2011年の年平均豚枝肉卸売価格は前年比9.2％高

　欧州委員会によると、EUの2011年の平均豚枝肉卸売価格は100キログラム当たり153.19ユーロ（約16,850円、1ユーロ＝110円）と前年比9.2％高となった。これは年間を通じて高値を維持し、前年同月を上回る水準で推移したことによる。

　豚肉価格は、秋に落ち込み、クリスマス需要に向けて徐々に上昇するといった季節変動が見られるが、2011年は季節的な落ち込みが見られず、10月、11月は一段高となり、12月上旬には同160.00ユーロ（17,600円）まで達した。この結果、12月の平均価格は同159.34ユーロ（約17,530円）と前年同月比14.3％高となった。この水準は2008年10月以来の水準となった。（参照：47ページ　「豚枝肉卸売価格（25ヵ国：市場参考価格）」グラフ）

　2011年の域内需給をみると、生産量は2291万トンと前年比1.7％増であった。一方、一人当たりの消費量は、近年の英国などで発生した口蹄疫などの影響で減少傾向に加え、2011年はユーロ圏の信用不安を契機に、特に南欧で消費が冷え込んだことから、域内消費に大きな変化はなかった。しかし、輸出については、家畜疾病の影響などで豚肉生産が減少した中国や韓国向けが大幅に増加し、正肉だけでなく、豚肉加工品や内臓などの副生物も増加傾向が続き、年末には供給不足となるほどであった。この結果、2011年の輸出量は前年を約18％上回ることとなり、これが年間を通じた豚肉価格の堅調につながったと見られる。

図6　EUおよび主要加盟国の豚枝肉卸売価格の推移

資料：欧州委員会　 　注：グレードE

表3　豚肉の需給の推移

資料：欧州委員会

2012年1月現在のデンマークの豚飼養頭数は微増

　英国の農業・園芸開発委員会（AHDB）によると、欧州の主要豚肉生産国で最大の輸出国であるデンマークの2012年1月1日現在の豚飼養頭数は、1234万8千頭となり、前年比0.4％増と微増となった。しかし、繁殖雌豚については、123万9千頭と前年同期比3.7％減となり、これは、1998年以来の低水準で、ピーク時の2004年と比較して13％の減少となっている。この内訳を見ると、妊娠雌豚は同1.5％の減少にとどまったが、未経産の妊娠雌豚、未経産雌豚はそれぞれ同4.4％減、11.4％減と、かなりの減少となっている。AHDBは、この状況が今後数年の繁殖雌豚全体の飼養頭数の減少を示唆するとしている。繁殖農家は、2013年1月1日に施行する、アニマルウェルフェアの新規則（繁殖雌豚のストール飼いの禁止）の順守から、豚舎の改装など新たな投資が必要となる。このため、2012年中の離農を検討している農家もあるとしている。これらの農家の中には、繁殖雌豚の更新はせず、現在飼養している繁殖雌豚のみで経営を予定しており、飼養頭数の減少につながるとしている。繁殖雌豚の飼養動向は豚肉生産に大きく反映されることから、主要輸出国である同国の今後の飼養動向が注視される。

表4　デンマークの豚飼養頭数の推移

資料：AHDB　 注：1月時点