年の食肉消費の傾向として、脂身が多く単価も高い羊肉、牛肉・子牛肉から、ヘルシーなイメージがあり比較的安価な鶏肉、豚肉への移行が観察されていた。しかし、この予測によれば、鶏肉の消費は09年においても堅調に推移すると見込まれているのに対し、豚肉の1人当たり消費量は2008年に続き2年連続で食肉の中で最大の減少幅となるとしている。
一方でGIRAは、現在の域内における豚肉の需要と供給はバランスが取れた状態にあり、豚枝肉卸売価格は当初の見込みを下回って推移しているとはいえ、2002年から2007年までの価格と比較すれば依然として高い水準にあるとしており、現時点においては、域内の豚肉の需給バランスが大きく崩れることは想定されていない模様だ。
図2 EUの1人当たり食肉消費量の動向(前年比)
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