需給動向 海外

◆米 国◆

バターの生産は増加基調であるものの、好調な国内消費などにより在庫は依然として低水準


◇絵でみる需給動向◇


生乳生産の増加に伴いバター生産は増加傾向、しかし、在庫は低水準

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が6月17日に公表した「Milk Production」によると、2011年5月の生乳生産量は、前年同月比1.3%増の783万3千トンとなり、16カ月連続で前年水準を上回った。これは堅調な乳価を背景に、生産者が昨年後半より乳用牛飼養頭数を増やしてきたことや1頭当たり乳量の増加が要因である。

 生乳生産量の増加に伴いバター、チーズの生産も増加傾向で推移している。NASSが7月5日に公表した「Dairy Products」によると、2011年5月の乳製品の生産量は、バターが前年同月比18.3%増の70,736トン、チーズが同3.9%増の415,127トン、脱脂粉乳が同4.6%減の66,982トンとなった。バター生産が増加した要因としては、堅調な国内消費や輸出に支えられ、より多くの乳脂肪がバターに仕向けられていることなどが挙げられる。

図8 バターの在庫量と前年同月比の推移
資料:USDA/NASS「Dairy Products」「Cold Storage」

 また、「Dairy Products」およびNASSが6月22日に公表した「Cold Storage」によると、5月の乳製品の在庫量は、バターが前年同月比19.8%減の77,298トン、脱脂粉乳が同11.7%増の75,371トン、チーズが同2.1%増の475,595トンとなった。バターの在庫については、前年8月より生産増に転じているにもかかわらず、国内消費などが好調であることから、17カ月連続で前年水準を下回る低水準で推移している。一方、脱脂粉乳の在庫については、高値に伴いホエイへ需要が切り替わっていることなどにより、生産は減少傾向にあるものの、前年と比べ積み上がっている。

バターの国内消費および輸出需要は堅調に推移

 バターが増産傾向にあるなか在庫が低水準で推移している要因の一つとして、バターの需要に供給が追い付いていないということが挙げられる。

 バターの国内消費をみてみると、緩やかであるものの米国の着実な経済成長も手伝って、2011年1月以降前年同月を上回って推移しており、2011年1〜4月の国内消費量は前年同期比15.1%増の264,324トンであった。

図9 バターの国内消費量の推移
資料:USDA/ERS「Livestock, Dairy and Poultry Outlook」
図10 米国とオセアニア地域のバター価格の推移
資料:USDA/AMS
注1:米国のバター価格は、シカゴ・マーカンタイルのスポット取引価格(AAバター)
注2:オセアニア地域のバターはUSDA/AMSが調査したFOB 価格であり、脂肪率82%以上のもの

 また、2011年1〜4月のバター輸出をみてみると、輸出量は約2倍の27,079トン、輸出額は約2.5倍の10,908万ドルとなり、好調に推移している。輸出先の内訳をみると、上位5位は、上からサウジアラビア、メキシコ、モロッコ、デンマーク、カナダとなっており、このうち2位のメキシコ向けが前年同期比の約5倍、4位のデンマーク向けが同約14倍と輸出量が大きく伸びている。輸出量の増加は、米ドル安と世界的な乳製品の需要の増大の下、乳製品の国際価格が上昇し米国乳製品の国際競争力が高まったことが理由として考えられる。

 ただし、業界関係者は、世界の主な乳製品輸出国であるニュージーランドの2011/12年度産乳製品の生産量は前年度産と比べ増加すると見込んでいる。そうなった場合、今後、国際価格が弱含む展開も想定されることとなり、国際価格の上昇などにより輸出競争力を得ているバターをはじめとする米国産乳製品の輸出への影響が懸念される。

表8 米国産バター輸出量(1〜4月)
(単位:トン)
資料:USDA/FAS

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