需給動向 海外

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12月の豚枝肉卸売価格、3カ月連続で前年を上回る


◇絵でみる需給動向◇


冬季の落ち込み、例年よりも緩やかに

 欧州委員会によると、EU27における12月の豚枝肉卸売価格は、100キログラム当たり139.44ユーロ(約15,199円、1ユーロ=109円)と3カ月連続で前年を上回る結果となった。欧州の豚肉相場は例年、第4四半期に低下傾向で推移しているが、今期は低下幅が著しかった前年ほどには落ち込まなかったもようであり、2010年10月時点で欧州委員会が予測した水準に近い結果となった。(「畜産の情報2010年12月号参照」)

 同価格については、2010年当初、前年並みの水準で推移すると見通されていたところであるが、夏季の需要期におけるピークの高さ、長さとも前年に及ばない結果となったことから、冬季の動向が注目されていた。(図7)

図7 EUにおける豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会

2011年は前年比0.1%安との予測

 一方、欧州の調査会社GIRAによると、域内の養豚経営は、経済危機に伴う域内外の豚肉需要低迷などの影響により打撃を受けたことから、2011年の豚枝肉卸売価格は前年比0.1%安の100キログラム当たり136.4ユーロ(約14,868円)と予測されている。

 その前提としてGIRAが挙げるのは以下のとおり。

・豚肉生産量は、2011年上半期に増加するものの、下半期に減少する。

・豚肉輸出量は、需要の減退に伴い、2011年はわずかに減少傾向で推移する。

・豚肉輸入量は、2011年は前年並みとなる。

・豚肉消費量は、2009年は2%程度減少し、2010年は1%程度増加する。また、食肉消費量は増加し、豚肉の占める割合は高まる。

 さらにGIRAによると、2010年5・6月時点における主要12加盟国(EU27におけるシェア90%)の母豚頭数は前年比1.3%減の1,204万頭となった。加盟国別では全体的に減少傾向が観察される中、2008年の飼料価格高騰時に生産基盤に大きな打撃を受けたポーランドにおいて母豚頭数が増加していることが注目される。

 総飼養頭数について見ると、1母豚当たりの年間出生頭数の増加など生産性の向上に伴い、全体で前年比0.1%増となる1億3190万頭となっている。主要国別では、デンマーク(同0.7%増)、オランダ(同0.5%増)、ベルギー(同1.2%増)においていずれも増加しているほか、前述のとおり生産基盤が回復傾向にあるポーランドが同4.1%増と大きく増加している。(表2)

表2 加盟国別の豚飼養頭数、母豚頭数
資料:GIRA
  注:2010年5月または6月時点の値。

 域内の養豚経営の収益性については、2010年下期から2011年にかけて、目下の飼料原料価格高騰により大きく損なわれるとの懸念が示されたところである。GIRAの予測のとおり2011年の豚肉相場が前年を下回る水準で推移することとなれば、EUの豚肉生産基盤が深刻な打撃を受けるだけに、今後の動向が注目される。


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