需給動向 海外

◆米 国◆

米国農務省、2010年生乳生産量を前年を上回る水準に上方修正


◇絵でみる需給動向◇


2010年2月の生乳生産量は8カ月ぶりに前年同月を上回る

 米国農務省全国農業統計局(USDA /NASS)によると、2010年2月の生乳生産量は前年同月比0.1%増の669万9千トンと、8カ月ぶりに前年水準を上回ることとなった。これは、生産者団体による牛群とう汰により搾乳牛飼養頭数が前年同月比2.2%減となる一方、一頭当たり乳量が同2.3%増となり、搾乳牛頭数削減の効果を相殺した結果である。

 また、2月の搾乳牛飼養頭数は前年同月を下回ったものの、前月と比べれば3千頭増加しており、今年に入って2カ月連続で前月を上回った。2010年1月1日現在における更新用乳用雌牛頭数が、前年同月を2.4%上回っていることを併せて考えれば、牛群とう汰により落ち込んだ搾乳牛飼養頭数は、2010年に徐々に増加してくる可能性が高まっていると言えるであろう。

 このような状況を受けて、USDA経済調査局(USDA/ERS)が3月19日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」では、2010年の生乳生産量について、搾乳牛飼養頭数の前月推測値9015千頭を9044千頭に見直すことにより、前年を下回るとしていたこれまでの推測値を前年比1.8%増の8595万6千トンに上方修正している。今後の搾乳牛飼養頭数の動向如何によっては、さらなる上方修正が必要となってくる可能性もある。

図6 搾乳牛頭数の推移
資料:USDA/NASS「Milk Production」

チーズ在庫増加の状況を踏まえ、生産者団体は輸出補助金の実施を決定

 生乳生産に増加の兆しが認められる中、2010年2月末時点の乳製品在庫に目を向けてみると、バターが前年同月比3.3%減の8万9843トン、チーズが同10.2%増の44万6161トン、脱脂粉乳が同21.7%減の6万7069トンとなっており、チーズ在庫が積み上がっている状況にある。特に、チェダーチーズを中心とするアメリカンチーズは、イタリアンチーズなど、アメリカンタイプ以外のチーズと異なり、昨年後半から在庫が増加傾向にあることや、消費量が前年を下回って推移していることなどから、その在庫解消が課題となっている。このため、米国の生乳生産者団体である全国生乳生産者連盟(NMPF)は3月18日、チーズの国際価格と国内価格の差が縮小していることや、乳価回復のマイナス要因となっているチェダーチーズの在庫増などを踏まえて、生産者拠出金による酪農共同基金(CWT)を活用し、チェダーチーズに対する輸出補助金を開始すると発表した。ターゲットとする市場は、日本、アルジェリア、エジプト、サウジアラビア、豪州などとしており、4月12日時点で中東、欧州、アジア、アフリカ、豪州向けに、4,102トンのチェダーチーズに係る輸出補助金が承認されている。なお、同基金を活用した輸出補助金は最近では2008年に行われており、その際は、約3万9千トンの乳製品(生乳換算約90万7千トン)が対象となった。

図7 アメリカンチーズ在庫量および消費量の
前年同月比の推移
資料:USDA/NASS「Cold Storage」,
USDA/ERS「Commercial disappearance of American
cheese, other than American cheese」

上昇傾向にあった酪農家の収益性は再び低下に転じる

 酪農家の収益性は、手取り乳価と生産コストのバランスで決定される。図8は、酪農家の収益性を図る指標として、手取り乳価から飼料費を控除した金額の推移を示したものである。酪農家の収益性は、2008年の世界金融危機を契機に大きく落ち込み、その後、昨年の中頃から回復している傾向が見てとれる。しかし、今年に入って飼料費の下げ幅を上回る勢いで乳価が弱含みで推移していることから、酪農家の収益性は再び低下傾向に転じている。今後の生乳生産や輸出補助金の効果などが、生産者の収益性にどのように影響してくるのか、注目されるところである。

図8 酪農家の収益性(乳価−飼料費)の推移
資料:USDA/NASS「Agricultural Prices 」

 


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