需給動向 海外

生乳生産量は前年を下回るも、チーズ生産量は増加


◆米 国◆


◇絵でみる需給動向◇


生乳生産量は2年7カ月ぶりに前年を下回る

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が9月19日に公表した「Milk Production」によると、8月の生乳生産量は、前年同月比0.3%減の742万8千トンとなり、2年7カ月ぶりに前年水準を下回った。これは、8月の搾乳牛飼養頭数(922万頭)は前年同月を0.2%上回ったものの、暑さなどにより、ひと月の1頭当たり乳量(806キログラム)が前年同月を0.5%下回ったことによる。

 昨年末から乳価が下落傾向にあるなか、干ばつによる乾草生産量の減少や飼料穀物の価格高騰を受けて搾乳牛のとう汰を始めるなど、酪農家の生産意欲減退が見られる。このことから今後、生乳生産量は前年水準を下回って推移すると見込まれ、USDA経済調査局(ERS)は9月18日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」で、2012年第3四半期の生乳生産量は前年同期をわずかに上回るも、同第4四半期は0.4%下回ると予測している。

チーズの輸出は堅調に推移

 8月の乳製品の生産量を見ると、バターおよび脱脂粉乳は前年を下回るも、チーズは前年を上回った。NASSが10月3日に公表した「Dairy Products」によると、バターは前年同月比3.5%減の5万9千トン、脱脂粉乳は同7.8%減の4万8千トンだった一方、好調な国内需要および輸出需要を背景にチーズは同2.6%増の40万1千トンとなった。

 また、「Dairy Products」およびNASSが9月21日に公表した「Cold Storage」によると、8月の乳製品の在庫量は、バターが前年同月比23.4%増の9万2756トンと前年より増加したのに対し、脱脂粉乳は同37.1%減の4万7921トン、チーズは同5.8%減の45万5014トンと前年を下回っている。

 乳製品輸出については、脱脂粉乳やチーズを中心に好調に推移しており、1月から7月の輸出量は脱脂粉乳で前年同期比7.3%増の27万4千トン、チーズで同19.9%増の16万3千トンとなった。チーズの輸出量は2010年以降堅調に推移しており、全国生乳生産者連盟(NMPF)が行っている酪農協共同基金(Cooperative Working Together)によるチーズへの輸出補助金も、輸出増の一助となっていると考えられる。NMPFによると、2012年上半期に輸出補助金の下で輸出されたチェダーやモントレージャックなどいわゆるアメリカンタイプのチーズは1万9千トンとなり、同タイプのチーズ輸出量全体の52.9%(チーズ輸出量全体の13.4%)を占めている。

図7 チーズ輸出量の推移
資料:USDA

チーズ価格は上昇傾向で推移

 乳製品卸売価格の動きについて、同省農業市場流通局(AMS)が10月5日に公表した「Dairy Market News」を見ると、9月の1ポンド当たりの価格は、バターが前年同月比0.4%高の188.0セント(キログラム当たり327円、1米ドル=79円)、脱脂粉乳が同1.4%高の151.6セント(同264円)、チェダーチーズが同7.0%高の275.3セント(同479円)となり、いずれも前年同月よりも高い水準となっている。これは、今後、生乳生産量の減少により乳製品の供給減が見込まれることによるものと考えられる。

 チーズの国際価格を見ると、主要な乳製品輸出地域であるオセアニアの価格が好調な生乳生産を背景に低下傾向にあるのに対し、米国(シカゴ商品取引所(CME)のチーズのスポット取引価格)は上昇傾向を強めており、両者の価格が逆転している。このことから、今後、米国産チーズの輸出量は価格競争力の低下とともに減少に転じることも考えられる。

図8 米国とオセアニア地域のチーズ価格の推移
資料:USDA/AMS「Dairy Market News」
注1:米国の価格は、CMEのスポット取引価格(ブロックチーズ)
  2:オセアニア地域の価格はUSDA/AMSが調査したFOB価格で、チェダーチーズ・水分含有率
    39%以下のもの

元のページに戻る