生乳生産量、前年を2.1%上回る
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が1月23日に公表した「Milk Production」によると、12月の生乳生産量は、前年同月比1.6%増の763万2000トンとなり、2カ月連続で前年同月を上回る水準となった。これは、12月の搾乳牛飼養頭数(921万頭)が前年同月を0.1%下回ったものの、1頭当たり月間乳量(828キログラム)が前年同月を1.7%上回ったことによる。
干ばつによる乾草生産量の減少や飼料穀物価格の高騰で、9月および10月の生乳生産量は低下した。このため、10月以降の乳価は前年同月を上回る水準で推移している。12月の乳価は前年同月比6.1%高となっており、飼料費高騰の影響で搾乳牛の淘汰・更新が進んだことから牛群の能力が相対的に向上したことが、生乳生産量の増加につながっているものとみられる。
地域別に見ると、飼料の大半を自給できるウィスコンシン州では1頭当たり月間乳量が同5.1%増であった一方、流通飼料に依存するカリフォルニア州では同2.3%減となるなど、干ばつと飼料価格高騰の影響が顕著に表れている。
なお、飼料自給率は州により大きな差があるため、2012年全体で見ると、生乳生産量は前年比2.1%増の9085万トンとなり、搾乳牛飼養頭数は同0.4%増、年間の1頭当たり乳量は同1.6%増といずれも前年の水準を上回っており、干ばつの影響は明らかではない。
11月の乳製品輸出量は低水準
乳製品卸売価格は、好調な輸出や干ばつの影響による需給ひっ迫懸念などから、9月以降、脱脂粉乳、チーズ共に前年を上回る水準で推移している。同省農業市場流通局(AMS)の「Dairy Market News」によると、2013年1月の1ポンド当たりの価格は、脱脂粉乳が前年同月比13.5%高の155.1セント(キログラム当たり315円:1米ドル=92円)、チェダーチーズが同2.9%高の254.2セント(同516円)となり、いずれも前年同月を上回った。
図8 月別乳製品卸売価格の推移 |
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資料:USDA/AMS「Dairy Market News」 |
このような乳製品価格の上昇は、国際市場における米国の価格競争力を低下させている。2012年1月から11月までの乳製品輸出量の合計は、前年を4.6%上回っているものの、11月は前年同月を11.1%下回る13万3000トンとなり、2010年7月(13万トン)以来の低水準となった。例えばチーズについて11月の国際乳製品価格を見ると、米国産価格は主要な乳製品輸出地域であるオセアニア産の価格を上回る水準となっている。
この様に輸出需要が弱含んでいる中、生乳生産量が増えたことにより、12月の乳製品生産量は、脱脂粉乳が前年同月比4.7%増の7万1000トン、チーズが同2.0%増の43万1000トンと増加した。これにより、11月から12月にかけ乳製品在庫の積み増しが進み、脱脂粉乳の在庫量は前月比42.2%増、チーズは同4.9%増となった。脱脂粉乳の在庫が急増したことは、国内需要も伸びていないことを示唆している。飼料穀物価格が高止まりしている中、今後、乳製品価格の低下により乳価が下落すれば、生産コストの低下を上回る乳価の急速な下落が起こった2008年酪農危機の再来の可能性も考えられる。
図9 米国産乳製品の輸出量の推移 |
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資料:USDA |
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