需給動向 海外

◆米 国◆

干ばつにより、牛の総飼養頭数はさらに減少


◇絵でみる需給動向◇


総飼養頭数は、前年比2.1%減

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が1月27日に公表した牛の飼養動向調査「Cattle」によると、2012年1月1日現在の牛総飼養頭数は、前年を2.1%下回る9076万9千頭となった。これは、この59年間で最小の飼養頭数となる。

 約10年を1サイクルとした米国のキャトルサイクルは、1975年(1億3202万8千頭)をピークに減少傾向にある。直近のサイクルは、2007年をピークに減少局面に入り6年経過するが、2年連続のテキサスなど南部における干ばつや高止まりする飼料穀物価格の影響を受けて、この1年間で191万4千頭と大きく減少した。

図1 牛の総飼養頭数の推移
資料:USDA/NASS「Cattle」
  注:総飼養頭数は各年1月1日現在

飼養頭数減少も、更新用雌牛頭数は増加

 飼養頭数を部門別に見ると、肉用繁殖雌牛は前年比3.1%減の2988万3千頭と、6年連続で前年を下回った。この減少率は、1996年以降の減少基調の中では最大となる。肉用繁殖雌牛の減少(96.7万頭減)は、テキサス州(66万頭減・同13%減)とオクラホマ州(28.8万頭減・同14%減)の繁殖牛の2大飼養州において大きく減少したためである。一方、ネブラスカ州では11.5万頭増・同6%増と最大の増頭を記録している。これは、テキサス州やオクラホマ州の干ばつを避けて、比較的牧草の生育が良好な北部のネブラスカ州に肉用繁殖雌牛が移動したものと考えられる。

 肉用牛の供給不足から生体牛価格が高騰するなどキャトルサイクルが底を打つとみられたが、南部の干ばつが肉用繁殖雌牛のとう汰と更新用肉用雌牛のフィードロットへの出荷をさらに進めた。

 しかしながら、全米の更新用肉用雌牛については、前年比1.4%増の521万2千頭と6年ぶりに増えた。これは、干ばつの影響を大きく受けた南部のテキサス州(6万頭減・同9.8%減)、オクラホマ州(5.5万頭減・同15.5%減)で大きく減少したものの、牛群再構築へと動きだす州も多く見られ、ネブラスカ州では最大の5.5万頭増・同18.3%増となるなど半数の州で増加したことによる。

図2 繁殖雌牛と子牛生産頭数の推移
資料:USDA/NASS「Cattle」
  注:繁殖雌牛頭数は各年1月1日現在

 なお、2011年の子牛生産頭数は前年比1.1%減の3531万3千頭と、1950年以降の最小となっている。また、肥育素牛頭数は2584万5千頭と前年を3.9%下回っており、飼養頭数の減少は当面続き、2012年の素牛供給はひっ迫するものと考えられる。

供給不足で高騰する生体牛価格

 2012年は肉用牛の供給不足が懸念される中、肥育素牛価格は高騰している。2012年1月の価格は、前年同月比20.1%高の100ポンド当たり158.0ドル(キログラム当たり約268円:1ドル=77円)と前年を大幅に上回っている。また、肥育牛価格も、同17.0%高の同123.0ドル(209円)と2010年1月以降前年を上回って上昇している。

図3 肥育素牛と肥育牛価格の推移
資料:USDA「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」
注1:肥育素牛価格は、ミディアム、600〜699ポンド、オクラホマシティ市場
  2:肥育牛価格は、チョイス級、1100〜1300ポンド、ネブラスカ

 同省経済調査局(USDA/ERS)によると、2012年は飼養頭数の減少により、と畜頭数が減少し、牛肉生産量は前年を4.7%下回ると予測している。肉用牛の需給はひっ迫し、2012年の肥育素牛価格は、前年比4.7〜10.7
%高、肥育牛は同4.6〜11.6%高と、いずれ
も2011年をさらに上回ると予測している。

 米国の大手食肉パッカーやフィードロットは、高い稼働率を維持することで収益性を確保している。今後、飼養頭数が大きく減少すると、食肉パッカーやフィードロットの稼働率は落ち込むこととなり、十分な収益を確保できない業者は撤退を余儀なくされることになるであろう。今後の状況次第では、統合・合併等がさらに進み、業界再編が加速化することになるものとみられる。


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