搾乳牛頭数の減少に伴い、生乳生産量も減少
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が11月18日に公表した「Milk Production」によると、搾乳牛飼養頭数は、生乳生産者団体による牛群とう汰事業の効果もあって2009年3月以降8カ月連続で前年同月を下回っており、10月は前年同月を2.4%下回る909万8千頭となった。2009年(1〜10月)の1頭当たり乳量は前年を平均0.7%上回っているが、生乳生産量は搾乳牛飼養頭数の削減が進んだ5月に前年割れとなった以降は5カ月連続で下回り、10月は前年同月を1.1%下回る700万トンとなった。しかし、その動向には地域差があり、最大の生乳生産州であり、大規模な企業的経営で加工原料乳向けの多いカリフォルニア州では前年同月に比べ5.3%減産となった。これに対し、小規模経営主体で飼料の自給率が高く、チーズ原料乳向けの多い生乳生産量第2位のウィスコンシン州では3.5%増産している。
図6 搾乳牛頭数の推移と牛群とう汰事業による削減頭数
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在庫も縮小する脱脂粉乳、バター
生乳生産の減少に伴い乳製品も減産傾向で推移している。10月の脱脂粉乳の生産量は4万2千トンと前年同月を24.4%下回った。一方、在庫量は8月以降、急激に減少しており10月は同44.7%減の4万1千トンとなった。
図7 脱脂粉乳の生産量と在庫量の前年同月比の推移
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バターの生産量は、10月は前年同月を14.3%下回る5万1千トンとなっている。在庫量は、第3四半期に輸入が増加し、消費と輸出が減少したことから、10月は前年同月を30.6%上回る8万9千トンとなった。しかし、在庫量は例年の季節変動を伴いつつ、6月をピークにクリスマスの需要期に向けて減少傾向にあり、前月に比べ14.4%下回っている。
図8 バターの生産量と在庫量の前年同月比の推移
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改善傾向を示す乳製品の需給
このように乳製品の需給が改善される中、脱脂粉乳については、豪州で多雨などにより2009年第3四半期の生乳生産が前年同期を3.9%下回ったことなどから国際需給にタイト感が見え始めている。このような状況を反映し、脱脂粉乳の国内卸売価格は上向き、10月は前年同月を21.0%上回ったのに続き、11月も同45.0%高の1ポンド当たり125.4セントとなった。米国の脱脂粉乳の約3分の2を生産し、苦しい経営が続くカリフォルニア州をはじめとする西部諸州の酪農家にとって、希望の持てる展開となっている。
一方、バターの卸売価格は、昨年12月に前年同月を下回って以降12カ月連続の前年割れが続いている。しかしながら11月は前年同月を7.2%下回ったものの、前月を17.0%上回る1ポンド当たり150.1セントと今年の最高値をつけるなど、改善の兆しがみられている。
なお、同省経済調査局(ERS)の11月18日の予測によると、世界経済の回復に伴い、脱脂粉乳とバターの国際需要も回復し、2010年の輸出は乳脂肪分ベースでは好調だった2008年に比べ20%増となり、無脂乳固形分ベースでは2008年の4.1%減となるものの2009年比では15.9%増となると予想されている。
図9 バターと脱脂粉乳の卸売価格の前年同月比の推移
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