需給動向 海外

◆ブラジル◆

国際金融危機からの回復をめざすブラジル産鶏肉

◇絵でみる需給動向◇


2010年上半期の輸出額は前年同期比18.3%増

  ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2010年上半期(1〜6月期)の生鮮鶏肉輸出は数量(製品ベース)164.7万トン、金額266.3千万ドル(約2264億円:1ドル≒85円。前年同期比で1.1%、18.3%の増加)となり、国際金融危機(以下「危機」という。)以前の水準までほぼ回復していることが分かった。2009年以降、ブラジル鶏肉業界は、危機の影響から縮小した国際市場を前に、輸出部門を中心に厳しい経営を余儀なくされていたが、国際価格もトン当たり1617.3ドル(約13万7千円。前年同期比17%高)まで回復しており、鶏肉市場は上昇基調にあると言える。

※「ブラジル鶏肉産業の現状と今後の見通しについて」(平成22年3月駐在員レポート)を参照。http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2010/mar/gravure02.htm
図4 鶏肉輸出推移(2010年上半期)
資料:ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)
  注:生鮮鶏肉(製品ベース)

  ブラジル養鶏連合(UBABEF)は、危機から回復しつつあるとしながらも完全に危機以前の水準に戻るためには、年間を通して輸出金額で前年比20%増となる必要があるとしている。また、為替相場に大きく左右されるブラジル産鶏肉の国際価格は、為替リスクが国際競争力の障害となることも懸念している。

新規市場の中国は冷凍カット部門で上位10カ国にランクイン

  輸出形態別に見ると、冷凍カット鶏肉が輸出量940,010トン(全生鮮鶏肉輸出の57.1%)、輸出額16億4010万ドル(約1394億円。同61.6%)となり、残りの大部分が冷凍丸どりである。輸出先国を見ると、冷凍カット鶏肉では日本向けが輸出量184,113トン(全冷凍カット鶏肉の19.6%)、輸出額4億1742万ドル(約354.8億円。同25.5%)、冷凍丸どりではサウジアラビア向けが輸出量197,242トン(全冷凍丸どりの28.0%)、輸出額2億8563万ドル(約242.8億円。同28.0%)が最も多い。また、2010年度上半期の特徴は、中国向けが大幅に増加し、前年同期より輸出額で約80倍超となったことである。これは、従来香港経由で中国に輸入されていたものが、直接輸入に切り替わったものであり、その分、香港への輸出は減少している。この傾向はしばらく続くとみられ、中国市場は今後ますます拡大すると期待されている。

  一方で、UBABEFによれば、拡大傾向にある海外市場であるが、今年5月からEUは冷凍鶏肉を解凍後、加工した製品を生鮮鶏肉として流通販売することを禁止したため、ブラジル産冷凍鶏肉のEU向け輸出にどのような影響をもたらすか懸念されるなど、今後のEU市場の行方は不透明のようだ。

表4 国別冷凍カット鶏肉輸出
資料:ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)
表5 国別冷凍丸どり輸出
資料:ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)

次の目標は「2011年に鶏肉生産世界第2位」

  米国農務省(USDA)によると、2009年の世界の鶏肉生産量は7176万トンであり、国別では、米国1593万5千トン、中国1210万トン、ブラジル1102万3千トンとなっている。ここ数年は、この3カ国で世界シェアの50%超を占め、順位もほぼ同様に推移している。しかしながら、ブラジルはひなふ化羽数を毎年確実に増加させるなど今後の鶏肉生産余力は十分と判断されるため、危機からの回復後、中国やロシアをはじめ海外市場からの需要増が見込まれるとすれば、今後の鶏肉生産増にも拍車がかかるであろう。

  UBABEFサンチン理事は、「2011年の鶏肉生産は中国を抜いて世界第2位になること」が次なる目標と語る。ブラジル鶏肉業界は100種類以上の鶏肉カット技術をすでに習得しており、あらゆる輸入者・輸入国のニーズに適合させることが可能であるため、今後、さらなる国際市場の拡大も十分可能ということのようだ。さらに、例えば丸どりがキログラム当たり1.5ドル(約128円)であれば、加工鶏肉は同2.5ドル(約213円)、さらにナゲットは同3.5ドル(約298円)で取引できることから、加工鶏肉は輸出競争面で、今後ますます魅力的な商品になると言う。

  なお、2011年にブラジルが中国を抜くためには、年間1250万トン以上の鶏肉を生産しなければならない。これは、毎月平均500万羽のひなをふ化させ、毎月平均105万トンの鶏肉を生産させることになるが、現在のブラジルの鶏肉生産効率を考慮すると、不可能ではないと考えられる。

図5 ひなふ化羽数と鶏肉生産量
資料:ブラジルひな生産者協会(APINCO)

元のページに戻る