平成24年12月の牛枝肉卸売価格(速報値)は、全国的に出荷頭数が減少したこともあり、年末年始の最需要期を迎え上昇した。同価格は、一昨年7月以降、放射性セシウムの風評被害により低迷を続けていたが、昨年9月以降は上昇し、12月に入り低迷から脱却する水準にまで到達したと考えられる。
東京市場においては、和牛去勢A−4がキログラム当たり1,846円(前年同月比24.1%高)、交雑去勢B−3が同1,224円(同27.5%高)、乳去勢B−2が同688円(同99.9%高)と、各グレードとも前年を大幅に上回った。
また、大阪市場においても、和牛去勢A−4が同1,925円(同11.8%高)、交雑去勢B−3が同1,301円(同12.1%高)と、東京市場同様に前年を上回って推移した(図1)。
図1 牛枝肉卸売価格(東京市場および大阪市場)の推移 |
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資料:農林水産省「食肉流通統計」
注1:24年12月は速報値。
注2:23年7月の乳去勢B−2(東京市場)は取引実績なし。
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枝肉価格上昇により、逆ザヤに苦しむ場面も
牛枝肉卸売価格が上昇した背景には、(1)最需要期であるにも拘らず、12月の全国と畜頭数(速報値)が前年同月比14.3%減と減少したこと、(2)カレンダー曜日構成により、年末年始の市場休市期間が長く、12月上〜中旬に早めの手当てが入ったこと、(3)輸入チルドビーフの仲間相場が比較的高値で推移しており、量販店向けとして和牛・交雑種の手当てが入ったこと、(4)株価好転、経済回復の兆しなどにより、高価格商品の歳末ギフトや鍋物需要が高まり、和牛4・5等級の価格が上昇したこと、などが考えられる。
なお、東京市場の乳去勢B−2が前年同月比99.9%高と2倍程度上昇したが、これは、放射性セシウムの影響で著しく低迷した23年の反動によるものであり、一昨年比では同程度の水準となっている。
また、消費者の経済性志向が継続していることから、量販各社は和牛・交雑3等級中心の販売戦略を取っているため、卸売各社はいわゆる「逆ザヤ」(卸売市場相場高と末端販売価格低迷のギャップ)に苦しんでいるところも多いとされる。
例年、年が明けてからは、年末年始の反動により末端需要は弱まる。その一方で、25年1月以降の出荷頭数は、トレサデータから推計すると全国的に減少が続くと予想され、量販等からの引き合いがある程度堅調である場合には、牛枝肉卸売価格は底堅く推移するとの声もある。
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