需給動向 海外

◆米 国◆

生乳生産は順調に増加する一方、飼料穀物価格の上昇により生産者の収益は悪化


◇絵でみる需給動向◇


搾乳牛頭数は前年並み、生乳生産量は3.3%増

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が10月19日に公表した「Milk Production」によると、搾乳牛飼養頭数は、乳用牛とう汰事業の効果などから、昨年3月以降一貫して前年同月を下回って推移している。しかし、その減少幅は縮小傾向にあり、2010年9月は前年並みの911万6千頭(前年同月比0.1%減)となった。一方、1頭当たり乳量は一貫して前年同月を上回っており、9月も同3.3%増の772.5キログラムとなった。この結果、生乳生産量は、本年3月以降前年同月を上回って推移し、9月は同3.3%増の704万3千トンとなった。(図5)

図5 生乳生産量等の前年同月比の推移
資料:USDA/NASS 「MILK PRODUCTION」

 同省経済調査局(USDA/ERS)は毎月公表する「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」において2010年の生乳生産量予測は、昨年7月以降毎月上方修正しており、本年10月22日の予測では前年を1.8%上回る8745万2千トンとしている。

モッツァレラチーズの需要が堅調

 USDA/NASSが11月2日に公表した「Dairy Products」によると、2010年9月の乳製品の生産量は、バターが前年同月比16.7%増の50,107トン、脱脂粉乳が同24.0%増の49,407トン、チーズが同4.3%増の398,505トンとなった。このうち、バターは2カ月連続で前年同月を上回っているが、2007年、2008年の水準より下回っている。脱脂粉乳も輸出需要の増加から2カ月連続で同2ケタの伸びとなっている。一方、累計生産量(2010年1〜9月)は、バターが前年同期比3.6%減の519,811トン、脱脂粉乳が同0.1%減の538,302トンと前年割れとなったのに対し、チーズは同3.0%増の3,522,609トンとなっており、チーズ需要が強いことが分かる。中でもチーズ生産量の約1/3を占めるモッツァレラチーズは、前年同期比7.2%増とかなりの程度増加しており、チーズ需要のけん引役となった。これは主にピザの消費が伸びていることが影響したことによるとみられる。(図6)

図6 モッツァレラチーズ生産量と前年同月比の推移
資料:USDA/NASS 「DAIRY PRODUCTS」

改善傾向にあった酪農家の収益は飼料穀物価格の上昇により悪化

 生乳生産コストの指標である生乳/飼料比(生乳1ポンド当たりの販売収入/酪農向け飼料1ポンド当たりの価格)について見ると、2010年上半期は前年同期比46.9%増の2.25となる。これは、採算ラインとされる2.5水準を依然下回っているものの、乳価については国内外の乳製品需要が堅調であったことなどから前年度を上回って推移し、飼料費についても前年と比べると安価であったことから、酪農家の収益性は改善の傾向を示したといえる。しかし、トウモロコシ価格などの上昇から、10月は前月を0.15ポイント下回る2.23と、6カ月ぶりに前月を下回ることとなった。よって、飼料コストの急騰を受けた酪農経営の収益は悪化に転じたと考えられる。(図7)

図7 生乳/飼料比の推移
資料:USDA / NASS「Agricultural Prices」



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